サーフィン・御前崎|日本ロングボード紀行
NALU 編集部
- 2022年01月18日
海に囲まれた日本列島には、日々、大海原からうねりが押し寄せる。豊かな海岸線、峻嶺な山々から注ぐ大河に恵まれ、さまざまな波を生み出している。四季折々、津々浦々で、今この瞬間も波が生まれては消えていく。そこには、その波をこよなく愛し、守り、慈しむサーファー達の姿がある。そう、日本は世界に誇るサーフアイランドなのだ。この連載では、ロングボードを切り口に、各地のサーファーコミュニティと彼らの地元の波への思いを伝えていきたい。
今回、足を運んだのは静岡県・御前崎。地元で活躍するロングボーダー、森川一雄プロが案内する。
ロングビーチとポイントの多さが魅力!
静岡県最南端の岬 「御前崎」、Oh~My Zaki! 長く張り出した遠州灘の岬は南から西のウネリに反応が早くキャッチする。特に西からのウネリには海流により敏感である。地形は岩、リーフの上にサンドで形成されて砂の着き方、ウネリの向きで様々な波の形、ブレイクが存在する。御前崎のいいところは、遠州灘に面するロングビーチと駿河湾の内海を30分程度で移動でき、風の向きやレベルに応じたポイントが複数あることだ。
▲昨年の台風8号のスウェル。ドロップするのは今回のガイド役、森川プロ。「モーリー」という愛称で親しまれている(photo: Pedro Gomes)
▲御前崎は地勢上、西からのうねりに敏感に反応する。風の向きやレベルに応じてポイントをチョイスできる
御前崎の波も時代とともに変化して来た。私がサーフィンを始めた40年前には、真っ白なフカフカな砂があり、波打ち際までも遠く夏はサンダルを履かないと熱くて歩けないほどの距離があった。遠浅の地形でAフレームのパワーのある三角波が立っていたことも鮮明に記憶に残っている。コバルトブルーに近いクリアーな水の色、波は薄いチューブを巻き、裏からライダーの姿が透き通って見えていた。ロングでノーズライドの時も、レールがフェイスを走っている様子が裏側から見える光景も素晴しかった。
▲青い空に青い海。美しいコーストラインを眺めながら巡るドライブは最高だ(photo: Pedro Gomes)
しかし現在は砂がなくなって砂利だらけのビーチになってしまい、チューブを巻くシークレット的なポイントも消滅してしまった。これから10年後にはどうなってしまうのか? この自然環境の変化は世界共通の問題で、手遅れかもしれないが未来を考えていかなくてはならない。
▲御前崎のランドマークといえば、この灯台。1874年完成と古い歴史を持ち「日本の灯台50選」にも選出
御前崎のローカルはほとんどショートボーダーが多く、波の小さな時にはロングでクルーズして楽しむロコもいる。私も20代前半はウインドサーフィンのウェーブパフォーマンスのプロ選手だったので、風を使って超高速で海面を突っ走り、フルドライブのターンからリッピングやエアー、沖に向かって波のバンクで思いっきりハイジャンプや前周り後ろ周りのループなどアグレッシブなパフォーマンスを行っていた。
▲「遠州の空っ風」が吹く冬場はウインドサーファーにとって格好のゲレンデに
そのころにロングボードの50/50のレールの乗り味を知って、それにドハマリした! その私が感じた乗り味とはローカル弁で「じゅるい感じ!」の感覚がたまらなかった! 「じゅるい」とは、柔らかくしなやかに滑るルースな感じと自己解釈する。
▲ロングボードのメローな乗り心地は、地元言葉で表現すると「じゅるい」。確かにこれは、「じゅるい」な
御前崎の波は太平洋からのダイレクトなウネリがヒットするので、パワーのある早めなブレイクをする。サイズのある時にはハワイのサンセットのような水の量が多くパワフルで、テイクオフのドロップがスリリングで楽しい。しかし、強烈なカレントやドデカイ波を喰らったり修行のようなハードな日も多々ある。普段はリップやトップターンしてカットバックをするようなブレイクが多く、ロングボードはパフォーマンスタイプがトリムしやすいと思う。
▲ハードなコンディションのイメージが強い御前崎だが、ポイントを吟味すればロングボードカインドな波も
一方、西寄りの風がオフになる駿河湾はダウンザラインのビーチブレイクが多く、シングルフィンでノーズライドを楽しむロンガーが各地から訪れてにぎわっている。御前崎は無料駐車場から海へのアクセスが近く、トイレ、水道も完備。メロン(自衛隊レーダー)辺りから坂下まで、複数のピークが存在しブレイクするので混雑を避けて波乗りできる。だが、たまにロングボーダーが団体で入水しポイント占領の悲惨な光景も見かける。世界全国どこのポイントも同様だと思うが、ローカルをリスペクトしてマナーとモラルを心得て安全第一で楽しんでほしい。
▲古くからサーフィンが盛んだっため地元サーファーのコミュニティもタイトだ。ビジターも積極的に参加したい
次世代の日本のサーフシーンを担う若者が次々と育っている
最近では、JPSAで最年少プロになった御前崎のキッズサーファーだった池田美来やその妹の真央、ウインドで世界で活躍したレディースチャンピオンのモトコプロの娘の李(すもも)達も御前崎から日本チャンプを目指し世界へ羽ばたこうと頑張っている。
▲今、御前崎では次世代の日本のサーフィン界を担う新しいジェネレーションが育っている。JPSAで最年少プロになった池田美来さん(photo: Unagi_ya)
▲池田美来さんの妹の真央さん(photo: Unagi_ya)
▲元ウインドのレディスチャンピオン佐藤素子プロの娘、季(すもも)さん(photo: Unagi_ya)
ウインドサーフィンでも石井孝良(たから)と弟の颯太(はやた)が世界で大活躍している。他にも第二世代のキッズが元気良く波乗りしている姿が未来の御前崎に頼もしく感じる。
▲御前崎を愛する女性ロングボーダーも少なくない。朝夕ともに海にやってくるマミさんもその一人(photo: Pedro Gomes)
民宿に泊まって美味しい海の幸を食べてプチサーフトリップもおすすめである。キャンプ可能な施設もあり、地魚や伊勢海老などでBBQも楽しめる。私はそんな飲み会をナイトサーフと言って仲間と楽しんでいる。御前崎はナイトサーフのいい波も潜在する(笑)。
▲キャンプ施設もあるので、のんびりステイしながら地元の食を楽しむのもよし。自由に旅できる日が待ち遠しい
▲日本のシンボル、富士山を遠望する御前崎。静岡県最南端の岬で太平洋からのうねりに敏感だ
世の中が落ち着いたら、昼も夜もいい波を乗りにパワースポット「天国御前崎」にお出で下さい。楽しむためのルールとマナーは守ってね! Oh~My Zaki!
▲朝日に染まる霊峰富士。早く平和な日が訪れますように。そんな願をかけたくなるほど神々しい(photo: Pedro Gomes)
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rider: Kazuo Morikawa photo: Unagi_ya(サムネイル画像)
◎出典: NALU(ナルー)no.121_2021年7月号
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テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。
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