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モデル仲川希良の「絵本とわたしとアウトドア」#10 うさぎのくれたバレエシューズ

桜のある風景でまず思い浮かぶのは、ずらっと並ぶソメイヨシノ。街の大通りだったり川の土手沿いだったり。いっせいに咲いて散っていく華やかで儚ない姿を見るのは、毎年の欠かせない楽しみです。満開が春風に吹かれる桜吹雪や、ライトアップされた夜桜も素敵。でもそれは人の作った景色、人の作った美しさなんだよなと気付いたのは、山に登るようになってからでした。

春の里山に出かける途中、車窓から遠目に眺める山肌はまさに「春の色」で、心までふわりと軽くなる柔らかな色合いです。いく通りもの淡い緑色はどれも霞がかかったように優しく、その合間に千切れ雲のように混ざる白色……山桜の花です。そうか、本来桜はこうして点々としてるものかと、その景色を見て初めて思いあたりました。

山の中を歩いている間はなかなか桜の花は目に入ってきません。冬の間鈍った体をよいこらしょと持ち上げる足下の地面に、うすい花びらがピタリと貼り付いていて初めて気づくこともあります。見上げると、ツヤのある若葉とともに花。清潔な白や、そこにわずかに滲むピンク。まだ葉が揃わず枝の目立つ森で、そこだけポッと咲いた桜が風に揺れるようすは、美しさとともに少し不思議な妖しさを感じます。この花に見とれる私は、誰かに見られていやしないかしら……狐か狸か、それとも兎?

山のなかに人が植えた桜ももちろんある。写真は香貫山の頂上付近で、散歩に訪れた地元のハイカーをねぎらうように咲いていた河津桜。山岳宗教から生まれたという吉野山の信仰の桜景色も見てみたい

 

「うさぎのくれたバレエシューズ」は、踊りが大好きなのにちっともうまくならない女の子の元へ、一足のバレエシューズが届くところから始まります。差出人は「山のくつや」。履いてみると不意に体が軽くなって、そのまま山まで駆けていった女の子は、大きな桜の木のなかで一生懸命仕事をする、うさぎの靴屋を見つけます。うさぎバレエ団のために、桜の木の汁で染めたバレエシューズをせっせとこしらえる靴屋さん。仕上がった桜色のバレエシューズを履いたうさぎ達と女の子は、風になって蝶になって花びらになって踊り続けるのです。ボロボロになったバレエシューズとともに我に返り、薄紫になった山を駆け下りる女の子。夢のような美しさと怖さを併せもつ、山の桜が目に浮かぶような絵本です。

うさぎが隠れていそうなほど大きな桜の木に、私はまだ山で出会ったことがありません。探して行くよりも、いつか不意に出会いたい。花の咲く時期に見つけてみたい。裸足でだって素敵に踊れるようになった絵本の女の子のように、その時は私にも何か不思議が起こるんじゃないかしらと、期待してしまいます。

 

 

うさぎのくれたバレエシューズ
(安房直子・文、南塚直子・絵/小峰書店)
繊細な銅版画で表現された、内側から光るような満開の桜。とくに夜空を背にして花吹雪を散らす姿を描いた最後のページからは、桜の香りまで漂ってくるよう。

 

モデル/フィールドナビゲーター
仲川希良
テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの11年目。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。新著『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』(枻出版社)が発売中!

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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