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【ランドネ編集後記】#6 自然のそばで、長く過ごすこと

編集後記担当の安仁屋です。最新号『ランドネNo.120 11月号』の第二特集では、ランドネのステップアップ連載「ランドネ的ロングトレイルの楽しみ方」を紹介しています。

「ロングトレイル」といえば、「歩く旅」を楽しむための道。全国各地には、ロングトレイルと名前の付くルートが点在していて、登山道や自然散策路などを歩きながら、地域の自然や歴史、文化に触れることができます。(※じつはつい先日、「世界自然遺産 奄美トレイル」の取材に行ってきました。そのようすは、次号11月売り『ランドネ1月号』と、『フィールドライフ冬号』でそれぞれ別の島のルートを紹介しますので、お楽しみに!)。

そして、今回の企画を進めるにあたって、まず初めに考えたことは、“ランドネ的”の部分。読者のみなさんが「歩く旅」を楽しみながら、ステップアップするには、どんな提案がよいか。大切にしたいと思ったことは、歩きたいと思える“きっかけ”と“自分らしさ”です。

私たち“ランドネちゃん”は、山歩き+αの楽しみが大好きです(よね!?)。長い道を歩こうと思っても、その先にどんな“おたのしみ”があるのかによって、歩きたいか、あまり気が進まないかが決まる。逆にいえば、その楽しみのためなら、いつもの自分から一歩踏み出して、少し背伸びをしてでも歩きたいと思えたりする。

余談ですが、いまの私が歩きたいと思う“きっかけ”はふたつ。ひとつは、お気に入りの景色や植物を誰かに紹介したいとき。(コロナ禍前、毎年のように歩いていたのは、日光白根山と尾瀬。日光白根山は、山を好きになってもらいたい友人を連れていくことが多く、歩き始めから最後まで、森あり、稜線あり、エメラルドブルーの湖ありと、初心者の人も飽きさせない山だと思っている。尾瀬は自分にとってホームマウンテンで、季節ごとの植物や風景を見に。歩けばいつだって、新しい出会いや感動を提供してくれる場所)。

もうひとつは、知らないモノやコトに触れられるとき。(初めてのモノやコトに触れることは、怖かったり緊張したりもしますが、その先に現れる枝分かれした道は、いつかの”おたのしみ”へと導くものだと思っているので、ちょっとだけ頑張る。最近だと、南の島でバックパックを背負って海沿いのトレイルを歩いたことも、自分のなかでかなり大きな経験に)。

何を”おたのしみ”と感じるかは、人ぞれぞれですが、絶景、山の上で食べるごはん、お花畑、ふもとに新しくできた宿、おしゃれなカフェ、山の恵みをたっぷりと受けたお土産、などなど。

”自分らしさ”は、心が動く瞬間や心地よい時間を用意して、とにかく自分がよいと思える歩き方をする。そのためには、おたのしみスポットや、立ち寄りたいお店などの場所を地図上で確認して、どんなルートを選べば、限られた時間のなかでそれらをつないで歩けるか、考える必要があります。歩行時間もしっかりと計算して、どこで休憩をして、どこでごはんを食べて、どこで眠るのか。自分はどれくらい歩けるのかを把握することも大切。日帰り登山をメインに楽しんでいる方が、いきなり長い距離や長い時間、山のなかを歩くのは心配なので、ランドネ的ロングトレイルでは、「丸1日以上、自然のそばで過ごす時間をつくる」としています。

自然のなかで、朝昼晩を過ごし、一つのエリアに長く滞在すると、周りの景色や空気の変化を感じられたり、新しい魅力を探す目をもつことができる。それは山を歩き続けるだけでなく、ふもとの町を散策したり、地元の人と話すことでも体感できると考えたのです。歩くことに疲れてしまったら、「電車やバスに乗ってもいいよ!」がランドネ的です。そんな楽しみ方を繰り返していれば、いつのまにか登山計画を立てることが、楽しく、そして得意になっているかもしれません。

東京在住の私は、いつもは日帰りで訪れる高尾に初めて泊まり、初めてのルートをのんびりと2日間かけて歩きました。天狗の刻印のパンを高尾駅で買い、山のなかで見つけた手押しポンプの井戸に喜び、いつもは素通りしていた川でクールダウンし、地元野菜と蕎麦をいただき、人のいない高尾山口駅を宿の屋上から眺め、いつか訪れたいと思っていた南高尾山稜の「リュック掛け」にバックパックを吊るして。にぎやかな高尾という表舞台の、裏側を覗いたような気分で、高尾の山の印象はガラリと変わりました。

ゆっくりと時間をかけて歩いたり、楽しむことの魅力を、ぜひ誌面のなかでもご覧ください。

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安仁屋 円香

ランドネ / ランドネ編集部

安仁屋 円香

旅と山歩きをミックスした“山旅”が定番のスタイル。訪れた土地で見つけたお土産(コーヒー、布のもの、クラフトビール、郷土玩具、焼き物など)をたっぷりと買いがち。クルマ、スノボ、白濁した温泉も好き。ホームマウンテンは尾瀬。

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