高山植物(山の花好き)ライター・成清 陽の「ヤマノハナ手帖」#12 ミヤマダイコンソウ
ランドネ 編集部
- 2022年07月20日
登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、 高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します!
「梅雨明け、うそや~!!我がホームグラウンド、毎日雨なんですケドーーーー!!」。日本列島にそんな叫びが充満していそうな今日このごろ、山ライフの充実度はいかがでしょう?もはや信じられぬ梅雨明け宣言。では、何を信じれば?そこはやっぱり、てるてる坊主?いえいえ、自然のリズムでしょう。花や果実の豊凶はありつつも、健気に花を咲かせ、山を歩く私たちに潤いを与えてくれる高山植物たち。彼らこそ、信じるべき!!「それ、ムリヤリ感半端ないんだけど!」と無事にツッコミが入ったところで、今月のお題に参りましょうか。今回は、よーく見かけるはずだけどなかなかスポットライトを浴びない、あのお花。高山ならどこでも比較的安定した姿を見せてくれる(=梅雨明け宣言以上に信じられる!?)、名脇役です!!
Index
スルーしないでください!!
Data
ミヤマダイコンソウ(バラ科)
一般的な花期:7~8月
主な生育場所:高山の岩場
登山口から続く森林を抜けていざ、チャレンジングな香り漂う岩場へ!そんなトレッキングの醍醐味たっぷりの夏山で出会う、さまざまな花。岩場を丁寧に見てみると…なんだか小ぶりな花をつけた、ひょろひょろっとした高山植物が。「これなんだろう?写真撮っとく?」「なんだかイマイチ華がなくて迷っちゃうね」「スルーしちゃっていい?」。……と、こんなシーンに出会ったら、ぜひ思い出してください。それ、ミヤマダイコンソウかも!もちろんスルーは禁止です!……ただ、“華がない”のは不都合な真実かも。そう、なんか全体の雰囲気がね。締まりがないというか、映えないというか……。
「アフロヘアー」か「おばちゃんパーマ」か
「あーあ、この連載、高山植物がテーマなのに、今月も毒舌が始まっちゃったよ」。もしそう思われた読者の方がいたら、モウシワケナイ(&ご愛読に大感謝)。でもね、なんとなくこの植物、花は小さく葉っぱがデカくて、ちょっとアンバランスなんですよねぇ。しかも、とってもわかりやすい識別ポイント、葉っぱを見てみると……なんだか形がとってもアフロ。これ、黒く塗ったらそれっぽい?パープルに塗ったら、はっちゃけたおばちゃんパーマになっちゃうかな……。いや実際、母の若い頃の写真を思い出すんですよねー。
で、なにがダイコンなの?
まあ、これは至極まっとうなギモンですよね。ワタシも以前、「根っこがダイコンみたいに伸びているのかな」くらいに軽く考えてました。しかし、事実は小説より奇なり。調べていくと、「『根生葉』(最下部の葉)がダイコンの葉のように『複葉』になっているから」……。少々難読なこの文章は、つまるところ「丸く大きく見える葉っぱが先端にあって、その下に小さな葉っぱが向かい合わせにちょこちょこついてます。だから、ダイコンの葉っぱみたいなんです」といったところ。これには宇宙の神秘を思わせるほどの衝撃を隠せません。なにがって、こんな細かいところまで見る人がいるのかってところですYO!!
ライチョウからは好かれてます
細かなネタをなぞっていくと、かなりマニアックな印象を持ってしまいそうなミヤマダイコンソウ。でも、じつは彼ら、北・中央・南アルプス、八ヶ岳、木曽御嶽山と名だたる山に咲く、かなりのメジャーキャラなんです。そんな「顔の広さ」もあいまって、ライチョウの餌のひとつにもなっています。そのため、彼らの写真を狙っていると、こんなラッキーショットが!雛とともに写った黄色い花、それは……やっぱりミヤマダイコンソウ!!なんだかうれしくなるのは、ワタシだけでしょうか?
草紅葉で本領発揮!
夏の間は花が咲いても地味に思われてしまうミヤマダイコンソウ。でも、秋は彼らの姿を写真に収めるハイカーが増えるハズ。そう、ミヤマダイコンソウの草紅葉はなかなかに鮮烈で、箱根駅伝常連校の某大学を思わせるほど濃厚なエンジ色が、白い花崗岩と青空に映えるのです。しかも、ご紹介してきたとおり、葉っぱがデカイ。このときばかりは“アフロ”やら“おばちゃんパーマ”と卑下されることなく、市民権を得ています。ただ、大群落をつくる種類ではないため、なかなか迫力満点の写真を撮れないところが、やっぱりミヤマダイコンソウ!超脇役だけに、もう少しがんばってほしいものです!!
さて、今回ご紹介してきたミヤマダイコンソウ。いかがでしたか?ミヤマキンバイ、ミヤマキンポウゲ、シナノキンバイなど黄色い花の群落はあまたありますが、このミヤマダイコンソウの大群落には、ついぞお目にかかる機会がありません。この連載を執筆しつつ、今年はこの花を改めて見直してみようかな、と思った次第です。ちなみに、名前の由来についてオハナシしました「大きな葉っぱの下についている小さな葉っぱ(側小葉というそうです)」は、ビミョウながら紅葉の写真に写ってマス。ヒマすぎて退屈な方は、探してみてください!(難度はめちゃ高いですが)。
それでは、また。皆様のココロに、素敵な花が咲き誇りますように。
花ライター/会社員 成清 陽
大学時代から山を渡り歩いていた個性派キャラ。卒業後も、好奇心の赴くままに職を転々とし、自然ガイド、環境コンサル、ホテルマン、雑誌編集者、市営公園管理人を経て、現在は森づくり事業を担う会社員。好きな山は尾瀬、白山、御嶽、北岳。花が美しい山しか好きになれない、アルティメットな病なんです~!(笑)
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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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