ピンチをチャンスに変える力。扇田純さんの「くびれ番長」誕生秘話|トレーナー探訪
久下 真以子
- 2021年03月23日
フィットネス業界を支えるトレーナーを訪問して、仕事へのやりがいやトレーニングへのこだわりをインタビューする連載企画「トレーナー探訪」。
第14回は、「くびれ番長」のキャッチフレーズでメディアでも引っ張りだこのボディメイクトレーナー・扇田純さんです。扇田さんが注目を集めている「究極のメソッド」とは?そして、今の仕事にたどり着いたきっかけとなった、「ピンチはチャンス」という人生の出来事も伺いました。
メディアで話題!予約殺到の「くびれ番長」
かつて、女性誌「BLENDA」のモデルとしても活躍した扇田さん。その後ヨガインストラクターの資格を取り、一昨年には都内に女性専用完全個室パーソナルトレーニングスタジオ「J’s Beauty Studio」をオープン。
また初の著書「くびれ番長の2週間で5kgやせるおうちトレーニング」(宝島社)は1万部超えのヒットセラー。昨年末にも2作目「くびれ番長の21日間で試着室でも自信が持てる私になる」(講談社)を出版されています。
「くびれ番長」のキャッチフレーズが生まれたワケ
「くびれ番長」というキャッチフレーズが気になって、今回お話を伺いにきました。
一昨年、初出版させていただいたときに、編集を担当してくださった小寺智子さんが名づけてくださったのがきっかけです。「名札」のようなネーミングがついたおかげで、私自身のことを世間の方に覚えてもらいやすくなりました。
すごくお腹が引き締まっていて美しいです!スタジオで指導されるメニューも、くびれに特化しているのですか?
ありがとうございます。スタジオではくびれはもちろん、内側&外側からのアプローチも含め、レクチャーさせて頂いています。内容としては、「ヨガ×筋トレ×マッサージ」のオリジナルメソッドで、くびれはもちろん、その方の骨格や雰囲気に最も似合うスタイルに導くことを目指しています。「ヨガ×筋トレ×マッサージ」の3つを掛け合わせていくことで、それぞれのいいとこどりをしています。
いいとこどり、と言いますと?
ヨガであれば、柔軟性を高めたりメンタルを整える。その後に筋トレで筋肉を鍛えてボディラインを整える。最後はマッサージでむくみをとり、リンパの詰まりを流します。身体だけではなく、お顔も変わるので、トータルで健康的で美しい身体の仕上がりが実現できます。1回120分のレッスンの中で、全てを行っています。
女性らしくキュッと引き締まったボディラインはすごく憧れます。
そうおっしゃる会員様は多いですね。ガチガチに鍛えた身体というよりは、メリハリのあるボディラインに整えて、適度に引き締めて、軽く腹筋に縦線が入ったらいいな、などのイメージを持ってこられる方が多いですね。フルサポートメニューである「90日間集中ダイエットプログラム」では食事のサポートもしています。「〇〇は食べちゃダメ!」というような厳しい食事制限は意識が高い時やストイックにできる方には有効ですが、リバウンド率が高い。女性は生理周期もあるので、なかなか継続することは不向きな気がします。私の場合は、食事のタイミングや食材セレクトの考え方などを、その方のライフスタイルに合った方法でアドバイスさせてもらっています。
友人の意外な一言から……突然訪れた人生の転機
ヨガに筋トレにマッサージ。3つのスキルを身につけて提供するって、大変じゃないですか?
よく考えたら1人3役なので、まあまあ大変ですよね(笑)。学生時代はエステの専門学校に行っていて、エステティシャン資格を取り、20代前半モデル時代からヨガや筋トレに通い、20代後半から約10年間ヨガインストラクターをしていて今に至ります。習得していたスキルを繋げたという感じなんです。
モデルをやってきた扇田さんが、今の仕事にたどり着いたきっかけはなんだったのでしょうか?
20代後半になって、30代のキャリアの軸をどうしようかなと考えていた時に、「ずっと趣味で続けていたヨガだったら仕事でできるかもしれない!」と思ったのがはじまりです。「好き」だから仕事にするイメージが湧きました。29歳でヨガのインストラクターになり、33歳で結婚して、35歳で離婚をして……離婚とともに突然の転機が訪れたのが、2年半前のことです。離婚が決まった時に友達に報告したら、返ってきた一言が、「私のパーソナルトレーナーをしてくれない?」だったんですよ(笑)。
えっ!全然違う答えが返ってきましたね……(笑)。
すごくシリアスに打ち明けたのに、突拍子もない返答にビックリしました(笑)当時私はヨガのインストラクターをしてましたし、パーソナルトレーナーをするなんて考えたこともなくて。気持ちの整理がついてない時期でしたが、必要とされたことが嬉しくて、ほんのお手伝いの気持ちで引き受けたんです。それから自宅パーソナルレッスンがスタートしました。友達の全身のむくみを私自身が気になっていたので(笑)、ヨガと筋トレに、オイルマッサージをプラスして行ったんです。当時、自宅ですし時間は気にせず行っていたんですが、確か1回150分はやっていましたね。
不思議なことに、レッスン後には魂が喜んでいるような、とても幸せな気持ちとやりがいを、毎回感じていました。そして1ヶ月弱で2kg以上痩せ、むくみもとれてくびれもできてスッキリボディになったんです!これが今の「ヨガ×筋トレ×マッサージ」が誕生した原点ですね。それで、その友達が痩せたビフォーアフターをSNSでアップしたら、「私も体験に行きたいです!」というDMが殺到するようになったんです。
体験の問い合わせが!特にまだお店出してない段階ですよね。
そうなんです。当時の自宅のリビングでしていましたし、ホームページもスタジオ名すら何もないです。それでも連日、問い合わせのDMをいただくようになって。ホームページもないので、内容や金額をテキストで返信していました(笑)。そして3週間経った頃には予約枠が全て埋まりました…!
かたやプライベートでは、別居することになり、家具もない家で1人暮らしになってという状況。流れのままにボディメイクトレーナーとして道を進むことになりました。そして「J’s Beauty Studio」としてスタジオを借り、法人会社を設立しました。毎月満席のご予約をいただき、新規枠は半年待ちの時もありました。駆け抜けるような早さで今に至ります。
人生何があるか分からないな、とお話を聞いていて思います。でも、お友達やお知り合いに真摯に応えてきたからこそ、反響を呼んだんじゃないですか。
確かにヨガのインストラクター時代から、一人ひとりに向き合い、コミュニケーションを大事にしてきましたね。毎レッスン出来る限りのことはやってきました。私、すごくお世話大好きなんですよ。だから相手に対してガッツリ入りこんでいっちゃう性分。なので「ヨガ×筋トレ×マッサージ」の1人3役も苦じゃないのかもしれません(笑)。
人生の変化の中で見つけた、自身との向き合い方
会員様の前でベストな状態を。「見られる」ことに対する考え方とは
モデルとトレーナー。どちらも「体に向き合う仕事」ではあると思いますが、両方経験した扇田さんは昔と今で変わったことはありますか。
20代はまだまだ自分が確立されていない時期で、トライ&エラーの繰り返しでした。モデルの世界には、スタイルが良くてキレイで可愛い子がいっぱいいて、そんな世界で堂々と胸を張れるほど、自分のビジュアルに自信を持てなかった時期もあったんですよね。だから、「頑張るぞー!」とポジティブに意気込みながら撮影現場に行っては、落ち込んで帰ってくる…という日も多かったですね。
そんなモデル時代に、通っていたスポーツジムでヨガに出会って、リフレッシュはもちろん、自分との向き合い方や付き合い方が少しずつできるようになりました。特にインストラクターになってからは、「客観的に自分を俯瞰する」ということを学びましたね。モデル業界ならではの悩みにも「私には私の良さがある。比べて落ち込む必要はないよね」という風に思考の転換ができるようになりました。
もがいているうちに、自分がよくわからなくなる時ってありますよね。
自分自身との付き合い方、対人関係の上手な付き合い方が分からないうちは、葛藤やストレスも多かったです。自分の当たり前や普通な感覚は、相手にとってはそうであるとは限らないですよね。年齢を重ねて、段々とできるようになりました。特に離婚してからは、1人の時間も増えたので心の整理整頓がスムーズになったと思います。
今は、モデルとは違いますが「見られる仕事」であることは変わらないですね。トレーナーである以上、会員様の前では、心身ともにベストな状態でいれるように心掛けています。身体作りを教えていく立場として、常に見られていますし、会員様は全員女性、目の肥えている本物志向の方が多いので、ごまかしがききません。だからこそ日々の私のモチベーションになっていますし、会員様皆様のことが大好きです。
自分ができていないことを「こういう風にやってください」って言っても説得力にかけますし、いつかバレますよね。スタジオでレクチャーしていることは、自分が普段実践していて、なおかつ結果に繋がることのみレクチャーさせてもらっています。
扇田さんはしなやかで芯があって、柔らかい雰囲気が素敵です。憧れる女性像でありつつ、話しやすい空気を作ってくださる方だなと感じます。
ありがとうございます。スタジオでは、会員様とマンツーマンですし、お会いして何回かで、距離はだいぶ縮まってますね。最近は、ひと回り以上年下の会員様もけっこういるので、親戚のお姉さんみたいな感じになってます(笑)。
習慣的に通うからこそ、落ち着ける空間でありたいですよね。
そうですね。スタジオには普段はバリっとお仕事されているキャリア女性も多く、経営者や管理職の方は特にプレッシャーを日々感じていたり、弱音を吐き出せないこともあると思うんです。スタジオでは身体作りはもちろんですが、会話を楽しむこともリフレッシュになるので、大事にしている時間の一つですね。
ピンチをチャンスに。一歩踏み出すことで見える未来
扇田さんが今後やってみたいことはありますか。
実は1年かけて「MODEL’s PROTEIN」というプロテインの開発をしてきまして、このほどリリースさせていただきました。ソイ(大豆)プロテインとピー(えんどう豆)プロテインをミックスしています。たんぱく質のクオリティにもこだわって、1日の摂取量目安の3分の1が摂れる天然ビタミンや麹も7種類配合しているので、筋肉量アップはもちろん、美肌、美腸、ダイエット効果が期待できるんです。そして味も美味しく仕上がりました。
どうしてプロテインの開発を?
以前はお気に入りのプロテインを海外で買いだめをしたりしていたんですけど、昨年からコロナ禍で海外に行けなくなり、購入できなくなってしまって。スタジオでもよく「オススメのプロテインありますか?」と聞かれることが多いのですが、「質、味、値段」が全てマッチしているものがなかなかなくて、「だったら自分で作ろう!」となったんです。製作過程は大変なこともありましたが、いざ完成してみて、購入してくださる方や初回販売した際には半日で完売となりました。予想以上に期待してもらえていたことや、何より喜んでもらえることが、自分にとっても新しい幸せだったので、これからもこだわったプロダクトをたくさんの方に届けていきたいですね。
扇田さんにとって、今の仕事は天職なのではないかとお話を聞いていて思いました。
はい。私の「好き」が詰まったことですし、「間違いなく天職!」と思いながら毎日お仕事をさせていただいています。こんな天職だと思えることに出会えて幸せですし、今後も流れに身を任せながら、さらなるスキルアップをして進んでいきたいと思っています。
流れに任せると、そこに素敵な未来が待っていたりしますよね。
人生って意外に「ピンチがチャンス」になったりするんですよね。今までの人生を振り返ってもそう思います。離婚をきっかけに今の仕事に出会えたし、コロナの状況がなければプロテインは生まれていなかった。「逆境を乗り越えるタフなメンタルと柔軟性」はこれからの時代、必要な気がしています。
扇田純(くびれ番長)
福岡県出身、1982年生まれ。「J’s Beauty Studio」代表。離婚を機に、ヨガインストラクターからボディメイクトレーナーへ転身。東京・恵比寿のスタジオオープンから3週間で、予約の取れないトレーニングスタジオに。有名芸能人やモデルも御用達。独自のメソッドで、ヘルシーで女性らしいボディメイクを実現。著書は2冊、オンライン連載、トレーニング監修、オンラインレッスン等、幅広く活動。
Instagram:jun_oogida
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YOLO / コンテンツディレクター
久下 真以子
現役のアナウンサーでスポーツライター(専門はパラリンピック、野球、サッカー)。トレーニング好きが高じてYOLOメンバー入り。夢はベストボディ出場とフルマラソン完走。欲しいものはウエストのくびれ。猫と一緒に暮らす30代女子。
現役のアナウンサーでスポーツライター(専門はパラリンピック、野球、サッカー)。トレーニング好きが高じてYOLOメンバー入り。夢はベストボディ出場とフルマラソン完走。欲しいものはウエストのくびれ。猫と一緒に暮らす30代女子。