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「ホルモンバランスの乱れ」って結局どういう意味?【産婦人科医・高尾美穂先生監修】

2020/03/07

スポーツドクターの資格を持つ産婦人科医・高尾美穂先生。国立スポーツ科学センターの女性アスリート育成・支援プロジェクトメンバーとしても活動するトレ女の味方・高尾先生に、女性のお悩みについてうかがう連載。今回は、女性ホルモンについてお聞きします。

生理周期には四つの時期がある

生理周期と女性ホルモンには、深い関係があります。生理周期の中には、卵胞期・排卵期・黄体期・月経期という四つの時期がありますが、これは二つの女性ホルモンの分泌量によるものです。

「エストロゲンとプロゲステロンという二つの女性ホルモンから成り立つのが生理周期で、まず生理中(月経期)はどちらのホルモンもない時期です。生理後から排卵までの卵胞期は、プロゲステロンはなくてエストロゲンのみがある時期。排卵から次の生理までの黄体期は、プロゲステロンもエストロゲンも両方ある時期ということになります」

「二つの女性ホルモンのそれぞれの役割を考えてみると、エストロゲンが単独で出ている時期というのは、女性にとっては非常にプラスになるような時期です。逆に排卵をすぎた後の黄体期には、エストロゲンも出ていますが、プロゲステロンの作用が非常に強く現れます。それがPMS(月経前症候群)という形で現れたりして、『嫌だな』という感覚がある人が少なからずいる時期ですね」

「ホルモンバランスの乱れ」って結局どういう意味?

「ホルモンバランスの乱れ」という言葉はよく使われますが、その意味はあいまいです。高尾先生は、痩せすぎなどで女性ホルモンの機能が低下すると、月経周期が乱れたり止まったりすることが「ホルモンバランスの乱れ」だと説明します。

「まず、生理がほどほどのサイクルで来ている人について説明しましょう。月経周期は25~38日間が正常とされていますが、“ほどほど”というのは、生理周期が正常を多少オーバーしても排卵のある周期の人達までを指します。この人達については『ホルモンバランスは乱れていない』ということになります」

「特に生理前の調子の悪さに対して、よく『ホルモンバランスが原因』というような説明をしますが、それはプロゲステロンが出ているから調子が悪いわけですよね。それを考えると、『ちゃんとホルモンが出ているから、今は調子が悪いんだ』という理解をしてもらったらいいのではないかと思います」

PMSはツライものですが、「女性ホルモンがちゃんと分泌している証拠」と前向きにとらえることもできるということ。

「YOLO読者の年代において『ホルモンバランスが乱れている』と言い切れるのは、エストロゲンが出ていないという状態の時。エストロゲンが出ていないということは、生理そのものが来ないということになるので、生理周期が正常から大幅にズレてしまっているという場合は、ホルモンバランスが乱れている可能性が高いと言ってもいいでしょう」

「もう一つ、プロゲステロンが出ていないということは、すなわち排卵がないという意味なので、無排卵月経になります。月経のサイクルが正常周期である25日よりはるかに短いか、38日よりはるかに長い。そして出血は量が少なく、メリハリがなくてズルズル続く。こういった出血が無排卵月経の特徴なので、その場合もプロゲステロンが出ていないという意味で、ホルモンバランスの乱れという言葉で表してもいいのではないかと思います」

視床下部は、ホルモン分泌の司令塔

「ただ、世の中で説明としてよく使われる『ホルモンバランスの乱れ』という言葉は、『体の巡りが若干うまくいっていない』という意味合いだととらえてもらえればいいのではないでしょうか。そして、その状態に対してできることは、視床下部に優しくすることですよね」

脳の視床下部は、ホルモンを分泌する内分泌系の司令塔と言える働きをしています。視床下部に大きすぎる負荷が加わると、ホルモンも適切に分泌しません。YOLO世代(20~30代)の生理トラブルの原因としては、何が多いのでしょうか?

「痩せすぎや、生体リズムに合っていない睡眠ですね。生体リズムに合っていない睡眠とは、朝きちんと起きない、夜きちんと寝ない、ということです。今、朝のはずなのにまだ体は交感神経優位になっていない、逆に、本当は真っ暗なはずの夜間にとても明るい環境にいるというような状況は、視床下部にとってはストレスですよね」

精神的なストレスが、生理トラブルの原因になるパターンもありますよね?

「もちろん、あります。視床下部は、ストレスをキャッチする場所ですからね。ただ一つ言えるのは、もともと生理が結構順調で周期ぴったりに来るような人は、ストレス耐性が高いということ。もともと生理周期がばらつくような人のほうが、ちょっとしたストレスでも割とすぐ月経が止まってしまいます」

卵巣機能のベースは成育歴にあり

「なので、婦人科外来に来てくれた人によく聞くのは、『もともとの生理周期はどうですか?』ということです。本人がもともと順調、または不順と思っているのか、そこはある程度大きな判断の材料にはなりますね。もともと順調と感じてきた人は、だいたいどうにかなる印象です。一度ぐらい、周期が今一つという時があったとしても、リセットするような形で一度生理をお薬で起こしてあげると、そこから先は元に戻るようなケースが多いですね」

「12か月で12回生理がくるのが理想ではあるのですが、1回や2回不順な周期の生理があったとしても、ベーシックな婦人科検診が受けてあれば『そんなに心配しなくていいですよ』ということができます。絶対に婦人科外来を受診してほしいのは、3カ月生理が来ない、または出血が10日以上も続いてしまう場合ですね」

もともと生理のサイクルがきちんとしているというのは、生活習慣と生まれつき、両方が要因でしょうか?

「そういうことですね。結局は育ってくる過程、10~12歳ぐらいまでの成育歴がかかわってきます。きちんとご飯を食べて寝ていたか、その間に無理な減量や大きなストレスがなかったか、そこが卵巣機能のベースになるでしょう」

多嚢胞性卵巣も月経周期の乱れの原因に

またYOLO世代(20~30代)については、生理周期の乱れの原因として多嚢胞性卵巣もあるとのこと。多嚢胞性卵巣とは、卵胞がたくさん卵巣に存在している状態です。

「多嚢胞性卵巣の方は、エストロゲンの値は高めなのに生理がこない。こういう方達は、多嚢胞、つまりたくさんの嚢胞がつまってしまっていて排卵できない、物理的に外に出られないというイメージですね」

「卵胞の在庫を使っていくのが私達にとっての加齢ですので、年齢が高くなっていくと、多嚢胞という状態がだんだん解消されていきます。例えば、24歳ぐらいで『多嚢胞性卵巣だから生理が来ない』と診断された人達が35歳になった時も同じ状態かと言ったら、そんなことはたいていなく、だんだん生理周期が安定していきます。多嚢胞の状態が解除されていくので、そうなると排卵が安定し周期も安定してきます。40歳の人が多嚢胞性卵巣ということはマレ、と言えます」

「ですから、20代から30代前半にかけての多嚢胞性卵巣という状態であれば、見せかけ上の生理でも安定させて起こしておくのがある意味治療法にはなるようです。ピルも治療法になります。この疾患は肥満が関与していますが、痩せすぎは原因にはなりません」

ともあれ、生理周期の乱れが著しく長く続くようなら、婦人科外来を受診することをオススメします。

監修:高尾美穂/産婦人科専門医・医学博士・婦人科スポーツドクター。女性のための統合ヘルスクリニック・イーク表参道で副院長を務める
ライター:沢田聡子

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