山のそばでものづくり Vol.11「ひょうたんにぽん舎」いちだめぐりさん
ランドネ 編集部
- 2023年04月17日
山のそばに拠点を置き、山の恩恵を受けながらものづくりをする人々に注目する本連載。今回は、漆芸作家・蒔絵師のいちだめぐりさんにお話を伺いました。
Index
山に囲まれた漆工町で、漆と真摯に向き合う
ひょうたんにぽん舎
profile
いちだめぐり(一田萌里)さん
I熊本県生まれ京都府育ち。大学で漆造形を専攻。結婚、出産を経て2017年に漆工町・木曽平沢の蒔絵職人に弟子入り。その後独立し、工房を構える。休日は息子と登山やキャンプを満喫。Instagram@ichimegu0206
日本の伝統工芸のひとつとして、全国に産地が点在している漆工芸。ひょうたんにぽん舎の一田萌里さんが工房を構えるのは、東に中央アルプス、西に御嶽山がそびえる山間の漆工町、木曽平沢だ。この町は江戸時代の中山道の街道文化とともに発展した歴史をもち、現在も多くの漆工房が軒を連ねる。
漆工芸とは、漆の木からかき出した樹液を木工品に塗り、加飾を施すこと。漆塗りには数多くの技法があるが、一田さんの作品には木目が透けて見える「摺漆」という技法が多く使われている。なによりのこだわりは、木や漆など材料すべてにおいて国産のものを使用していることだ。とくに漆は中国など海外からの輸入がほとんどだが、一田さんは長野県内唯一の漆搔き職人から漆を仕入れている。
長い年月をかけて育った木から採れた漆。
できる限り無駄にせず使い切りたい
「漆の木は、10〜15年かけて育ちます。一本の木から採れる漆は、平均200㎖。それを間近で見てから、無駄なく使うには、と考えるようになりました」
漆塗りには、専用の紙や麻布で漆を漉す、というろ過の工程がある。一田さんは、その漉す過程で出た紙や布を再利用してアクセサリーを制作。本来ならゴミになるものも無駄にしない。
「知り合いから『お気に入りだから塗り直してほしい』と漆器の修理を頼まれることもあります。私の作ったものは、私の生きている限り、お直しの保証付きです」
一田さんの漆器は、木曽の「木曽くらしの工芸館」や「土-とおいち」、松本の「鳥乃子」で購入可能。伝統が息づく木曽へ足を運び、その地で漆工芸と真摯に向き合う一田さんが生み出したものに、ぜひ触れてみてほしい。
ひょうたんにぽん舎の商品ラインナップ
1. 黒摺中皿
南木曽産の木で作られた器に黒の生漆をくり返し摺り込み、自宅周辺で拾ったサクラ、クリ、ナラの葉を写して仕上げたもの。12,000円。直径19㎝×高さ5.5㎝。
2. お花見わっぱ
木曽平沢の木地屋から仕入れた国産材使用の曲げわっぱに、赤い生漆を摺り込み、梅の花の蒔絵を施している。20,000円~。縦13㎝×横19㎝×高さ5.5㎝。
3. 黒摺平皿・赤摺平皿
南木曽産の平皿を土台に、黒摺平皿には黒摺中皿と同様に拾った広葉樹の葉を、赤摺平皿にはナンテンの葉を使用。いずれも7,500円。直径14㎝×高さ1㎝。
4. ひょうたんのぐい呑みペンダント
お酒好きが高じて生まれた一品。ひょうたんは山梨県の葡萄農家から仕入れたそう。首に提げて地酒の飲み比べを楽しもう。18,000円~。直径5㎝×高さ6㎝。
5. お六櫛
木曽平沢とおなじ中山道沿いにある木曽藪原の伝統工芸「お六櫛」。職人がひとつずつ手作りした櫛に漆で加飾。10,000円~。長さ13.5㎝×幅4㎝。
6. 踊り子イヤリング(右)・ 吉野和紙とうるしの耳飾り(左)
踊り子イヤリングは摺漆で使う摺紙を、吉野和紙とうるしの耳飾りは漆のゴミを濾す際に使う紙を再利用。どちらも軽やかな着け心地。いずれも4,200円。
※掲載の商品の購入については要問い合わせ。器など日用品の製作や絵付けなどのオーダーメイドも可能。
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ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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