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高山植物(山の花好き)ライター・成清 陽の「ヤマノハナ手帖」#3 秋を彩る、紫色の花

登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します!

第3回目は、今ちょうどピークを迎える、紫色の花々。春~夏には見られなかったミステリアスカラーの花は、山が秋めくや、急に増えてきます。今回はそんな珍現象のナゾにも触れつつ、ちょっと個性的な紫のお花を、3種類ご紹介します。

言わずと知れた、毒草の日本代表

トリカブト(キンポウゲ科)
一般的な花期:8月~10月
主な生育場所:亜高山の林内、湿原など

1986年に世間を賑わせた「トリカブト保険金殺人事件」によって、あまりに有名なこのお花。日本人ならほとんどの人が知っているかもしれない超有名人で、“日本3大毒草”という栄えある(?)称号を持っています。花の蜜を含む全身に毒があるとされ、養蜂家が警戒する植物としても、知られています。ちなみに、3大毒草の残りふたつは、ハシリドコロとコバイケイソウ。この残りふたつについては諸説ありますが、トリカブトを外す例はあまり見かけません。

カブトの中にヒミツが!

この毒を盛られた人の「カブト(命)をとる」ことが名前の由来なのですが、逆に“トリカブトのカブトを取った”ことがある人は、あまりいないでしょう。冠のような独特のカブトを脱がせると、2本の雄しべがニョッキリ。花が最奥部に隠した蜜を昆虫がなめるためには、花に潜り込んで雌しべにつかまり、さらに雄しべに触れなければいけません。あたかも、洞窟の最奥部にお宝がある!という具合です。確実に受粉するために、オリジナリティあふれる工夫をしているのです。

羽ばたく鳥のような花が目印

サワギキョウ(キキョウ科)
一般的な花期:8月~9月
主な生育場所:野山の湿原など

こちら、サワギキョウも晩夏~秋めく山の代表選手。分布域は意外と広いので、山地に限らず山麓でも見かけます。名前に「サワ(沢)」を冠するだけに、ジメジメと湿った場所がお好き。ただ、わりと明るい環境を好む、いわゆる陽キャです。なお、キキョウの仲間はトリカブトを擁するキンポウゲ科同様、毒草がキホン。トリカブトほどの強毒ではないものの、食べるとノドがひどく焼けます(若かりし頃の、苦すぎる経験談です……)。

頭上から降り注ぐ、花粉シャワー

紫色のサワギキョウは、トリカブト同様に凝ったシステムを備えています。花のアップを見てみましょう。水滴がついた三ツ又の花びらは、いわば昆虫たちの着陸地点。そこから花の奥に隠された蜜を目指すのですが……。三ツ又の花びらのすぐ上に、白い注射針のようなものが見えるでしょうか。これはなんと、花粉の自動噴射器!昆虫がこの針に触れると、その背中に花粉をプシュッ。例えが古いですが、ドアの上に黒板消しをセットしておいて、教室に入ってきた先生のアタマが白くなる、という感じにちょっと似ています。

健胃薬にもなる「竜の胆」

オヤマリンドウ(リンドウ科)
一般的な花期:9月~10月
主な生育場所:亜高山~高山の林縁部・草地など

オヤマリンドウは、秋の高山に出かけると出会いやすい花のひとつ。リンドウ=竜胆は、かつて薬用とされたクマの胆(=肝)よりも苦いから名付けられたのだとか。試したい人は、生薬「リュウタン」が入った薬を要チェック!なお、同じリンドウの仲間には、「千回振り出しても(煮出しても)苦い」という名が由来となった超絶苦い薬草「センブリ」もあります。このグループは、とにかく苦いのが特徴なんですね……。

花ですが、咲きません!?

この花は派手なギミックこそないのですが、かなりの変わり者です。なぜなら、「晴れないと咲かない」から。ふっくらとしたつぼみが今にも弾けそうなのに、太陽がゴキゲンでないと閉じたまま。さらに、快晴でもすべてのつぼみが開かない&開いてもせいぜい数ミリ~1cmが限界……。皆さんも、かつて秋山で撮った写真を見返してみてください。99%とはいかないものの、ほとんど開いていませんから(笑)。これ、「閉鎖花」というレアな性質です。

紫色の花をつけるヒミツ

ラストミステリーは「なぜ、秋に紫の花が咲くの?」という素朴なギモン。じつは紫色は、“ハチさん、潜り込めば蜜があるよ~”と呼びかけるサインだと言われています。秋に集中するのは、「働きバチがもっとも多くなる季節だから」……! まったく動けず、しゃべれない植物がここまで考えているとは、脱帽ですね。

紫色は、古来の人々にとって高貴なカラーでした。花と昆虫の関係に注目した人々が、その不可思議さゆえに、紫が特別視された……というストーリーは、考えすぎでしょうか(笑)。紫色の花、ぜひ秋山の見どころのひとつに加えてあげてください。もしハチが訪れているシーンに出会えたら、ちょっと感動モノですから!

それでは、また。
皆様のココロに、素敵な花が咲き誇りますように。

 

花ライター/会社員
成清 陽
大学時代から山を渡り歩いていた個性派キャラ。卒業後も、好奇心の赴くままに職を転々とし、自然ガイド、環境コンサル、ホテルマン、雑誌編集者、市営公園管理人を経て、現在は森づくり事業を担う会社員。好きな山は尾瀬、白山、御嶽、北岳。花が美しい山しか好きになれない、アルティメットな病なんです~!(笑)

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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