映画『グレタ ひとりぼっちの挑戦』グレタ・トゥーンベリの素顔映るドキュメンタリー
YOLO 編集部
- 2021年11月26日
スウェーデンの環境活動家 グレタ・トゥーンベリを一年に渡って追ったドキュメンタリー映画『グレタ ひとりぼっちの挑戦』(原題:I AM GRETA)が、10月22日(金)から公開されている。
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何が彼女を突き動かしたのか
グレタと言えば、2019年にN.Y.で開かれた国連総会 国連気候行動サミットでのスピーチだろう。また、「気候危機」を訴えるため座り込みを始めたことや、“Fridays For Future”(未来のための金曜日)運動を始めたことも有名だ。
でも、15歳の時にどうして「学校ストライキ」を始めたのか、中学校を卒業した16歳の時に、どんな思いで船に乗って、ニューヨークの国連に向かったのかまではあまり知られていない。本作は、彼女の“あの”スピーチに至るまでの過酷な経験や感情、彼女を突き動かす根底にあるものを映し出した作品だ。
授業で映画を観て、摂食障害に
2011年に学校の授業で環境問題に関する映画を見た後、摂食障害になるほどショックを受 け、塞ぎこむことが増えたグレタ。その後、アスペルガー症候群と診断を受けた。菜食主義者になり、飛行機による旅行を断るなど自身の生活習慣を変えていった。消費量も物も多く、環境問題とは無縁の両親のもと暮らし、生活のあり方に疑問を抱くように。ある日、グレタは家で電気を消し、プラグを抜いて親を驚かせた。理由を聞かれ、彼女は「エネルギーを節約するんだ」と答えたことも。「対策は取られている。心配はいらない」と言う両親の言葉に恐怖を感じた。
ひとり座り込む。そして世界へ-
2018年8月、15歳になったグレタは、「気候危機のための学校ストライキ」と手書きのプラカードと、配布用に資料をもとに自身で作成したファクトシートを置き、議会の前で座り込みを始めた。気候変動を選挙の争点にさせるためだった。すると、瞬く間に注目を集め、全世界的なムーブメントへと発展していった。
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局からポーランドで開かれるCOP24のスピーカーとして招待されるなど、世界各地の会議に呼ばれるように。2015 年にパリ協定で定められた温室効果ガス削減の数値目標に届いていない現状を指摘し、対策が不十分であることや大人たちの責任を問うていく。一方で、彼女に対する殺害予告にまで及ぶ誹謗中傷も増え、常に同行し彼女を見守る父親のスヴァンテは心配を募らせていた。また、日課やひとりでいることを好むグレタにとって、流動的なスケジュールもストレスに感じていた。
中学を卒業し、16歳になったグレタはすぐに進学せず、環境活動のためギャップイヤー(休学期間)を利用し、N.Y.の国連から招待された気候行動サミットへの参加を決めた。環境への影響が大きいことから飛行機を使わず、船での移動にした。その船内には、重荷に耐えきれなくなった彼女がいた。「アスペルガーの要素をみんなが持っていたら…」と彼女に思わせてしまうほどに。
ネイサン・グロスマン監督|撮影のキッカケと想い
監督は、スウェーデンの肉消費量の増加をテーマに扱う作品など、環境問題を追求する作品を手がけることが多いことで知られるネイサン・グロスマン。スウェーデンのドキュメンタリー映画監督でカメラマンだ。
グレタの学校ストライキについて知り、「1〜2日間撮影をして何が起こるか見てみようと考えました」とネイサン監督。一週間後には彼女の表情に惹きつけられ、カメラを脚立から外して一緒に座り込んだんだとか。撮影から一ヶ月が過ぎた頃には他の地域だけでなく、フィンランドやデンマークまで広がりを見せており、運動とグレタさん自身を描いた作品づくりに全力で取り組みたいと感じるようになった。
ネイサン監督は、「自分と意見が異なる人々や、問題から目をそらさずに指摘したり自分の意見を堂々と述べる人々に対して、今よりもっとリスペクトを払ってほしい。何が問題かを明らかにしてくれる人たちを大切にすべきだと思う」と語る。
報道では見ることのないグレタの繊細さやユーモア、そして彼女の視界に触れることのできる貴重な作品だ。彼女の目に映る世界の居心地の悪さ、身勝手さもまた露呈する。それを認識しながら、グレタは訴え続ける。ぜひ劇場で観てほしい。
映画『グレタ ひとりぼっちの挑戦』
- 出演:グレタ・トゥーンベリ、スヴァンテ・トゥーンベリ、アントニオ・グテーレス、エマニュエル・マクロン、アーノルド・シュワルツェネッガー、ドナルド・トランプ
- 監督・脚本:ネイサン・グロスマン 製作:セシリア・ネッセン、フレドリク・ハイニヒ
- 編集:ハンナ・レヨンクヴィスト、シャーロット・ランデリウス
- 音楽:レベッカ・カリユード、ヨン・エクストランド
- 脚本:ペール・K・キルケゴー、ハンナ・レヨンクヴィスト
- 2020年/スウェーデン/ドキュメンタリー/101分/ビスタ/5.1ch/原題:I AM GRETA
- 日本語字幕:石塚香 配給・宣伝:アンプラグド
全国順次公開中
Mihoko Inagaki
Writer / Editor / Videographer
2006年〜高レベル放射性廃棄物最終処分問題を取材。その傍ら、『Yogini』をはじめ、トレーニング雑誌のライティング、編集に携わる。2013年、高レベル放射性廃棄物最終処分に関するドキュメンタリー『The SITE -Japan Specific-』を制作。2019年、核燃料サイクル計画映画制作プロジェクトを始動。
http://journalasia.blog22.fc2.com/
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