イラストエッセイスト・松鳥むうの「山のふもとのゲストハウス案内」#3京都ゲストハウス木音(京都府京都市)
ランドネ 編集部
- 2021年12月02日
その土地の暮らしに寄り添いながら、訪れた旅人を優しく迎え入れてくれる宿、ゲストハウス。全国各地に点在するゲストハウスを100軒以上訪ねてきた、イラストエッセイストの松鳥むうさんが、山歩きの拠点にもおすすめのゲストハウスを紹介する連載。3軒目は、山に囲まれ、古くからの歴史や文化が残る町・京都にある「京都ゲストハウス木音」です。
Index
温かい‟おこた”で過ごす京町家の宿
昔ながらの京都の日常風景が残り、ゆるやかな時間が流れる織物の町・西陣エリア。そこに「ゲストハウス木音」はある。
築約100年の京町家の2軒続きの古民家。「木音」と、その隣はその名も「となり」。同じ宿主が営んでいる。木音には、共有スペースにおこたがある。‟おこた”とは‟こたつ”のコト。冬の寒い時期、ゲスト同士、ひとつのおこたで足を温めつつ、語らう時間がなんともいえず、ほこほこする。縁側のガラス戸の向こうには小さな中庭。季節ごとに色を変える紅葉や小さな石灯篭が置かれ、それがまた、昔ながらの京都の時間を感じさせてくれるのだ。
この日は元旦というコトもあり、お雑煮や黒豆等、お節メニューも。
宿主お手製の朝ごはん(有料)があるのもうれしい。これを、おこたで頂く「木音」の冬の朝の光景が私は特に好きだ。ふわっと巻かれた出汁巻きたまごが、これまたやさしい味でふんわりと口の中でとろけ、もう、そのままおこたから動けなくなってしまいそうになる。てっきり、宿主は飲食店経験者かと思いきや、そうではないと言うから驚きである。
宿主夫妻が醸し出す、ゆるやかでセンスの光る空間
宿主のなりさんとちぃさん。こんな入口の前を通ったら、入らずにはいられない
宿主は、なりさんとちぃさんご夫妻。ちぃさんの出身が京都なので、京都でゲストハウスを開業したのだと言う。ふたりの出会いは、意外にも沖縄。なりさんは、沖縄に数年間住んでいたそうで、共有スペースの壁には、沖縄の伝統楽器・三線が飾られている。時々、なりさんが三線を奏でる時もある。京町家の空気がゆるやかに沖縄へと変わるひととき。言葉数少なめのなりさんだが、しばらく話していると、やわらかな口調でいろいろと話してくれる。「木音」の建物が刻むゆったりとした時間とまるでリンクしているかのように。ちいさんはグラフィックデザイナーでもあり「木音」と「となり」の内装デザイン担当でもある。そのステキすぎるデザイン発想はどこからくるのか?自身の海外旅の経験からなのか?とにかく、宿内のどこを切り取っても「ほぅ」とため息が出るほど。
「となり」のドライフラワーが素敵なベッドの部屋
個人的には「となり」のベッドがある部屋のドライフラワー使いに何枚もシャッターを切ってしまった。これは、全部屋に泊まってみたくなる。「となり」は全個室使用となっているが「木音」のおこたに入りにも行けるし、朝ごはんも頼める。プライベートの時間を大切にしたい人は「となり」を、宿主ご夫妻や他のゲストとゆったり話したいという方は「木音」をという感じだろうか。
タイルもひとつひとつちいさんたちが自力で貼ったそう
女子ドミトリー。1ベッドに物置棚があり、ベッド周りも広々として荷物をすべて置いてもゆとりのあるスペース。天上には透明瓦の部分があり、灯りが自然と入る。
また、週末の日中、「木音」の共有スペースは「喫茶キオト」としてオープンする。長い年月、様々な人達と時を紡いできたであろう木製の家具たちに囲まれ、ほかほかのおこたに足を忍ばす。机上に運ばれて来たのは昭和の香り漂うプリン・ア・ラモード。ちょっと固めの自家製プリンの周りを鮮やかなフルーツと生クリームが華やかに囲んでおり、昭和レトロ好きの心をきゅんとさせる。京都の山を楽しんだあとには、「木音」で、レトロで眼福な空間とゆるやかで口福な時間を一石何鳥も堪能してほしい。
京都ゲストハウス木音
宿泊料金:【木音】女子ドミトリー 1人3,000円~、個室「紅葉」 (定員1~3名)1人3,700円~、個室「市松」(定員1~2名)1人4,000円~
【となり】個室「四季」(定員1~3名)1人4,500円~、個室「楓」(定員1~3名)1人4,000円~、個室「七宝」(定員1~2名)1人4,000円~、個室「みつ葉」(定員1~3名)1人3,700円~
朝食1人700円
TEL.075-366-3780
https://kioto-kyoto.com/
京都ゲストハウス木音を拠点に歩きたい、大文字山
市街地を3方向取り囲む山をひと筆書きで歩ける京都一周トレイル。東山エリアの一部にある大文字山は、京都ゲストハウス木音から電車とバスで40分ほど。夏の伝統行事「五山の送り火」で知られています。写真は、送り火が焚かれる火床からの景色。京都市街の眺めが抜群で、吉田山を眼下に京都御所や下鴨神社など、地図を眺めるように京都市街を一望することができます。
松鳥むう
イラストエッセイスト。離島とゲストハウスと滋賀県内の民俗行事をめぐる旅がライフワーク。訪れた日本の島は109島。今までに訪れたゲストハウスは100軒以上。その土地の日常のくらしに、ちょこっとお邪魔させてもらうコトが好き。著書に『島旅ひとりっぷ』(小学館)、『ちょこ旅沖縄+離島かいてーばん』『ちょこ旅小笠原&伊豆諸島かいてーばん』(スタンダーズ)、『ちょこ旅瀬戸内』(アスペクト)、『日本てくてくゲストハウスめぐり』(ダイヤモンド社)、『あちこち島ごはん』(芳文社)、『おばあちゃんとわたし』(方丈社)、『島好き最後の聖地 トカラ列島 秘境さんぽ』(西日本出版社)、『初めてのひとり旅』(エイ出版社)等。Podcast&Radiotalk はじめました。http://muu-m.com/
Podcast→「松鳥むう」で検索
Radiotalk→https://radiotalk.jp/program/65843
YouTube→https://www.youtube.com/channel/UCxyShAwsgXNraXA2PVOrcLg
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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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