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走ってみた Part1

レトロな街並みをサイクリング♪
富山・高岡エリアで“ものづくりの心”に触れる旅

Model:Yuko Watanabe
Edit & Text:Ayako Sakai
Photo:Nozomi Fujimura

自転車に乗って高岡の歴史と感性を肌で感じよう

富山駅から電車で約20分。車でも1時間弱とアクセスの良い高岡市は、「ものづくりの街」として知られています。始まりは江戸時代初期というから、その歴史は400年以上!中でも銅鋳物や漆器は国の伝統的工芸品に指定されるほど有名です。

高岡には、現在もその面影が息づく街並みがたくさん残されています。当時の加賀藩主、前田利長が7人の鋳物師を招いて鋳物製造発祥の地となった「金屋町」、商人町として発展した「山町筋」は、「伝統的建造物群保存地区」として保存されており、一歩足を踏み入れれば、まるで江戸時代にトリップしたような気分に♪ 古い土蔵や商家を改装したテナントは、ものづくりにまつわるショップやギャラリー、昔ながらの漆器店などもあって、ただ練り歩くだけでも十分楽しめます。

そんな高岡を1日たっぷり楽しむなら、自転車旅がおすすめ。約3km圏内に推しスポットが点在する高岡では、小回りの効く自転車があると機動力も自由度も格段に上がるんです♪

というワケで、高岡駅からレンタサイクルを借りて、いざ、高岡めぐりの旅へ出発!

利便性も良し!
楽々レンタルして旅をスタート

高岡駅からレンタサイクルするには、観光案内所で受付をして鍵を受け取り、駐輪場へ行くだけ。移動距離もほとんどなく、サクっと自転車が借りられるからとっても便利。写真のように、駅構内を自転車で移動できるのもサイクルシティ富山ならではの特典です♪エレベーターを使って地上に降りると、前から高岡に住んでいたかのような気持ちにもなってきます。そんなローカル気分も味わいつつ、さっそく最初のスポットへ向かいます。

レンタサイクル

高岡駅観光案内所
高岡市下関町6-1
TEL:0766-23-6645
受付:10:00~16:00(冬季休業12月~3月)
1回300円

鋳物の街を象徴する“イケメン”大仏を参拝

まず向かったのは、「高岡大仏」。この大仏様は、街なかに鎮座するかのようなそのロケーションが大きな特徴。大佛寺というお寺の境内に配置されていますが、大仏様をさえぎるものがなく、遠くからでもその姿を拝むことができます。

高さ約16mもの青銅製阿弥陀如来坐像「高岡大仏」は、地元の鋳物職人によって約30年もの歳月をかけて造られたもの。日本一の鋳物産地でもある高岡の銅器製造技術が結集され、その出来映えは「日本一の美男」と呼ばれるほど!お顔は穏やかにして厳か。静かに街を見守る大仏様の姿に、自然とこちらも背筋が伸び、心に静寂が訪れるのを感じます。

また、観光客のみならず、地元の人達が入れ替わり立ち替わり、散歩のついでに、お買い物の帰り道にと参拝する姿も印象的。そんな光景からは、高岡人の“大仏愛”がひしひしと伝わってくるようでした。

高岡大仏

高岡市大手町11-29
http://www.takaokadaibutsu.xyz/enjoy_yard

大仏様のお膝元でカフェタイム&ショッピング

次に向かったのは、その名も「amida coffee」。大仏様が手を伸ばせば届きそうなほどの距離に店を構え、2階の「大仏見桟敷席」では迫力の“大仏ビュー”を楽しむこともできます♪

こちらでおすすめなのが、オーダーすると2階席の利用が可能となる「大仏見桟敷席セット(2,000円)」。自家焙煎珈琲ロール、ブレンド珈琲に焼き菓子5種がついたセットで、焼き菓子はサイクリングの小休憩のお供にも良さそう♪

写真の「大仏ラテ(600円)」をはじめ、ハンドドリップで淹れるスペシャルティコーヒーなど、コーヒーメニューも充実。いずれも香り高く洗練された味わいで、大仏様との邂逅にさらなる安らぎを運んでくれそうです。

Amida coffee

高岡市定塚町1238
https://amidacoffee.com/

高岡大仏の近くにある推しスポットがもう一つ。小学校の校舎をイメージした店舗に日本の工芸品や手仕事品が揃う「ガランドウ」は、ものづくりの街、高岡のクラフトスピリッツを肌で感じられる場所。

高岡鋳物や鋳物技術を応用した錫製品、真鍮鋳物など、富山の工芸品をはじめ、青森から九州まで、全国の手仕事品が丁寧にディスプレイされた店内は、日本の風土、美意識、感性がぎゅっと詰まっていて、一つひとつのモノが醸す温かさ、素朴さに思わず心を掴まれてしまいます。

ものがたりがあり、作り手の技、想いが滲むモノとの出会いは、旅の醍醐味とも言えます。お気に入りを見つけたら、迷わず買ってみて。高岡の思い出とともに、大切な愛用品となってくれるでしょう。

ガランドウ

高岡市定塚町1239
https://garandou.jp/

職人気分でピアス作りに没頭♪

高岡市内でもっとも「ものづくり」を近くに感じられるのが金屋町エリア。千本格子造りの家々が建ち並び、趣きのある石畳が続く街並みは往時の風景を彷彿とさせます。鋳物の製作や錫アクセサリー作りなど、高岡のクラフトマンシップを実際に体験してみるのも金屋町をより深く楽しむ方法の一つ。

そこで今回は、大寺幸八郎商店で錫アクセサリー作りを体験することに。

アクセサリー作り体験は、所要時間30〜60分ほど。手でも曲げられる柔らかい“錫”を使って好きなアクセサリーを作ります。イヤリングやネックレス、指輪など様々なアイテムが作れるとのことでしたが、今回はピアスを作ることに。

錫のプレートをカットするところから始まり、工具を使って平らな錫に槌目(つちめ)をつけていくなど、作業はなかなか本格的。店主の大寺雅子さんが丁寧かつ的確にレクチャーしてくれるので、細かい作業もすべて1人でこなすことができ、できあがった時の達成感もひとしおです。

大寺さんとおしゃべりを楽しみながらアクセサリー作りに没頭♪ 本物の工房のような空間で職人気分を疑似体験できるのも楽しい思い出に。

大寺幸八郎商店は、江戸時代後期に創業。長年高岡の鋳物製造の一翼を担い、現在は製造卸の傍ら、自宅をカフェやギャラリーとして開放しています。アクセサリー作りの後は、風情のあるギャラリーやカフェでひと時、日頃の雑事を忘れてゆるりと過ごすのもおすすめです。

大寺幸八郎商店

高岡市金屋町6-9
https://ootera.com/

美と贅を極めた寺院建築の傑作「国宝 瑞龍寺」

次のスポットは富山が誇る国宝「瑞龍寺」。大寺幸八郎商店から向かう道すがら、商人町として栄えた「山町筋」の街並みも楽しみつつ向かいます。

山町筋では、1900年の大火の復興後に建てられた土蔵造りの立派な主屋が並び、それに混じって赤レンガの銀行や石造りのビル、モダンな装飾を施した洋風建築なども軒を連ね、金屋町とはまた異なるハイカラな雰囲気が漂います。

金屋町と山町筋は歩いても5分ほどしか離れておらず、少し移動するだけで歴史散策を楽しめるのも高岡めぐりのいいところです。駅の南側へ向かって1kmほど走れば、瑞龍寺に到着です。

江戸時代初期の禅宗寺院建築の傑作と言われる瑞龍寺。禅宗などの仏教や寺院建築に詳しくなくても、一歩足を踏み入れればその圧倒的な美しさ、格式の高い建造物の数々に思わず目を奪われるはずです。

山門をくぐると広がる特徴的な伽藍配置はまさに壮大。仏殿、法堂、山門が国宝に指定されていますが、総門、禅堂、大庫裏、大茶道、回廊三棟などが国の重要文化財に指定されるなど、他の諸堂も歴史的価値のあるものばかり。どこを切り取っても美しく、建築の粋を集めた造りや技法、装飾の数々には、感動さえ覚えます。

境内奥には、前田利家、利長、さらに織田信長の石廟(分骨されたお墓)も。法堂内の天井絵、欄間にも豪華な装飾が施され、見どころ盛りだくさん。ぜひゆっくりじっくり、探訪を楽しんでみてください。

国宝高岡山瑞龍寺

高岡市関本町35
https://www.zuiryuji.jp/

旅の締めはやっぱり美食&美酒!

さて、ここでいったん自転車旅は終了。新高岡駅で自転車を返却し、城端(じょうはな)線に乗り油田(あぶらでん)駅へ向かいます。

観光協会のレンタサイクルは、高岡駅、新高岡駅、山町ヴァレーでそれぞれ乗り捨てが可能! 借りた場所に返さなくてもいいのは、小さなことのようで旅人にとっては嬉しいサービス♪ 乗り捨てを活用して、今回は旅の最後に少しだけ足を伸ばし、砺波市にある「若鶴酒造」へ向かうことにしました。

江戸時代末期から150年余り続く「若鶴酒造」は、日本酒造りとともに北陸唯一の蒸留所を構える酒蔵としても知られています。2022年にオープンしたばかりの「竈flamme炭三郎」では、若鶴酒造の日本酒、ウイスキーとともに酒蔵レストランならではの個性あふれる料理を楽しむことができます。

旅の最後はやっぱり美味しい料理と美味しいお酒で締めくくりたい!ということで、同店自慢の「とやま和牛〈酒粕育ち〉の炭火焼ローストビーフ重(並盛2,500円)」をオーダー。日本酒は、2023年8月に発売したばかりの「itonami彩sai」を。

まったく新しい日本酒造りに挑戦したという「itonami 彩sai」は、華やかな香り、クセのない飲み口ながら、口の中で香味が膨らむようなジューシーさ、ふくよかな酸味や旨味が魅力。ローストビーフ重とのペアリングもばっちりで、1日自転車で走った疲れも一瞬で吹き飛びます。酒粕汁と酒粕のティラミスも付いて大満足のランチは、まさに旅の終わりにふさわしいひと時でした♪

若鶴酒造では、敷地内にある「令和蔵」のショップでお土産選びや、三郎丸蒸留所の工場見学(要受付。1,000円・試飲&お猪口ガチャ付き)など、食後のお楽しみも見逃せません。

特に、三郎丸蒸留所の見学は非常にユニーク。一般的に工場見学というと、仕切られたルートから製造プロセスを覗くスタイルが多いのですが、ここの工場では醸造プロセスと見学ルートが一体となっており、匂い、音、温度なども見学者は体験可能。つまり、ウイスキーづくりの工程のすべてを肌で感じられるようになっているのです。

プクプクと発酵が進む槽内を床に空いたガラス窓から見下ろせたり、世界初の高岡銅器鋳造による蒸留器ポットを間近から見られたりと、楽しみながら知識が深まる工夫も随所にあり、ウイスキー愛が芽生えること間違いなし♪

“酒造り”というクラフトマンシップに触れることもでき、ご褒美のような美味しい料理と美酒も堪能♪ これ以上ない旅の締めくくりとなりました。

若鶴酒造

砺波市三郎丸208
https://www.wakatsuru.co.jp/

竈flamme炭三郎

https://www.wakatsuru.co.jp/tanzaburo/

高岡が誇る銅製鋳物で造られた大仏様や国宝寺院、風情ある金屋町、山町筋の街並み、そしてセンス、美意識あふれる個性的な店々……。点在する名所・見どころをくまなく回れたのも、機動力がある自転車のおかげ!

ものづくりの精神、作り手の想いに触れることで、今まで知らなかった感覚が芽生えたり、インスピレーションが湧いたり。旅に出なければ得られない宝物を、高岡の旅ではたくさん見つけることができたようです。

富山には他にも、グルメを堪能するコースやゆるっと走れるシティコース、さらにはE-BIKEでアクティブに里山を走りまくるコースなど、充実したサイクリングコースがたくさんあります。こちらのサイトで気になるコースがあったら、ぜひどんどん挑戦を!自転車旅ならではの心躍る出会いが待っていますよ♪

走った人

トラベルライター

渡辺 由布子

女性誌の読者モデル、MBSラジオパーソナリティなどを務め、現在はヨガインストラクター、トラベルライターとして世界中を飛び回る。過去渡航した国は47カ国120都市。

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