モデル仲川希良の「絵本とわたしとアウトドア」#01 わたしのワンピース
仲川 希良
- 2020年05月31日
ワンピースに着替えて深呼吸して
山の空気を体を染み込ませて
山のなかにいると思わずしたくなる、深呼吸。空気がきれいなのはもちろんですが、山ならではの香りがまた、たまらないのです。
春の雪解けといっしょに漂う、しっとりとした土の香り。夏のお天道さまに温められて立ち昇る、ハイマツの香り。私のお気に入りはオオシラビソです。心落ち着くあの香りを忘れたくなくて、何度も何度も吸い込んでいると、体にその香りが染み込んでいくような気がします。
香りだけではありません。朝焼けや夕焼けを見ていると、全身がその光に包まれることがあります。遠い山並みの向こうからやってくる力強い赤や、森の木々の向こうに沈む淡いオレンジ。太陽の光を浴びながら思い切り深呼吸すると、体の中までもがその光の色に染まる気分。
花崗岩が照り返したむせ返る熱気を吸い込んで、夏の暑さに染まり。鼻の中がヒリリと張り付くような雪の日は、その冷たさに染まり。胸を開いて深く息を吸い込むと、体の中にまで山の美しい景色を取り込めるような気がするのです。
「わたしのワンピース」は、ある日真っ白な布が空から落ちてくるところから始まります。その布をワンピースに仕立てた真っ白なウサギちゃん。彼女が新しいワンピースを着て「ラララン ロロロン」とお散歩に出ると、お花畑を歩けばワンピースが花模様に、雨が降れば水玉模様に変わります。
子どものころはくるくる変わるワンピースの柄が楽しかった絵本。いま読むと、山での深呼吸を思い出すのです。光を含んだような濁りのない色使いも、澄んだ自然の世界を感じさせてくれます。
ふわりと風をはらむワンピースやスカートは、山に持っていくことの多いアイテムです。とくに小屋に泊まって山を楽しむとき。締め付けから解かれ軽やかな気分にさせてくれるワンピースは、着替えにぴったり。ワンピースのまま夜空に浮かんで眠ってしまったウサギちゃんの気持ちもよくわかります。
着替えたワンピースの裾を揺らしながら、小屋の外を散歩する時間はとても幸せです。日が落ちたばかりの夜空を見上げて深呼吸すればきっと、私もウサギちゃんのように、星が輝き始めた柔らかな紺色に染まっているんじゃないかしら。なんだか山用に、ウサギちゃんとお揃いの白いワンピースがほしくなってきますね。
わたしのワンピース
(西巻茅子・著/こぐま社)
お散歩の行き先で模様の変わる、ウサギちゃんのワンピース。小鳥の模様になったら空まで飛んで……。鮮やかな色使いと、何にも染まっていない真っ白な見返しページもすてき
モデル/フィールドナビゲーター
仲川希良
テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの11 年目。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。著書に「山でお泊まり手帳」(小社刊)
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モデル/フィールドナビゲーター
仲川 希良
テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの12年。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。著書に、『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』
テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの12年。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。著書に、『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』