何から始めればいい?初心者でも安心して参加できる災害ボランティアQ&A|自然を愛する私たちにできる災害との向き合い方
ランドネ 編集部
- 2023年03月02日
「災害ボランティア」に参加してみたい気持ちはあっても、「何から始めたらいいの?」「持っていくものは?」と、尻込みしてしまっている人も多いはず。世田谷ボランティア協会・髙橋亜弥子さんのアドバイスを元に、安全に無理なく参加するための覚えておきたいポイントをまとめました。
Index
ボランティアに行く前
参加を決めたら初めにすることは?
まずは情報収集のために、お近くのボランティアセンターのホームページやSNSを確認したり、問い合わせたりしてみましょう。地域の社会福祉協議会のなかで運営されていることが多いですが、独立している場合もあります。ボランティアセンターでは、NPO団体やボランティア活動団体などの情報を得ることもできます。自分が興味のある活動をしている団体が見つかることがあるはずです。
参加条件はありますか?
ボランティア保険への加入は必須です。被災地に行く前に、お近くのボランティアセンターで登録手続きを済ませて下さい。それ以外は、自身で健康管理ができる人であれば、誰でも参加できます。年齢制限も特にありません。特別な能力も必要ありませんが、協調性と、被災者に「寄り添う気持ち」は忘れてはいけません。
事前に意識しておくべきことは?
心構え
「泥を見ずに、人を見よ」という言葉を、常に念頭に置いておきましょう。ボランティアでは、「どれだけこなせたか」より「どれだけ気持ちに寄り添えたか」が大切です。活動現場では、細かい部分では個々人で判断が必要な場面もあります。その際、被災した方々の視点に立って考えることが肝要です。
行動基準
ボランティア活動では、すべての点において、自己管理・自己完結できることが必須。支援物資を利用したり、避難所に泊まったりすることはできません。ただし、「我慢して無理をする」ということではありません。体調が悪いときは参加をあきらめることも、自己管理のひとつです。
初めて参加するなら個人?団体?
個人でも参加することはできますが、団体での参加が無難です。ボランティアセンターやNPO団体が主催する「ボランティアバス」なら、往復の交通手段を確保できていて、最新情報も得られ、現地での手続きもスムースなので安心です。NPO団体などの一員として参加したい場合は、その団体の活動歴、どんな団体と連携しているかなどを確認したうえで、コンセプトや活動内容に納得してから参加しましょう。
現地に行くタイミングはいつ?
「全社協 被災地支援・災害ボランティア情報」には、最新かつ確実な、日本全国の災害ボランティア募集状況が掲載されています。被災地域への直接問い合わせは、現地の負担になるので避けて下さい。被災直後、自衛隊、医療などの従事者以外は活動できる状況ではありませんので、受け入れ体制が整うまで待ちましょう。SNSは、根拠の薄い情報も錯綜しますので、鵜呑みにするのは危険です。
交通手段はどうすればいい?
基本的には、公共交通機関で。ストップしていたり、本数制限で混雑したりしがちなので、運行状況をよく調べ、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。活動後の汚れた服のまま利用しないなど、配慮も必要です。緊急車両などの妨げや渋滞の原因にもなるため、車での現地入りは控えたいところですが、どうしても利用する際は、無断駐車をしないようにし、被災地から離れた場所でガソリンを満タンにして向かうことが必須です。
平常時からできることは?
たとえば、普段から地域の子ども会のお手伝いをしている方は、被災地でも子どもたちと関わる活動に参加しやすいと思います。自分が興味のあることを通して地域活動に関わっていると、被災地でもその経験が役に立ちます。災害ボランティアの訓練や講座に参加したり、活動報告会に参加したりすることもおすすめします。防災用の安全靴やヘルメットなど、活動時に役立つアウトドアグッズを少しずつ揃えておくのも○。
何を持っていけばよい?
食料は腐りにくくて食べやすいものを用意し、飲料や塩分補給の飴やタブレットも。常備薬には目薬やうがい薬もあるとよいです。ビニール袋は大小2種類を用意し、前者に濡れたものや汚れたもの、後者をゴミ袋にすると便利。雨具は、アウトドア用で上下がセパレートしているものが動きやすく脱着もしやすいです。トイレがない場所もあるので、携帯トイレを持参しておくと安心。工具、ゴーグルなどは必要に応じて。
ボランティアに持っていくもの
■常に身につけておきたいもの
携帯電話
貴重品類(お金や鍵など)
保険証
筆記用具(マジック)
■活動中に持っておきたいもの
水・食料・塩タブレットなど
タオルまた、手ぬぐい
常備薬
救急セット
ビニール袋(大・小)
雨具
活動後の着替え
ヘッドライト
携帯トイレ
■宿泊時に使うもの
必要であれば寝袋など
洗面用具
着替え
活動時の服装は?
イラストは、家屋の片づけや泥のかき出しなどの作業の場合の服装例です。避難所での活動などは、軽装の場合もあります。
マスクは防塵マスクがベター。水害時には長めで厚手のゴム手袋を。その他、軍手、皮手袋、滑り止めのついたものなど安全に作業ができる手袋を用意しましょう。ケガ防止のため、暑くても半袖は不可。動きやすく、吸湿速乾性・通気性を考慮した長袖が必須です。
足元は、水害作業時には長靴が必要。つま先が補強されているタイプがベターです。安全靴は絶対にあったほうが◎。移動時にも負担の少ない軽量のものが販売されています。どんな靴でも、底が踏み抜き防止加工されていない場合は、クギやガラスを踏み抜かないように、専用のインソールを入れましょう。
活動時に役立つアウトドアアイテムはありますか?
活動時には電気がないこともしばしば。そんなシーンでヘッドライトが役に立ちます。両手も空くので大変便利です。アウトドアウエアは、吸湿速乾性のあるものは汗対策に、軽量のものは持ち運びに便利。防寒できるものも種類が豊富なので、アウトドアウエアは活躍します。色は赤や黄色など目立つものだとよりよいです。アウトドアで使うレインウエアは透湿性・通気性に配慮されているものが多いので、汗だくにならず重宝します。寝袋が役立つ場面も。
ボランティアの現地
現地に着いてまずやることは?
個人で参加する場合には、現地の災害ボランティアセンターで受付をしましょう。災害ボランティアセンターは、被災した方が手助けしてほしいことを把握・管理しており、どこに行ってどんな活動をすればいいのかの情報提供や、道具の貸出しをしています。団体に所属して参加する場合も、災害ボランティアや各団体の現地拠点にまず立ち寄り、受付することが一般的ですが、基本的にはリーダーの指示に従えばOKです。
現地での一日の流れは?
食事は被災地到着前に調達します。現地の災害ボランティアセンターで受付を済ませて、活動場所へ。必ず数名のグループで行動します。リーダーが被災者と活動内容を確認後、全員に共有して作業開始。こまめに休憩を取りながら作業を進め、気づいたことや困ったことは必ずリーダーに伝えます。活動終了後は、災害ボランティアセンターに戻り、報告をしてから宿泊施設へ。団体参加の場合は、夕食後に情報交換の時間を設けるケースもあります。
とある一日のスケジュール
9:00 スーパーで昼食・飲み物を購入
10:00 ボランティア活動開始
12:00 昼食
13:00 ボランティア活動再開
9:30 災害ボランティアセンター到着。受付、オリエンテーション。道具を借り受け、バスで活動場所へ移動
14:30 片付け、活動終了。バスで災害ボランティアセンターへ
15:00 災害ボランティアセンター到着。活動報告、道具返却、着替え
16:30 宿泊施設到着。以後、夕食、入浴、自由行動
16:00 宿泊施設へ移動
20:00 ミーティング
22:00 就寝
力や技術がなくても役に立てますか?
どんな活動内容の募集があるかを、事前にホームページなどで見てみましょう。体を動かすことが得意な方、あまり体力に自身がない方、子育ての経験者など、誰でも自身の経験を活かしてできることは必ずあります。発災してから1カ月後くらいの少し落ち着いた状況であれば、できることを受付時に伝え、それぞれに合った活動をマッチングしてもらうこともできます。
具体的にはどんな活動がありますか?
倒壊した家屋の片付けや、床下の泥のかき出しが一般的です。その他、支援物資の仕分けや配布、避難所での炊き出し、洗濯、掃除、買い物代行といった生活に関わるもの。高齢者や子どもたちの話し相手や遊び相手、被災住民宅を訪ねての安否確認といった、心理ケアに関わるもの。汚れた写真の洗浄や仮設住宅への引っ越し手伝いなども。活動内容は無限にあるといってよいほどさまざまです。
アウトドアや登山の技術や能力は役立ちますか?
アウトドアや登山では「そこにあるものでなんとか工夫する」という姿勢と知恵が養われると思います。災害ボランティアの現場は、日常にあるものがないケースがほとんどですから、その能力が大いに役立ちます。例えば、ロープワーク。倒壊した家屋の片付けのときにバラバラの板を束ねたり、避難所で洗濯を干すロープを吊ったり。シンプルなロープワークを知っているだけで、使える場面がたくさんあります
衣食住で気をつけるべき点は?
一般のボランティアが活動できる状況のとき、食事が購入できないことはほとんどありませんが、お店は被災地から少し離れている場合があります。泊まりでの参加の場合、宿泊施設などの利用が基本です。無断駐車での車中泊、決められた場所以外でのテント泊やクッカーなどで調理することはやめましょう。
防寒・防暑については各自でケアする必要があります。さまざまな機能性に優れているアウトドアウエアはとても役に立ちます。衛生面がよくない場合もありますから、手洗い・うがいなど意識して心がけましょう。
ボランティアから帰ってきたら
帰宅後のストレスケアについて教えてください
被災地では日常と異なる光景を目にするので、少なからず心にストレスがかかります。活動後は、できるだけ思ったことを誰かと共有するようにして、心をリラックスさせましょう。現地では、あまりにもショックな場面を目のあたりにすることもあります。多くの人は時間の経過とともにショックな気持ちも薄れていきますが、もしも心に不調を感じる、食欲不振があるなど、「普段と少し違う」が長く続く場合には専門家に相談を。
また参加する場合に気をつけることはありますか?
仕事をしながら休日を使って参加する場合は、体調と相談しながら、無理のないペースで参加して下さい。いろいろな被災地に行くよりは、同じ被災地に繰り返し足を運ぶほうが、活動内容が把握できていたり、人間関係ができあがっていたり、よりリラックスして活動できるというメリットがあります。また、現場でのルールや状況はそれぞれ異なります。安易に比較して評価したり、批判したりすることは慎むべきです。
初めての災害ボランティアフローチャート(週末3泊4日編)
出発前日まで
・ボランティアセンターに問い合わせ
・ボランティア保険に加入
・ボランティアバスに申し込む
・説明会に参加(現地状況の報告、必要な持ち物の確認、心構えや必要なスキルのレクチャーなど)
・事前準備
金曜/夜
集合場所よりバスにて出発(車中泊)
土曜
朝 被災地に到着
日中 ボランティア活動
夕方 宿泊施設に移動
日曜
朝 起床・被災地へ移動
日中 ボランティア活動
夕方 入浴
現地出発(車中泊)
月曜/早朝
早朝 東京着
後日 振り返りミーティングに出席
教えてくれた人
社会福祉法人世田谷ボランティア協会
髙橋亜弥子さん
東京都出身。1995年より、東南アジア(主にミャンマー・カンボジア)の内戦や伝染病によって被災した母子の支援・ケアなどに携わる。東日本大震災では、被災地に3年間住み込み、支援活動に参加。2018年より、世田谷ボランティア協会の災害担当職員として、防災の重要性を呼びかけながら、被災地では被災者と支援者をつなぐコーディネーターとして活動している。
※この記事はランドネ特別編集アウトドアで防災BOOKからの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。最新情報は気象庁HP、内閣府HP(防災情報)などをご確認ください
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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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