キイチゴは甘酸っぱい夏の味【登山ガイド・渡辺佐智の“やまのさち”】
ランドネ 編集部
- 2017年08月01日
登山ガイドの渡辺佐智さんが、自然の中で採れる旬の幸を追ってあちこちの山へ。さて、今回のやまのさちは?
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キイチゴは登山道近くや山麓にも多いので、食べたことのある人も多いのでは? 環境がよいと集団で自生するので、そんな場所はぜひ覚えておきたい。
【山梨県甲州市のモミジイチゴ】
バラ科
時期:果実は6月~7月
場所:標高1,000m~1,500m(山梨の場合)
別名:キイチゴ
すこぶる美味、山のキイチゴ
そういえば、あのキイチゴが実りそうだ、と思い立った7月上旬、山へ確かめに行くことにした。5月ごろに大きめの白い花を咲かせるので、登山中によく目立つ。そのときになんとなく覚えておいたあの場所へ一人向かった。
林道の入り口に車を停めると、アブの襲撃にあう。エンジンを止めても、飛び回るアブが車体に体当たりしていてコツコツと音がする。虫なのに重量感のある音で、怖くて外に出られない。30匹くらいはいるだろうか。しばらく待ってみてもいっこうに数が減らない。暑い車内でじわじわ汗をかき始めた私は、さらにゴアテックスのアウターシェル上下にハットとバグネットをかぶり、外に出る準備をする。蒸れ蒸れのサウナスーツ状態だが、アブ対策には有効だ。せーの! で車外へ脱出。その勢いで車から離れ、シェルを脱ぐと森の空気がうまかった。
標高1500m付近にある目当ての木を見つけるが、まだ緑色で熟していない。残念! こんなにたくさん実がついているのに! その木の周りには鹿の足跡がついていて、私以外にも狙っている動物がいることを知る。ないものは諦めて、そこから標高を下げることにした。ゆるい藪をかき分けてずんずん下る。キイチゴは葉の下に並んでつくので、下りながらも振り返って見上げるのが探すポイントだ。美しく光るオレンジの実を想像し、集中する。南よりの斜面を下りて行くと1200m付近まできたところで、あった! いくつか集めてまとめて口に入れると、プチプチとはじけて甘酸っぱい夏が来た。
いまさら言うまでもないが、私は収穫が好きだ。山で採れるもののなかでも、とくに熟れた果実を自分で見つけて摘むという行為は、細胞レベルで楽しい。縄文時代の女子力DNAが満足するのかもしれない。今回、収穫量は少なかったけれど、季節のおいしいものをちょっといただくということに、平成の女子心も満たされた。
バラ科のためトゲがある。登山道を歩いていてひっかかる木があったら、キイチゴかも。
1.樹林の中で光がよく入る場所に多い。落葉性で1~2.5m くらいの低木。モミジ状の葉が特徴。
2.トゲ対策は、枝を持ち上げるほうの手に手袋をつけて、実を採る利き手は手袋なしがよい。
3.実の周りについたゴミは先に取ると、後の下処理が楽。柔らかいので、優しくビニール袋へ入れる。
数多く種類のあるキイチゴのなかでもとくに味がいい。多く採れたら果実酒にするのも◎
1.軽く日干しして、水分を飛ばすと味が凝縮する。水洗いはしないで、ゴミはていねいに取る。
2.少量のジャムなら、砂糖は目分量。実全体に砂糖がまぶされてちょっと余るくらいで煮る。
3.火を止める前にレモン汁で酸味を調整。クリームチーズとキイチゴジャムのサンドイッチに。
<単独登山での注意>
山岳遭難のなかでも、山菜キノコ採りは道迷いのリスクが上がり、滑落や転倒が重大な事故につながります。まずはよく知る場所から、徐々にエリアを広げていきましょう。頭のなかで現在地を確認しながら、2万5千分の1地形図やGPSで確認します。
○渡辺佐智(わたなべさち)
自然のなかで体を動かし、
おいしいものを食べることを愛する。
安全登山のための情報を
ウェブサイトでも発信
www.yamanosachi.jp
やまのさちサイトで番外編を公開中!
http://www.yamanosachi.jp/bangai.html
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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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