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本場カリフォルニアのリアルなサーファーズハウスが見たい! vol.9|ベンチュラ・オーハイ

本場カリフォルニアのリアルなサーファーズハウスは、サーファー独自の感性に満たされた個性的なものばかり。しかしそこに共通するのは、“豊かに暮らす遊び心”。そんな夢の城を、私達は敬愛を込めて“Surf Shack(サーフ小屋)”と呼ぶ。

NALU本誌の人気連載vol.9は、サーフボードシェイパーのジェイコブ。世界中を渡り歩いたジェイコブが選んだサーフシャックは、オーハイのダウンタウンから山奥に向かう清流のほとりにある。大自然の中で育った彼らしいワイルドな環境で、小さなコミュニティーの中、電波もない限られたライフラインの生活を素敵なファミリーと楽しむ。

「サーファーズハウス」
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逆境とも言える厳しい体験をしたからこそ、最低限のライフラインで幸せな環境を作り出せる

サーフボードシェイパーであり一人娘の父親であるジェイコブと彼のファミリーは、オーハイの山中で自給自足の生活を営む。家庭菜園の奥にある一番大きな木にはツリーハウスがあり、鳥達のさえずりが聞こえてくる。中庭にはグースやチキンが暮らす鶏小屋があり、彼らはみんなで列を作り大騒ぎし、毎日ジェイコブ・ファミリーのために卵を生んでくれる。まるで絵本の世界に訪れた感覚になる暮らしがここにある。

▲動物達と共存しながら極めて素朴な生活を目指す。庭の中心にはニワトリたちが暮らすヘンハウスが。あえて携帯電話が通じない場所を選び、シンプルに価値あるものを、世の中に向け生み出し続けている

シエラネバタ山脈に囲まれたノーザンカリフォルニアで生まれ育った彼は、物心がついた時にはスキーやスノーボードを始めていた。父親が優秀なスキーヤーだったので、なんと3歳になる頃にはすでに道具を一式揃え、バックカントリーに連れ出されていた。雪山で暮らしていた家族は、ジェイコブが5歳になるとオアフ島の東海岸カイルアに引っ越し、そこで3年間を過ごす。今までとは全く異なる常夏の生活に最初はとまどったが、青い空と透き通った海のある温暖な暮らしに徐々に順応し、ボディーボードやセーリングの手ほどきも父から受けた。

高校を卒業するとUCSBでエンジニアになることを夢見て、サンタバーバラに引っ越した。サーフポイントに囲まれた海沿いの街で大学生活を送りながら、自分のボードを自らシェイプするのはクラフトマン家系の血筋ではごく自然なことだった。気ままなホビーとして始めた事だったが、小さい頃から得意としている鮮やかなカラーリングスキルも手伝い、友人のボードシェイピングを頻繁に頼まれるようになる。

▲上級者達が集うパーフェクトライトのリンコンの中でも、一際目を引くジェイコブのサーフスタイル。ウェイトを後ろに低く保ちリラックスした様は、まるで波に張り付いているかのよう(photo: Jason Swift)

そんな学生生活だったが、大学在学中に1年間交換留学でシンガポールに住んだ事で転機が訪れた。後に妻となるセリーナと出会ったのだ。27歳になった6月に、カリフォルニアからオーストラリアに小さな3人乗り38フィートのセイルボートで、2年半をかけた大航海に挑む。ところがなんと出航から2日めにひどい悪天候に阻まれた。予想だにしなかった強風が吹き荒れる大海原で、上下に揺れ続けるたった一隻の小さなボート。嵐は強くなる一方で、激しい雨は一向に止む気配はない。同乗していた親友が船酔いで苦しむ中話し合った結果、意を決して一晩耐え抜き前進する事に。長期戦に備え一人が必ず起きて順番に休憩を取り、なんとか朝を迎えた頃には穏やかな顔をした凪の状態に戻っていたという。そこから21日間、一度も陸に立ち寄らずハワイに到着。その後もジェイコブたちは南下を続け、広大な太平洋に浮かぶ数々の島に立ち寄りながら、完璧な波を求めた。中でもマングローブが生い茂り、クロコダイルが生息するマーシャル、ソロモン諸島に立ち寄った時には、生涯忘れがたい波に出会ったという。

▲バックヤード側には大きなウッドデッキを配し、その上にはドライサウナも

オーストラリアに着く頃に、ところどころでこのセイリングに合流していたセリーナが身籠っている事が判明する。そこでカリフォルニアに戻ってカーペンテリアで第一子に恵まれたのだが、そこからは苦難の連続だったと言う。2017年の冬にはトーマスファイヤーに見舞われ、思い出が詰まったバンが全焼する。しばらくトレーラー暮らしやキャンプ生活を余儀なくされたが、知り合いの紹介でオーハイのこの素敵な家と出会う。見た目はジャンクだったため誰も他の競争相手が現れず、幸運なことに売値で購入することができた。

▲デッキから室内に入ると大きなリビングが広がり、奥には子供が大好きなアウトサイドリビングにつながる。この小さな集落には数えられる程しか家がないためご近所は皆顔見知りで、家族単位で付き合うことのできるナイスネイバーとの事

居住可能なトレーラーを横につけ、1年かけて要らないものを捨て、電気、ガス、水回りを徹底的に整備。形だけでも家族でなんとか住めるようにした。そこからは忍耐強く少しずつ細かい部分を修繕し、最後にはホームサウナまでも設置した今の快適な暮らしを手に入れたのだそうだ。夏になると気温が高くなるオーハイだが、しっかりと手を入れたアウトサイドリビングが大活躍する。山の中だが蚊帳をつけることによって動物や虫との共存も可能だ。最終的に家のリモデルに2年以上かかったが、アイデアが豊富なジェイコブならではの、素敵なオリジナルサーフシャックに仕上がった。

▲天井や壁面上部に多くの窓を取り入れ温かい木漏れ日が常に差し込むサーフシャック

一方で、ジェリー・ロペス、ライアン・ラブレース、リッチ・パベル達のレジェンダリーデザインを、才能ある若手に削らせるトリムクラフトに所属し、今ではその先頭に立って、有能なメンバーの中でも最も多くのオーダーを受けるリーダーだ。独自のブランド“Jive”を立ち上げオーハイダウンタウンにあるプライベートシェイピングベイで一人一人のサーファーの要望に応えたカスタムオーダーを受けマジックボードを生み出す。今でも仲間のシェイパーからの依頼を受け、独自の色彩感覚でボードを鮮やかに彩る。

▲ファミリー・ロードトリップは、いつもたくさんのボードと一緒。所々で合流する彼の友達がウエットだけで気軽に来れるように、エクストラボードまで用意しているのがジェイコブ流

Jiveと名付けたのは、自分がシェイプしたボードが一人のサーファーとシンクロして、大自然とのつながりを持ってくれると信じているからだ。真摯にボードを作り続ける背中から、職人のプライドを感じる。一人娘は目に入れても痛くないほど可愛いはずなのに、そんな彼女を横目に、ジェイコブは自分の内なる宇宙を表現するべく、一本一本、魂と愛を込めて丁寧にハンドシェイプする。彼のシェイピングスタイルは、多くの人を惹きつけてやまない。

▲青い空と自然に囲まれ常に家族と共に過ごせるライフスタイルを満喫できる環境ながら、ダウンタウンに今年完成した、手作りのシェイプルームまではわずか15分という好立地

 

「サーファーズハウス」の記事はこちらから。

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NALU 編集部

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テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。

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