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イラストエッセイスト・松鳥むうの「山のふもとのゲストハウス案内」#9 高野山ゲストハウスKokuu(和歌山県・高野町)

その土地の暮らしに寄り添いながら、訪れた旅人を優しく迎え入れてくれる宿、ゲストハウス。全国各地に点在するゲストハウスを100軒以上訪ねてきた、イラストエッセイストの松鳥むうさんが、山歩きの拠点にもおすすめのゲストハウスを紹介する連載。9軒目は、多くの寺院が立ち並ぶ和歌山県の高野町にたたずむ「高野山ゲストハウスKokuu」です。

真っ白な世界が広がる宿

天空の仏教都市と謳われる高野山。けっこうな勾配をケーブルカーでぐんぐん上った先に空が開け、多くの寺院が立ち並ぶ町。真言密教の修行の場でもある。10人ぐらいのお坊さん集団が2列にきちんと整列し、何やら唱えながら、お堂の前でぴょこんと飛ぶ仕草をする。その姿がかわいく、思わず、私もぴょこんと飛んでしまう。はたまた、その辺のカフェでお茶をしていると、海外出身のお坊さんと会ったりもする。なんて、ワールドワイドな宗派なのか。

冬の夕刻。視界のどこかに必ず寺が入ると言っても過言ではないかもしれないこの町を、奥の院に向かってどんどん歩き進めると、ひときわスタイリッシュな小さな建物が現れた。屋根の重なり部分の小さな窓から暖かな光が漏れている。歴史ある木造建築の多いなか、この一角だけが、ほんのりと異世界のようなオーラを纏っているかのよう。

2012年、当時、宿泊するといえば宿坊が多かった高野山に新しい光を灯したのが、ココ「高野山ゲストハウスKokuu」だ。

入口の扉を開けると、一瞬にして、そこは真っ白な世界へと早変わり!白い壁、白い柱、白いベッド、白いカウンター、白い石油ストーブ、ハンガーまでも白!天井が山型なのも相まって、なんだかまるで、海外の白い教会にやって来た気分。入口すぐの右手には共有スペース。そばにある薪ストーブからはパチパチと炎が燃えがる音が聞こえてくる。左手にはバーカウンター。そのなかから迎えてくれるのが、生まれも育ちも高野山の宿主・高井良知さんだ。お父さんもお兄さんもお坊さんという一家だが、良知さん自身はアパレル業などを経てUターンしたのだという。

さて、そのバーカウンター。アルコール類が頂けるコトはもちろんなのだが、なんと、良知さんお手製のインドカレーがメニューにあるのだ!初めは口のなかでスパイスがピリリッと存在感を放つが、喉元を通り過ぎるころにはスカッとする仕上がりの一品。友人の店でカレー修行をしたらしい。個人的に大好きなスパイスカレーと日本酒を頂けて至福の極み。もはや、ゲストハウスに来ているというコトを忘れてしまう。

▲マウンテンカプセル。プライベートを保てる形。カプセルの中も真っ白の世界が広がる

 

▲ダブルベッド&ロフトベッドルーム。コチラは広々とくつろげるのがいい

生きている弘法大師に会いに行く

「Kokuu」に泊まると良きコトが、もうひとつある。それは、早朝に行なわれる「生身(しょうじん)供(ぐ)」を見学するのに、一番近い宿だというコトだ。「生身供」とは、いまもなお「奥の院・御廟」で生き続けているといわれる弘法大師に食事を運ぶ儀式のコト。約1200年もの間、毎日欠かすことなく続けられている。朝食は午前6時、昼食は午前10時半。それぞれ、担当のお坊さんが毎回手作りしているという。なにやら、近年はメニューにパスタ等もあるとかなんとか。弘法大師は旅好きだから、きっと、はいからなメニューもお好きに違いない。「生身供」は一般人でも、側で静かに見学するコトができる(※御廟内には、残念ながら入れない)。

弘法大師の一番そばの宿「Kokuu」へ、悠久の時を超えに行ってみませんか?(余談。「Kokuu」さんが人力車を始をめたという風の噂も……!)

▲なるべく地元産のモノを使ったモーニング。カップは器好きの奥さん・有里さんのチョイス。ゲストと器話に花が咲くコトも

高野山ゲストハウスKokuu

宿泊料金:
マウンテンカプセル3,600円~(素泊まり)、ダブルベッドルーム6,200円/1名or9,200円/2名(素泊まり)、ダブルベッド&ロフトベッドルーム 11,500円/2名or12,300円/3名(素泊まり)

TEL:0736-26-7216

・Breakfast 7:30~8:30、800円(要予約)
・Bar 21:00まで
・Dinner 18:00~21:00(チェックイン時に要予約)

https://koyasanguesthouse.com/

高野山ゲストハウスKokuuを拠点に歩きたい、高野三山

高野山は標高1,000m前後の山々に囲まれた山上の盆地で、明治5年に女人禁制が解かれるまで、女性の入山を厳しく規制してきた。女人道(にょにんみち)は、女性たちが祈りを胸に歩いたといわれる、女人堂を巡る道。女人堂を起点に北側の弁天岳に登り、大門を経て中の橋までで約4時間ほどのコースタイム。女人堂まで一周すると8時間ほどのコースタイム。

高野山周辺にはたくさんの巡礼道があるので、季節を変えてめぐるのもおすすめ。

 

松鳥むう(まつとり むう)

イラストエッセイスト。離島とゲストハウスと滋賀県内の民俗行事をめぐる旅がライフワーク。訪れた日本の島は116島。今までに訪れたゲストハウスは100軒以上。その土地の日常のくらしに、ちょこっとお邪魔させてもらうコトが好き。著書に『島旅ひとりっぷ』(小学館)、『ちょこ旅沖縄+離島かいてーばん』『ちょこ旅小笠原&伊豆諸島かいてーばん』(スタンダーズ)、『ちょこ旅瀬戸内』(アスペクト)、『日本てくてくゲストハウスめぐり』(ダイヤモンド社)、『あちこち島ごはん』(芳文社)、『おばあちゃんとわたし』(方丈社)、『島好き最後の聖地 トカラ列島 秘境さんぽ』(西日本出版社)、『初めてのひとり旅』(エイ出版社)等。Podcast&Radiotalk はじめました。

http://muu-m.com/

Podcast→「松鳥むう」で検索

Radiotalk→https://radiotalk.jp/program/65843

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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