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知ってるようで意外とよく知らない?自律神経失調症のこと

私達が意識しないところで、全身を整えてくれている自律神経。その調子が悪くなるのが、自律神経失調症です。最近は自律神経失調症が増えているとおっしゃる内閣府認証NPO日本アーユルヴェーダ協会理事長・上馬塲先生に、自律神経失調症の症状と対策をお聞きしました。

自律神経が整える機能は多岐にわたる

交感神経と副交感神経からなる自律神経は、人間の意識にはのぼらないようなことも自然に行い、私達が日々の活動をうまくできるように調整してくれています。

「神経自身が自律してやってくれるということで、“自律神経”なんです。自律神経が調節している機能は、循環系、呼吸器系、消化器系、内分泌系、さらに体温の調節もそうです。寒い時は皮膚をキュッと締めて、体の中の熱が出ていかないようにします。また汗が出るのも、実は自律神経系が調節している。汗を出すことで放熱するわけですね」

心臓・循環系に対して作用することで、血圧を調整。また、交感神経が興奮することでアドレナリン分泌を促し「やるぞ」という気持ちにさせるなど、気分を調整することもあります。また、鼻などの分泌腺や、胃腸の働きも自律神経が調整しています。

自律神経失調症の典型的な症状は「立ちくらみ」

全身に働きかけている自律神経系がアンバランスになりうまく働かなくなると、いろいろな症状が出てきます。典型的なのは“起立性低血圧”、いわゆる立ちくらみです。

人が立ち上がると体の下部に血液がたまり、心臓に帰る血液が少なくなります。そこでキュッと血管を締め、血圧を上げることで脳の血流を維持するのが、通常の自律神経の働き。しかし自律神経がうまく働かないと、立ち上がった時に血圧が下がってしまい、立ちくらみが起きるのです。

「立ちくらみやめまいが体位を変えるごとに起こってしまうのが、自律神経失調症の一つの特徴です」

朝が弱いのも、自律神経失調症の症状の一つ。

「朝は交感神経が優位になってくることで、起き上がっても血圧がうまく調整される。それが自律神経失調症の場合、朝でも副交感神経が優位な状態がずっと続いていることになります。交感神経には、血圧をキュッと締めて血圧を上げる作用があるわけです」

「逆に副交感神経には、血管を緩めて血圧を下げる作用がある。朝は交感神経が優位になって血圧が上がらなくてはいけないのに、血圧がなかなか上がらない。いわゆる朝方の低血圧で、体を起こしても血流が頭のほうにいかないため朝はずっとだるい感じがあるのも、自律神経失調症の症状です」

「鼻水がしょっちゅう出て、いわゆる花粉症と言われている方が多いですが、実は自律神経失調症でも鼻水がよく出るのです。粘液分泌にはやはり自律神経が関係しますので、自律神経系の働きが乱れて、鼻汁分泌をコントロールできないのです」

便秘や下痢・腹痛などのお腹の不調、呼吸がうまく吐けない・気管支が拡張しない・ぜん息などの呼吸機能にかかわる症状も、自律神経失調症で起こることがあります。また、温かい時に放熱しない、周りがそんなに寒くないのに常に手が冷たい、上半身がのぼせて足が冷える、なども血管運動神経という自律神経系の失調症状です。

「末梢の細血管・細動脈には、自律神経が分布しています。手足の血管が寒くなるとキュッと締まって、放熱をしないようにするんです。それで手足を冷たくするのが、自律神経系の働きです。末梢の皮膚温や皮膚の循環も、自律神経系が調節しています」

「特に更年期の人などが、暑くないのに熱が強くなり、上半身、特に頭だけ発汗するのも自律神経系の調節異常ですね。自律神経がどういうところで働いているかを見れば、そのアンバランスが出るとどういう症状が出るかが大体分かります」

腸内環境やストレスが原因に

「最近は確かに、自律神経系の調節機能がうまくいっていない方が増えている印象がありますね」とおっしゃる上馬塲先生。自律神経失調症の原因は、腸内環境にあることも。

「腸の状態が悪く腸内細菌叢が乱れると、視床下部の炎症が起こりやすいと言われていて、それで自律神経失調症も出てきます。実は食べ物も大事なんですね」

睡眠も腸内細菌にも影響します。腸内環境をよくするためにも、睡眠と食事に気をつけましょう。

「また、自律神経系に大きく負担をかけるストレスが過剰になっていることが、原因の一つとしてあるかなと思いますね」

ストレスの種類には、精神的・肉体的・社会的、また合成保存料や着色料などの毒素が原因の化学的ストレスが挙げられます。

「ストレスが自律神経の中枢部である視床下部や下垂体に対して過剰な負荷をかけることで、そこが乱れるということなんですね」

神経系の変性疾患が隠れている場合も

「ただ、現代人に特徴的なストレスによる自律神経失調症だけではなく、視床下部・小脳・脊髄の神経が変性する病気もあり、その一つがパーキンソン病です。パーキンソン病の時は、脂汗が出るなどの自律神経失調症状が出やすいですね」

「あと自律神経は、錐体外路(すいたいがいろ)とともに筋肉の緊張にも関係していて、パーキンソン病の人は筋肉が硬くなります。そういう病態もありますので、簡単に機能的なストレスによるものと考えないほうがいいです」

まずはきちんと診察を受けることが大切。その上で、症状が病気によるものではないことがわかったら、自律神経系の中枢である視床下部の異常を改善しなくはいけません。

漢方薬は医師の処方を受けてから

自律神経失調症かなと思った時に、市販の漢方薬を自分で買って服用するのはどうですか?

「風邪をひいた時に葛根湯を飲むのは、交感神経が興奮し切れない人が症状を出すことが多いので、ある程度興奮させて体の循環をよくするためです。でも、非常に体が虚弱で交感神経が少しでも興奮するとますます循環が悪くなる人が葛根湯を飲むと効果がないだけでなく、手足が冷たくなったり、胃腸の調子が悪くなったりという副作用が出ます。ですから漢方薬は、お医者さんがきちんと体質や体調を診て処方しなくてはいけないんです」

自律神経失調の症状が出た時も、漢方薬を自分の判断で飲むのは控えましょう。

自律神経を調節するヨガ

急激に効くわけではありませんが、緩やかに自律神経を整える作用があるのがヨガ。ヨガはストレッチ運動ではありませんが、体を伸ばす動き自体も自律神経によい影響を及ぼします。

「基本的には体をストレッチして気持ちいい状態になると、副交感神経が優位になります。ただストレッチも痛いほどやると、交感神経が上がってしまう。気持ちいいゆっくりとした呼吸をしながらストレッチをすると、副交感神経が優位になってきて、交感神経が抑制されます。ですから、呼気を優位にした気持ちいいポーズなどは、交感神経を抑制して、副交感神経を優位にすることで、ストレスによる交感神経の緊張を静めてくれます。例えばヨガはまさに、そういう風に自律神経系を意図的に調節しているのです」

「自律神経は、西洋医学でいう神経自身が自律するという神経ではなく、東洋医学では自分自身が律することができる神経でもあるんです」

睡眠の質や食事も、自律神経の状態に関係します。自然のリズムと生活のリズムを合わせることで、自律神経を整えていきたいですね。

監修:上馬塲和夫/医師・医学博士。アーユルヴェーダ脈診の研究に対し、インドのグジャラート・アーユルヴェーダ大学からゴールドメダル受賞
ライター:沢田聡子

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