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モデル仲川希良の「絵本とわたしとアウトドア」#25 ルー、山へ行く

生きものを探す‟目”は、
山をより深く味わうきっかけ

「ルー、山へ行く」は仕掛け絵本。小さなときからオオカミに憧れる主人公・ルーが、その野生の姿をひと目見たくて、山に挑むようすを描いたお話です。
シンプルなストーリーで見開き7ページながら、何枚もの紙の重なりで飛び出してくる山々の情景は見どころだらけ。ルーのキャラクターを感じる出立ちも含め、山好きの大人の女性が読むとグッとくるポイントがたくさんあるのではないでしょうか。

オオカミはこの山々のどこにいるのかしら……ルーと一緒に標高を上げながら、自然のようすを楽しみます。ワスレナグサから糸を垂らすクモや、遠くの岩に佇むカモシカ。この絵本の素晴らしさは寄ったり引いたり、いろんな距離感の視点を生んでくれるところです。実はページのあちこちにオオカミが隠れていると聞いてはいたものの、はじめはイラストレーションのミクロな魅力にばかり目を奪われていた私。マクロな視点でないと見えてこないオオカミの姿にまったく気が付きませんでした。

私は山で小さな生きものを見つけるのが得意ですが、そのとき大事なのもやっぱりこの、寄りと引き、どちらの視点も持って見るということだと思います。引いて見た景色のなかで、生きものが居そうな葉影や不自然な揺れに気付けるか。そこに寄って見たときに、周りに溶け込む姿形に気付けるか。生きものを探す目は山をより深く味わうきっかけをくれます。

▲日本のオオカミは絶滅したとされるが、狼信仰は各地に残る。そのひとつである御岳山山頂・武蔵御嶽神社の狛犬は、なんとオオカミ。本当にもういないのか……この山を歩くたびにその姿をつい探してしまう

会津のほうの山で沢登りをしたときのことです。「ヒルルルルルルル」という、聞き覚えのない鳥の声がしました。どこか水琴窟を思わせるような声音はあまりの美しさに思わず立ち止まるほどでしたが、声はすれども姿は見えず。同行のガイドさんによるとこれはアカショウビンで、その名の通り全身が鮮やかな赤。なかなか目にすることは難しい鳥なのだそう。
それでも遠くなったり近くなったり、森に響き渡る声を耳にするたびに、どうにかその姿を見てみたいという思いが募りました。

鬱蒼と伸びた枝々の向こうにいないだろうか、対岸のあの木陰にいないだろうか。そこにいるかもしれないアカショウビンの気配を求めて眺めると、目の前の景色はぐっと厚みを増したように感じられます。
そして最終日の帰り道、レイヤーとなって重なり合う緑の木々の向こうに、私は確かにアカショウビンの姿を見たのです。「アッ」と声を上げる間も無く、わずかな羽音をたてて森のより深部へと飛び去る緋色の火の玉。その鮮やかな残像とともに、会津の山深さが心に刻まれる山旅となりました。

今回の絵本は……

ルー、山へ行く

作 アヌック・ボワロベール、ルイ・リゴー
訳 内田沙矢子
アノニマスタジオ

作者はほかにも美しい自然の仕掛け絵本を作る、フランス人デュオ。原題のルーの綴りは”LOU”で、仏語のオオカミ”LOUP(読みは同じく、ルー)”に掛けている

モデル/フィールドナビゲーター
仲川希良

テレビや雑誌、ラジオなどに出演。登山歴は13 年目。里山から雪山まで広くフィールドに親しみ魅力を伝える。一児の母。著書に『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

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仲川 希良

モデル/フィールドナビゲーター

仲川 希良

テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの12年。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。著書に、『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

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テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの12年。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。著書に、『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

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