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瀬筒良子|より気持ちいいボード。 今の焦点はそこにある。

『マジックボード』。それは、外見上のアウトラインやロッカー、さらにデータ上の数値といったものでは計り知れないような、特別なフィーリングを伴ったサーファーとサーフボードとの一期一会の出合いである。そして時に、自分や自分の周りの者達の人生までをも一変させてしまうような、強烈な体験となるのだ。そこで、著名なサーファー達が経験した『マジックボード』との出合いやストーリーに耳を傾けてみた。

日本のレディスロングボード界を牽引してきた彼女が再びサーフィンの世界に帰ってきた。ミッドレングスがいい――。その心境の変化を伺う。
「マジックボード」
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何を今自分が求めているのか? それによってマジックボードは変わる

丸山良子。レディスロングボードの世界を一世風靡した存在だ。決して真似のできない女性らしくて美しくしなやかなサーフィン。母もサーファーで、そのカルチャーを昔から受け継いできた。サーフィンの多くを知る彼女だからこそ、見せてきたスタイルがある。同じくロングボード界を牽引する瀬筒雄太と出会い、結婚。2人の子供にも恵まれた。

「今はお母さんになってサーフィンをする時間も減っているし、体力も他ですごく使っているんだと思う。技がどうのこうの、アクションがどうのこうのとかはさておき、海にサッと入ったときに『気持ちいい〜』と感じるボードが良いなと思えてきたんです。それがきっと一番なんだろうな」

最近のお気に入りはライアン・バーチ。彼のミッドレングスに乗りたいと思っていたところにタイミング良く出合えたボードだ。これまでに一緒にサーフィンをする機会も多かったが、彼のシェイプを自分のボードとして手にすることはなかった。つまりこれは実質初めての彼のボードだ。

「もう気持ち良すぎちゃって。ライアンのサーフィンは短い板でアグレッシブ。だけど長さのあるグライダーではクリーンなサーフィンをする人だから、どんな感じなんだろうとは思ってて。実は少し構えて入ったんだけど、パドルをした時点で『あれ、何この板』と思ってしまった。すごく気持ちが良かった。最初に持ち出したのは腹くらいの波で、ややサイドオン。ざわっとしていたんだけど、自分の思い描くようなラインを描けた。それってすごい。この人達はやっぱり違うな、と実感できた瞬間でもありました」

▲「現役の頃ならこの企画にはロングボードを出したと思う」と良子さん。今と昔ではマジックボードに対する考え方は全く変わった。より気持ちいいボード。今の焦点はそこにある。慌ただしい時間を癒してくれるからだ

クイックに波に乗る。忙しい毎日を送る彼女にとって、ミッドレングスが最近のチョイスだ。短いボードで衝撃を受けたのはもうひとつ。デリク・ディズニーが削るサーフボードだ。

「彼が来日した時に雄太が少しケアをしたんです。そのお礼にと言って、デリクがタッピーの工場でボードを削ってくれた。雄太は細かいことは何も言っていない。それぞれの思いが自由にセッションしたようなボードなのかな」

こんなに短いのは久しぶり。そう思って良子さんが乗ったボードは、パドルした瞬間から「あ、行ける」と思ったそう。この長さでも楽しい。その感じはとても大事だ。子育てに忙しく、サーフィンに費やす時間も少なくなった。当然体力も落ちるし、体幹もなくなる。短いボードに乗る自体、今までにない抵抗感があった。

「でもパドルした瞬間に行けると思えた。そのまんま、多分腹腰くらいの堤防脇だったのかな、パッと1本乗ったら、『え、サーフィン上手いんだけど自分(笑)』みたいなラインを描けてしまった。ああ、そういうのはさすがだなあ、と改めて思いました」

自分がどうサーフィンしたいか。それが最も重要

良いボードに乗ると、自分が上手くなった気がする。その感覚はプロサーファーにとってもたぶん一緒だ。ライアン・バーチのボードに関しては、なんとなくロッカーがないところが大事なのかなと感じた。あれでノーズもロッカーがなければもっと難しいはずだが、彼のボードにはほどよくノーズロッカーもついている。ボリューム感もいい。小柄な良子さんにはやや大きいイメージだが、問題はない。ローロッカーだからスピードもすごい。波を切っていくところもクリーンだし、中腹でターンして、ボトムで切って、フーッとスパンする。その感覚が気持ちよくて、彼女はサーフィンの魅力を再び思い出した。

▲子育てや家事に慌ただしい日々を送っていると、選ぶボードも変わってくる。普段の生活と対比になるような気持ち良さを運んでくれるボードが彼女にとって特別な存在となる。マジックボードに出合う時に必要なのは、まずは自分がどんなサーフィンをしたいか、だ。人にとって良いボードが必ずしも自分にとって良いボードとは限らない。自分が好きと思えるサーファー、そういうものを見つけていくと、瞬間的に自分のスタイルが見えてくる。さまざまなブランドが生まれている今、ボードありきでサーフィンを考えがちだが、それは違う。あくまでも自分のスタイルを優先したい

「ライアン・バーチもデリク・ディズニーもすごくお酒を飲む人たち。すごいんだけど何だろう。海に入ると全然違うんです。シェイパーとしてというよりも、人として海に入ると放つものが違う。サーフィンの流れもライン取りも。私はホームポイントである太東で何回も一緒にサーフィンをしているけど、彼らのサーフィンは明らかに何かが違う気がする。そういう人たちが削ったボードを実際乗ってみて、感じることが多々あります。サーフィンがあんなに上手くて、こんなボードを削れるのも本当にすごいと思う。シェイプがすごくてサーフィンはそこそことか、サーフィンは凄いけど板は削らない人もいるんだけど、両方ができる彼達は私の好みにドンピシャ! そういう人は最高にかっこいいと思う。デリク・ディズニーのボードは、丸みが全体的にあるのと、テールエンドのところがスパっときれいに落ちてるところが好きでした。なんかテールを蹴っていて気持ち良かった。あそこの水抜けがいいのかな、ちょっとハルっぽいって言うのかなんて言うのか。ライアンは長めのボードに乗っている時のライン取りが美しい。女性的でもあるけど、ターンやボードのしなりに男性らしい力強さが残っている。その感じは自分に出せないなあ、と、いつも思ってしまうんです」

女性らしいサーフィンを魅せる良子さんの未来はまだまだ続く。母になり、新たな感情が芽生えるとライディングはどう変わるのだろう。サーフィンは自身の今の姿そのもの。マジックボードは後から付いてくるものだ。マジックは簡単に変わることもあるだろうし、簡単に味方になることもある。それは自分の生きてきた人生そのものの証なのだ。

▲久しぶりに海に帰ってきた良子さんは生き生きしている。海のパワーをたっぷり浴びて、さらに強く美しくなる。嬉しそうに波に乗る姿がサーフィンの魅力をすべて物語っているかのように思う

Profile

瀬筒良子。両親の影響で幼い頃から海へ通い15歳でロングボードをスタート。23歳でNSA全日本アマチュアタイトルを取得。同年オーストラリア・ヌーサで行われたコンテストでも優勝。24歳でJPSA初代プロロングボーダーとなる。日本を代表するロングボーダーの瀬筒雄太と結婚し、2人の子供の母に。現在は千葉・太東にてサーフショップ「YR」を夫婦で営む。

「マジックボード」はこちらから。

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NALU 編集部

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テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。

NALU 編集部の記事一覧

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