映画『カナルタ 螺旋状の夢』エクアドル南部の熱帯雨林で生きる先住民族の生活へと誘う

映画『カナルタ　螺旋状の夢』がシアター・イメージフォーラムを皮切りに公開され、さまざまな方面から称賛の声が続出している。

文化人類学 × ドキュメンタリー！？映画『カナルタ　螺旋状の夢』

洗練された評論は専門家に譲ろう。この作品、とにかくヤバい。生きているうちに、素晴らしい作品に映画館で触れられるのは幸運としか言いようがない。

なんと、文化人類学者で映像作家である太田光海（おおたあきみ）監督自身が、エクアドル南部のアマゾン先住民シュアール族と一年以上、実際に生活をともにしながら撮影をし、仕上げた作品。映像には、セバスティアンとパストーラという夫婦を中心に、エクアドル共和国南部の熱帯雨林に生きるシュアール族の人々の暮らしが映し出されていて、もう冒頭の映像から感じたことのない衝撃が、体の中をゾクゾクゾクっとほとばしるのを自覚したほどだ。（事前にパンフレットで内容を読んでいたはずなのに…！）

先人の言葉や知恵を尊重しながら、身の回りにある植物や動物でその日の食事を作ったり、酒を作り貯めておいたり、自分の体でさまざまな植物の効能を試しながら薬草を作ったり‥‥‥。知恵を丁寧に重ねながら、生きることも治癒も熱帯雨林にあるもので完結させ、研ぎ澄まされた感覚とものすごいエネルギーとで生きている。「森を切ることは、自分自身を傷つけることだ」とセバスティアンはサラッと言う。普段、私達が使う「エコロジー」や「オルタナティブ」という言葉が、なんだか空虚に感じずにはいられない。

よく眠り、夢を見て、真の意味で自分が何者かを知るべきとき

ある日、パストーラ達は町へ出て、政府交渉をする。彼女達もまた「国家」というのシステムの中の一員なのだということに思わずハッとする。二人は人生に迷い、自身のアイデンティティを「夢」から探求しようとする。そのヒントを得ようとする時も、源は植物だ。

「よく眠り、夢を見て、真の意味で自分が何者かを知るべきとき」にシュアール族の人々が使う言葉を「カナルタ」と言うのだそう。まさにその生き様が凝縮した作品だ。

監督は映像人類学博士号取得の太田光海さん

太田光海監督はイギリス・マンチェスター大学グラナダ映像人類学センター（1987年設立）にて、文化人類学と映像を組み合わせた映像人類学を学び、博士号を取得した人類学者であり映像作家だ。博士論文を書くための「提出課題」として調査、撮影し制作したのが『カナルタ　螺旋状の夢』（原題 Kanarta: Alive in Dreams）であり、初の監督作となった。内容だけに留まらず、本作は色や音も魅力の一つとして注目されている。制作には海外のカラリストやサウンドデザイナー＆ミキサーなど、太田監督に共鳴して集まったクリエイティブ・チームが加わり、リモートによって完成したんだとか…！　すでに国内外の映画祭に出品され、監督賞やドキュメンタリー映画賞など多数受賞を果たしている。

一年以上の滞在中、カメラを回していたのは35時間だけ。それ以外の時間は、「基本的に彼らと同じことをずっとして生きていただけ」という太田監督。太田監督がセバスティアンとパストーラ家の一員になっていて、気づいた時には彼らの眼差しが自分に向けられている錯覚に陥っている。観ているうちに誰しも起きていることに対して疑問を抱かずにはいられないはずだ。ぜひ劇場で、セバスティアンやパストーラに出会ってほしい。

そして、アマゾンでの生活を“体験”した直後に、巨大な都市に放り込まれた時、新たな“感覚”が私達の中で始まっていくーー。

映画『カナルタ 螺旋状の夢』

イギリス・日本｜2020年｜121分

監督・撮影・録音・編集：太田光海

出演：セバスティアン・ツァマライン、パストーラ・タンチーマ

制作協力：マンチェスター大学グラナダ映像人類学センター

配給：トケスタジオ

今後の上映スケジュールなどはOfficial Websiteにて。全国で順次公開中！

『カナルタ 螺旋状の夢』
詳細をチェック

公開中＆公開予定 劇場一覧

＼公開中／

・シアター・イメージフォーラム（東京都渋谷区）
2021年10月2日（土）〜11月26日（金）
※11月26日（金）20:45〜の回終了後、太田光海監督による舞台挨拶有り

・出町座（京都府京都市）
2021年11月19日（金）〜12月16日（木）
※11月22日（月）、27日（土）18:30の回上映後、太田光海監督による舞台挨拶有り

・シネ・ヌーヴォ（大阪府大阪市）
2021年11月20日（土）〜12月17日（金）

・元町映画館（兵庫県神戸市）
2021年11月20日（土）〜12月3日（金）
※11月27日（土）10:30の回上映終了後、太田光海監督舞台挨拶＆監督と小笠原博毅神戸大学大学院国際文化学研究科教授によるトークイベント開催決定！詳細は「トピックス」にて。

・シネマ５（大分県大分市）
2021年11月20日（土）〜11月26日（金）
※一週間限定上映

＼公開予定／

・シアター・キノ（北海道札幌市）
2021年12月24日（土）
※1回限定上映（11/22現在は未掲載）

・シネマ・トーラス（北海道苫小牧市）
2021年11月中旬〜

・フォーラム山形（山形県山形市）
11月26日（金）～12月2日（木）
★11月30日（火）は上映後舞台挨拶付き

・前橋シネマハウス（群馬県前橋市）
2022年1月2日（日）〜1月14日（金）
※11/22現在は未掲載

・シネマアミーゴ（神奈川県伊豆市）
2021年11月28日（日）〜12月11日（土）
※12/3（金）は休映

・長野相生座・ロキシー（長野県長野市）
2021年12月3日（金）〜16日（木）
★12月4日（土）は上映後舞台挨拶付き

・ほとり座（富山県富山市）
2021年上映予定

・シネマルナティック（愛媛県松山市）
近日発表予定

・ゴトゴトシネマ（高知県高知市）
2022年2月26日（土）
※一日3回限定上映（11/22現在は未掲載）

・宮崎キネマ館（宮崎県宮崎市）
2021年12月10日（金）〜12月16日（木）
※一週間限定

・ガーデンズシネマ（鹿児島県鹿児島市）
2021年11月23日（火・祝）
※上映後太田光海監督オンライントーク付（要予約）

イベント情報

ACAO OPEN RESIDENCE #4 event vol.2
『カナルタ　螺旋状の夢』特別上映会

日時：2021年11月28日（日）
17:30上映開始、上映後スペシャルトーク　太田光海監督 × コムアイ
会場：起雲閣・音楽サロン（静岡県熱海市昭和町4-2）
定員：先着30名
入場：無料
詳細はコチラ／お申込はコチラから

尹雄大 公開インタビューセッション Vol.10
「螺旋状の夢とうつし世～この世界に属しながら異なる世界を生きる」

日時：2021年12月18日（土）
14:15〜16:15 （開場及び受付14:00〜）
ゲスト：太田光海監督
会場：スタジオアムリタ ウエストＢ１スタジオ
（東京都武蔵野市吉祥寺本町２丁目１７−12 吉祥寺藤彩ビル B1：アムリタ食堂の地下）
定員：30名
料金：3,000円
詳細＆スタジオ参加申込はコチラ／オンライン参加申込はコチラから

※劇場情報、イベント情報は2021年11月22日現在のものです。
※上映期間・時間等は変更の可能性、随時情報の更新があります。また事前予約の有無等も劇場によって異なりますので、お出かけの際はくれぐれも予め劇場の最新情報をご確認ください。

Mihoko Inagaki
Writer / Editor / Videographer
2006年〜高レベル放射性廃棄物最終処分問題を取材。その傍ら、『Yogini』をはじめ、トレーニング雑誌のライティング、編集に携わる。2013年、高レベル放射性廃棄物最終処分に関するドキュメンタリー『The SITE -Japan Specific-』を制作。2019年、核燃料サイクル計画映画制作プロジェクトを始動。
http://journalasia.blog22.fc2.com/