【いつか泊まりたい山小屋#42 南アルプス・馬の背ヒュッテ】山とお酒をこよなく愛する女将に会いに行く
ランドネ 編集部
- 2023年11月16日
「あの山小屋に泊まってみたい」。そんな憧れが、山へ向かうきっかけになることもあるはず。本連載では、立地や食事、山小屋の主人やスタッフの人柄など、その山小屋ならではの魅力にスポットを当てながら、ランドネ編集部おすすめの山小屋をご紹介。42軒目は、南アルプス北部、仙丈ヶ岳の中腹に建つ馬の背ヒュッテをピックアップ。
Index
開放感と清潔感、木の温もりに満ちた山小屋
甲斐駒ヶ岳と並び、南アルプス北部を象徴する山として知られる仙丈ヶ岳。馬の背ヒュッテは、仙丈ヶ岳山頂へのルートのひとつである藪沢新道を登り詰めた先、「馬の背」と呼ばれるなだらかな尾根の少し手前の樹林帯に建つ山小屋だ。周辺には、夏は高山植物、秋はダケカンバなどの紅葉が広がる。
馬の背ヒュッテの特徴としてまず挙げられるのは、その個性的な建物の形状だ。丸太を横に積み上げたようなログハウス風の3階建てで、上に行くほどゆるやかにすぼまる台形型をしている。館内は吹き抜けになっていて、木のぬくもりと開放感に溢れる造りに。
以前は最大100人まで宿泊を受け入れていたが、コロナ禍を経て、現在は45人までに抑えているそう。人数制限によりゆったり滞在できるようになったうえ、館内が常に清潔に保たれているのも魅力的だ。
女将が自ら担ぎ上げた地酒を飲み交わす特別な夜
馬の背ヒュッテを切り盛りするのは、2017年から2019年に女将を務め、2022年から再び女将を担っている斎藤しのぶさんだ。北海道で10年間ガイドをしていた経験をもち、いくつかの山小屋で働いた後、縁があって馬の背ヒュッテへ。斎藤さんは山小屋のオフシーズンである冬に蔵人として酒蔵で働いたこともあるほどお酒が大好きで、馬の背ヒュッテの宿泊客に対してもこだわりの地酒を提供している。その甲斐あって、この山小屋には酒好きな登山客が数多く訪れているそうだ。
馬の背ヒュッテでは、平日の夜限定で「ヒュッテの夜」が開催されている。蜜蝋キャンドルが灯りバーのような雰囲気になった食堂で、宿泊客は女将が厳選したお酒を片手に語り合うことができる。ホットコーヒーやカフェラテ、チャイなどソフトドリンクも充実しているので、お酒が飲めない人も参加が可能。平日に予定が組める人はぜひ「ヒュッテの夜」に参加して、馬の背ヒュッテでしか味わえないとっておきの夜を過ごそう。
山小屋から目指すおすすめルート【馬の背ヒュッテ~仙丈ヶ岳 片道約1時間20分】
なだらかな山容で「南アルプスの女王」とも呼ばれる仙丈ヶ岳へ、馬の背ヒュッテからなら片道1時間30分弱でたどり着ける。山小屋に早めに到着した日の午後、宿泊した日の翌朝など、ぜひ時間を見つけて山頂まで足を伸ばしてみてほしい。山頂に立つと、北東には白い花崗岩が山頂を覆う甲斐駒ヶ岳、南には大仙丈ヶ岳と塩見岳まで延びる長大な仙塩尾根、南東には北岳などの白根三山、西には屏風のように連なる木曽駒ヶ岳を眺める大展望が楽しめる。
馬の背からと小仙丈尾根からでは仙丈ヶ岳の形も全然違って見えるので、馬の背ヒュッテから歩き始めて山頂を踏んだら、馬の背を折り返すのではなく小仙丈尾根のほうへ降りるという歩き方もおすすめだ。
山とお酒を愛する女将が切り盛りする馬の背ヒュッテは、山小屋での滞在をしっぽり味わいたいという通な登山者にピッタリの山小屋だ。お酒をバックパックに忍ばせて、山談義、酒談義を楽しみに目指してほしい。
馬の背ヒュッテ
https://umanose.com/
・標高:2,630m
・営業期間:7月1日~10月9日(2023年度)
・宿泊料金(税込):1泊2食12,000円~、素泊まり9,000円~ ※土・祝前日、予約なしの宿泊の場合は+1,000円
・電話番号:090-2503-2630(現地直通8:00~20:00 ※営業期間中)
Share
Profile
ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。