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周りの人と調和してる?心を磨く「禅的生活」を取り入れよう

利己的な考えを捨て、穏やかに暮らす

アップルの創業者でもある故スティーブ・ジョブズ氏が学んでいたことでも知られる「禅」。世間では禅を実践すればビジネスに勝てるといった話が独り歩きしていますが、本来は「慈(いつくしみ)」の心を実践することに他なりません。だから日々の暮らしに取り入れることができるのです。

慈とは、侘び寂びのなかにあるおもてなしの心を大切にし、相手の立場に立って物事を考え、すべての人と調和することで、自分の心の豊かさを育もうとするものです。暮らしのなかでどういったことに着目すればよいか、臨済宗建長寺派林香寺住職であり、精神科医でもある川野泰周さんに教えていただきました。

モノを置かない

何もない状態を表す「がらんどう」は、僧侶が集まる伽藍堂に物がないことから広く使われるようになりました。とくに禅宗では空間に秩序を求める特徴があります。これは色んな物があるとそれぞれに気を配らないといけなくなり、目の前のことに集中できなくなってしまうからです。部屋の見えるところには物を置かないようにし、収納も場所を把握できるよう秩序立てて配置することが大切です。

“ながら”をしない

集中を必要とする坐禅には、ゆっくりと息を吐くことを重視する腹式呼吸がセロトニンの分泌を促し、心を落ち着かせる効果が証明されています。「ながら」を止めて今に集中する行為は、自律神経を整えることでもあるのです。一つのことを一生懸命こなすことで、不安に対するとらわれがなくなり、ストレス耐性を高めることができます。「ながら」癖のある人は、今すぐ見直しましょう。

部屋の役割をきちんと決める

禅宗の寺院は、「典座」は調理、「東司」は用を足す、「浴堂」は体を洗うといった感じで場所の役割が明確です。特定の空間に入ることで、心構えを切り替えられるのはもちろん、場所によって行動を変えることで、世の中は変化する存在であるということを身近に感じることができます。これにならって、自宅の部屋にそれぞれ役割を与えてみましょう。日々の生活にメリハリが生まれ、心が晴れ晴れとしていることに気づくはずです。

掃除に集中する

チリひとつ、葉っぱひとつ残さないのが禅修行の掃除です。あまりに徹底的にやるので、「雲水さんが通ったところは通る前よりもキレイになっている」と言われるほど。徹底することで精神が研ぎ澄まされ、やり切ったという達成感が心を満たしてくれるといいます。

食事や配膳

禅の厳しい作法での食事は、不自由に感じるかもしれません。大中小、三つ組みで入れ子になる器を使い、ご飯、みそ汁、漬物の3品を盛り付け、坐禅のように背筋を伸ばした姿勢で、物音ひとつ立てずに決められた順番でいただきます。たくさんの作法に気を配りながら食べると、食事以外のことを考える隙は生まれてきません。全身全霊で食べることで、作ってくれた人や食材を育んだ自然に感謝する気持ちが芽生え、幸福感を生み出してくれます。

一輪の花を置く

有名な禅語「花無心招蝶 蝶無心尋花」は、咲き乱れる満開の桜でなく、人知れず咲く一輪の草花で十分満足だという禅の美意識を表しています。「竹筒に一輪」といった具合に、花や器など一つひとつが美しさを損なわないように心がけ、身近に花を置きましょう。華美なイメージから離れ、ちょうどよく素朴で単純であることの美しさに気づくことで、ありのままを受け入れて生きられるようになります。

スケジュールをつける

禅の修行僧は大体午前3時~4時(季節により異なる)に起床し、本堂で朝の読経をあげた後、禅堂で坐禅をはじめます。その途中には師僧の部屋に行き、与えられた公案の回答を提示し、坐禅が終わるとお粥の朝食を食べて、寺院を掃除します。このスケジュールは、ほぼ毎日変わりがなく、掃除が終わるのは午前7時~8時頃です。このように決まった時間に決まったことをするルーティーンには、心を安定させる働きがあります。

墓参りをする

墓参りをすることは、伝統を重んじるというだけではなく、亡くなった人への感謝の意が込められています。その人が生きている間に与えてくれたことはもちろん、その人が亡くなった後もつつがなく生きていることに感謝します。そうすることで、自分の命を大事にする心が芽生え、人生を大切に生きようと思えるのです。

朝に日の光を浴びる

睡眠医学では、朝明るくなったら起き、夜暗くなったら寝るというサイクルを重視します。朝の太陽光が脳内の睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌をシャットダウンし、覚醒ホルモンのオレキシンを放出させます。それに触発されてドーパミンやアドレナリンといった「やる気ホルモン」も増多し、全身を活性化してくれるのです。朝に目から強い光を入れるという行為は、自律神経のコントロール法であり、ひいては副交感神経を支えるセロトニンを上手に活用し、心身のバランスを保つ行為そのものなのです。

「1/fゆらぎ」の音楽を聴く

聴覚から心をリラックスさせるなら、読経と共通する自然なゆらぎを持つ「1/fゆらぎ」の音楽を聴くことが効果的です。波の音や風の音など、自分にフィットするお気に入りを聴きながら心をゆったりさせ、頭からつま先まで力を抜いていきましょう。自然界を構成するゆらぎに共鳴すると、自分が大自然の一部であることに気づき、自分を意識することから離れる禅の世界とシンクロしてゆきます。

香りを楽しむ

お茶の芳香を楽しむ茶道や香木を焚いて立ち上る香りを鑑賞する香道を例にあげても、禅の世界で嗅覚を重んじていることがわかります。その理由は、香りが心の世界へ入っていく際に誘発剤としての役割を果たすからです。

食材本来の味を楽しむ

禅寺で出される食事には、化学調味料を一切使いません。醤油や味噌、塩や酒といった調味料をわずかに許されるだけで、砂糖すら使えないのです。そして、動物性の食材も使用せず、出汁も椎茸と昆布だけなので味も非常に薄味。はじめて口にすると味がしないように感じてしまうこともありますが、修行の中で厳しい作務や托鉢で疲れたときに食べると、なんともやさしい美味しさを持ち合わせていることに気づかされます。

裸足で過ごす

禅の修行では、鋭敏な触覚が必要とされます。食事中は箸を置くときすら音を出してはいけないという決まりがありますが、これは指に集中して皮膚感覚を高めることができなければ、できない芸当です。もっとも触覚に影響を与えるのは、足袋を履かず裸足で過ごす習慣。畳の感触を足で感じ、凍えるような寒さを体感することで、次第に感覚は研ぎ澄まされ、まるで風すらも感じられるかのような皮膚感覚を得ることができます。

ゆったりと呼吸する

坐禅中の姿勢は、頭で天を突くように背骨をまっすぐ伸ばし、あごを少し引いて肩の力を抜き、腹を少し突き出すようにして腰を入れます。こうすることで胸郭が広がり、ゆったりと深い呼吸ができるようなります。鼻から大きく吸い込み、ゆっくり吐き出しましょう(鼻呼吸が難しい方は口でも構いません)。このとき、下腹部が次第にへこんでゆくことを意識しながら吐き出すことが大切です。こうした腹式呼吸を30分も続けると血中のセロトニン濃度が増えて副交感神経が刺激され、全身の力がみなぎってきます。

写経をする

実は医学的に自然治癒力や集中力の向上が実証されている写経。般若心経の266文字を一心に書き写してみると、筆をもつ指の感覚が研ぎ澄まされ、墨の香りにより嗅覚が鋭くなっていることに気づくはずです。写経には五感をフルに使って感謝しながら生きるという禅のエッセンスがすべて入っているといえます。一人ですぐにはじめられる手軽さも魅力的。心を込めて書き写し、考え抜かれた言葉が持つ力に身を委ねてみると、おどろくほど心が安らいでいくことがわかります。

お経を聞く、詠む

禅宗のお経は密教と比べて、複雑な節をつけることは少ないですが、その発声方法は独特。禅宗のお経には「1/fゆらぎ」と呼ばれる自然と同じゆらぎがあり、それが心の安寧を得る力を持っているからだと考えられています。お経は聞いているだけで心を癒す効果があるのです。

お経を詠むとき、短く深く吸い込んだ空気を少しずつ吐き出して長く発声を続けますが、長くゆっくりと一定の音程で声を出し続けることで副交感神経は適度に刺激され、深いリラクゼーションに入っていくことができるのです。読経を日々繰り返せば、自律神経は安定し、気の巡りがよくなることで心身をより健康な状態へ変化させることができるでしょう。

出典:『自律神経を整える本
ライター:YOLO編集部

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