覚えておきたいファーストエイドの基本。初期対応の行動ステップ4つ|#知り続ける
ランドネ 編集部
- 2022年03月09日
ケガや病気への対応では、できるだけ早く適切な処置をすることが大切です。そのため必要なファーストエイド。いつでも実践できるように、基本の考え方や初期対応の行動ステップ、AEDの使用法などについてご紹介します。
Index
ファーストエイドの知識と技術は必ず役に立つ
ファーストエイドとは文字通り、ファースト(最初の)エイド(手当)ということで、病人やケガ人に対し、最初に行う手当のことです。細かいことをいえばプロの救急隊員が行うのが応急処置で一般市民が行うのは応急手当であるとか、応急手当には救急蘇生法が含まれないなど厳密な定義はあるものの、ここではもっと大まかに、「急病人やケガ人に施すこと」くらいに考えればいいと思います。
ファーストエイドの目的は、病気を悪化させないよう処置をすることや、出血を止めたり骨折部を固定してケガがひどくならないようにすること、などになります。いずれにしても、救急車や専門の病院に引き継いでもらうことが前提になります。「普通の人ができることなんてたかが知れてる」と思うかもしれませんが、たとえば息ができなくて倒れている人がいた場合、放っておけば生命が危険にさらされるところ、適切な処置をすることで助かるかもしれません。ファーストエイドの知識と技術は必ず役に立つものです。
ファーストエイドの基本の考え方
クリティカルシンキング
これはアウトドア全般に言えることですが、何事も教科書的に考えるのではなく、その場の状況を考えて「いま何をするのがもっとも適しているのか」を冷静に考えることです。とくに災害時などの異常事態に有効です。
災害時の特殊事情を考慮する
大災害のときには、普段と状況が一変します。「救急車が来るまで心肺蘇生を続けて」と通常ならいうところでも、災害時にその救急車はやって来ません。それなら何をするべきか? 冷静になって考えて行動しましょう。
生命が危険かどうか判断する
骨折して叫んでいる人と、ぐったりして動けない人、どちらを先に助けますか? 手足の骨折では死にませんが、意識のない人は生命の危機に瀕しているかもしれません。まずは命の救出を最優先に考えて行動しましょう。
二次災害なら何もしないほうがマシ
人を助けることは大事ですが、そのために自分が危険な目に遭っては事態を悪化させてしまいます。現実はTVドラマではありません。ひとりだったけが人がふたりになれば、状況はさらに危険なものになってしまいます。
人工呼吸はする? しない?
救急法の心肺蘇生といえば、「胸骨圧迫30回と人工呼吸2回が1セット」といわれていました。しかし最近では、人工呼吸の技術がない場合には、胸骨圧迫だけを続けたほうがいい、と考え方が変わってきています。また、人工呼吸をするには心理的な戸惑いがあり、感染症の恐れもあるということで、重要性が以前より低く扱われているのかもしれません。
基本に返って考えてみると、なぜ胸骨圧迫が必要かといえば、心臓が弱って血液の循環が滞ると体中に酸素を送ることができなくなり、とくに脳に大きな障害になるからです。だとすれば、短時間ならともかく、災害時で救急車がいつ来るかわからないような状況では、胸骨圧迫だけでなく、酸素を送り込むために人工呼吸が必要な場合も。ただ、熟練しておらず胸骨圧迫が疎かになる方にはおすすめはできません。
初期対応の行動ステップ
ステップ1
状況の把握
まずは冷静に、現在の状況を把握します。相手は何を必要としていて、自分には何ができ何ができないのか。自分の安全も確保します。
ステップ2
到達のプロセス
周りの状況を見て、自分が相手にどのように近づくか考えます。相手が道路の真ん中に倒れている場合などはとくに注意します。
ステップ3
状況の安定化
相手のところまで移動したら、現状を維持するか、病気やケガの症状を悪化させないための方法を考えてすみやかに実行します。
ステップ4
搬送・移動
動かせる場合は医療機関に運び、無理な場合は救急隊の到着を待って引き渡します。そのとき、それまでの情報を伝えられればベター。
AEDの使用法
1.心肺蘇生法を行う
胸骨圧迫30回+人工呼吸2回1セットの心肺蘇生を、AEDが到着するまで繰り返します。ひとりだとすぐに疲れてしまうので、協力者を探して交代で行うようにするといいでしょう。
2.AEDの電源を入れる
AEDは使い方を音声で教えてくれるので、到着したらなにはともあれすぐにカバーを開け、スイッチを押して電源を入れます。カバーを開けると自動で電源が入るものもあります。
3.電極パッドを装着
傷病者の洋服を脱がして胸を露出させ、AEDの電極パッドふたつを装着します。装着する位置もパッドの上に絵で描いてあるので、装着場所を迷う心配はありません。
4.ショックを与える
電極パッドを装着すると、AEDが自動で心電図の解析を開始し、電気ショックが必要な場合は指示を出してくれます。指示があったら周りの人を遠ざけ、ショックボタンを押します。
クラッシュ症候群って何?
倒壊家屋の瓦礫や倒れた重量家具や車体の下敷きになるなどして、長時間重量物に体をはさまれた人が救出当初は比較的元気だったにも関わらず、突然容態が悪化し亡くなってしまうケースがあります。これが、阪神淡路大震災以降、知られるようになった「クラッシュ症候群」です。
概念的には、全身の筋肉のうち30%以上が3時間以上はさまれていると引き起こす可能性があるといわれています(片脚の筋肉全体で約30%)。しかしながら、事故で車内に閉じ込められた傷病者のうち、でん部(お尻)の筋肉を1時間しかはさまれていない人でもクラッシュ症候群になったという事例もあり、一概にはいえません。
一般的に、救助後、はさまれていた部分が腫れていた場合は医療従事者に一度診てもらうことをおすすめします。また、はさまれている状態で3時間以上経過していて、かつ片脚以上の筋肉がはさまれており、感覚がなくなるほどの圧迫を受けているようなら、重量物を除去する前に医療従事者や救急隊によって点滴を1リットル投与してもらいます。
できれば、高カリウム血症による心室細動対応のため、AEDがあるなら使用をおすすめします。水を飲ませることも大切ですが、カリウムが多く含まれる経口補水液などの飲料は避けましょう。また、意識障害が起こりそうな方に無理に水を飲ませると、誤嚥(ごえん)することがあるため避けたほうがよいでしょう。重量物にはさまれてしまった場合には、まずは医療機関か救急隊に診せることを私の講演では強調しています。
(防衛医科大学校病院 防衛教官 秋冨慎司さん)
ケガの対処法、RICE療法って?
ケガでよくある捻挫や打撲、こうしたケガに対する基本的な対処法がRICE療法と呼ばれているものです。RICEは各処置の英語での頭文字をとったもので、「捻挫や打撲にはライス」と覚えておきましょう。
冷却(Icing)
患部を冷やすこと。布や水など手近にあるものを使って冷やすことで内出血や炎症を防ぎ、痛みも軽減できます。ただし、しびれてきたりするのは冷やし過ぎなので注意しましょう。
圧迫・固定(Compression)
患部を適度な力で圧迫することで、出血や腫れを抑えます。捻挫や骨折の場合には、圧迫よりも適切な方法での固定が必要になってきます。症状によって使い分けましょう。
拳上(Elevation)
患部を心臓の高さより高く上げることです。内出血を少なくしたり、痛みを和らげたりすることができます。ただし、他の部位に悪影響が出るようならやめましょう。
安静(Rest)
まず大切なのは安静にすることです。ケガをした箇所を動かすと、腫れたり腱や筋に力が加わり症状が悪化してしまう可能性があります。安静にして休ませましょう。
圧迫止血は最低でも3分!
血圧より高く圧迫すれば、出血のほとんどを止血することができます。「もう止まったかな」と圧迫解除をしても、まだ止血できていない場合がよくあるため、2~3分を目安にしっかり圧迫しましょう。2~3分経っても止まらないケースももちろんあるので、止血が確認できるまで圧迫し続けることを覚えておきましょう。また、高齢者は血がサラサラになる薬を飲んでいる場合があるので、その場合は少し長めに圧迫止血を。止血をする際、血液感染を防ぐために、手袋を装着することも忘れずに。ファーストエイドキットに入れておくとよいでしょう。
(防衛医科大学校病院 防衛教官 秋冨慎司さん)
※この記事はランドネ特別編集 アウトドアで防災BOOKからの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。最新情報は気象庁HP、内閣府HP(防災情報)などをご確認ください
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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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