高山植物(山の花好き)ライター・成清 陽の「ヤマノハナ手帖」#10 キバナシャクナゲ
ランドネ 編集部
- 2022年05月17日
登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します!
列島を混乱させたコロナはどこ吹く風、遊園地や観光地にヒトがあふれ、密がやや当たり前(?)になりつつあったGW。みなさんは、どこに行きましたか?ワタシ、本連載にて記載した「春は湿地でしょ!」を有言実行、GW直前に県内の某湿地を目指してクルマを走らせた結果、ギックリ腰に……。目の前にある“宝の山”(=花咲く湿原)をなんとしても歩きたい、その一心で撮影してまいりましたが、連休中は完全ダウンでした。トホホ……。ということで、今回はちょっと高山への追慕を込めて、キバナシャクナゲです。早くトレッキングしたいYo~!
Index
キモチイイ尾根散策、演出しまっせ♪
Data
キバナシャクナゲ(ツツジ科)
一般的な花期:6~7月
おもな生育場所:高山の岩場
6月の八ヶ岳。本格的な夏山が到来するこの端境期には、稜線の岩場が“爽やかキャラ”に彩られます。それこそが、キバナシャクナゲ。「これ以上の標高には木が生えられませんよ(森林限界)」という指標である、ハイマツと一緒にいることも多いこのお花。本格的な夏のひと足前に、稜線を行き交うハイカーの目を楽しませてくれます。それにしてもこの花、ホントに爽やかクンなんですよね。決して華美でなく、地味過ぎず。思い出してみてください。クラスに1人2人くらいいる、「二枚目でも三枚目でもなく、だれとでも仲が良くて、全員がそれとなく認めるヒト」。……そんな感じです(笑)。
キバナ…って白くね??
ただ、そんな爽やかクンにも、絶対に入っちゃうツッコミ。それが、「キバナっていうほど、黄色くないよね!?」です。そう、100歩譲ってクリーム色どまりなんですよねー。ぶっちゃけ、花は白っぽい傾向がかなり強く、これが爽やか演出にひと役買っているというウワサも。ちなみに、もっとも黄色っぽいのはツボミの時期です。「じゃあ、『キバナ』ならぬ『キツボミシャクナゲ』じゃないか」って?いや、語呂が悪いじゃないですか、語呂が……。ってそんな問題なんだろうか!?
丸っこくてカワイイ葉っぱ♥
さて、名前のゴタゴタはさておき、キバナシャクナゲのもうひとつの魅力、それは「わかりやすいヤツ」じゃないかと。数あるシャクナゲ類のなかでは、葉っぱが圧倒的に丸っこくて、ちっちゃくて、花が目立ちやすい。これ、フクジュソウ(連載6回目)でも書きましたが、頭でっかちで可愛く見えると思うんですよね。この視覚エフェクト+覚えやすさ、さらに明るい稜線にある(=陽キャっぽい)ところが、親しまれやすいポイントでは…と思うわけです。ま、これは偏見かもしれませんが。
チョウチョさん、おいでおいで
名前や外見、中身のないことばっかり書いてしまってますが、ちょっぴりウンチクをば。多くのシャクナゲやツツジのほとんどが持っている、アノ秘密をキバナシャクナゲも持っています。花の斑点模様が見えますか?これ、「ガイドマーク」と呼ばれるもので、とくにチョウを誘う仕掛けなんです。色覚をほとんど持たない昆虫の目を模すために紫外線写真を撮ると、このマークがめちゃ見えやすいとか。飛行機に対する滑走場の夜間ライトよろしく、チョウたちをいざなっているのでしょう。ただ……キバナシャクナゲにチョウが来ているシーン、見たことないなあ。高山蝶ってそもそもレアだし少ないし(汗)。
戦闘力もとい、戦“凍”力高いです!
そして、特筆すべき点がもうひとつ。じつはシャクナゲたち、恐ろしく耐凍性が高いんです。写真は白っぽい花が咲いた「ハクサンシャクナゲ」(紛らわしい!!)ですが、彼らの生存可能温度は、マイナス70℃以下にまで達するとか。なにも地球存亡レベルの危機まで耐えなくても……という気もしますが、ここまで来ると、もはや耐凍性というより戦凍力。「ピピピ……ボンッ!ス、スカウターがぁ……」っていうドラゴン●ールの名シーンが、頭をよぎります(マンガ脳でスミマセン)。
最後は「モモイロシャクナゲ」
さーて、こうして寒くて長い冬を耐え忍ぶ特異な仕組みすらもつキバナシャクナゲ。最初の話題に戻ってしまいますが、受粉が終わり、さあそろそろ花もおしまいダヨ……という時期になると、なぜかより白く、さらにピンク味が増してきます。あっちゃー、だから黄色くねぇじゃんって突っ込まれるんだってば。ということで、もう覚悟(!?)を決めて、モモイロシャクナゲに改名しましょう、改名。申請先はどこじゃ?ということで、そそくさと学会を検索するワタシでした……。
さーて、高山の爽やか系キャラ・キバナシャクナゲのオハナシ。いかがでしたか?じつは八ヶ岳には、キバナシャクナゲ自生地が天然記念物指定を受けているエリアがあります。それが、硫黄岳付近。付近は花の名所でもありますので、ぜひぜひ行ってみてくださいね!そして、ワタシの憧れは7月中旬の大雪山。大群落が、ヤヴァイらしいのです。でも編集部に企画を提出する前に、まず腰を治さねば……ということで、病院行ってきます(笑)。次回の全快を目指し、リハビリにまい進しま~す!!
それでは、また。皆様のココロに、素敵な花が咲き誇りますように。
花ライター/会社員
成清 陽
大学時代から山を渡り歩いていた個性派キャラ。卒業後も、好奇心の赴くままに職を転々とし、自然ガイド、環境コンサル、ホテルマン、雑誌編集者、市営公園管理人を経て、現在は森づくり事業を担う会社員。好きな山は尾瀬、白山、御嶽、北岳。花が美しい山しか好きになれない、アルティメットな病なんです~!(笑)
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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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