世界を旅したヨガインストラクター・土屋愛さんの「ポップ」な世界観|トレーナー探訪
久下 真以子
- 2020年12月21日
フィットネス業界を支えるトレーナーを訪問して、仕事へのやりがいやトレーニングへのこだわりをインタビューする連載企画「トレーナー探訪」。
第8回は、世界を旅してヨガを学んできたというヨガインストラクター・土屋愛さんです。高校生のときにミスユニバースジャパンでTOP10入賞し、モデルとしても活動してきた土屋さん。ヨガに出会ったきっかけや海外での刺激的な体験、そして自分自身の内側と向き合う大切さについて伺いました。
Index
海外経験豊富なヨガインストラクター
自分自身と向き合う「アヌサラヨガ」の魅力
土屋さんの指導している「アヌサラヨガ」ってどんなものですか?
歴史のある「アイアンガーヨガ」(*)をもとに、アメリカで新しくできたヨガの流派ですね。アライメント(姿勢)のベースはそのままに、ゆっくりポーズをとって精神と向き合うことに重点を置いているのが特徴です。
*多くのヨガの基本を作ったといわれる流派で、正確なポーズが重視される
ヨガインストラクターになったきっかけは何だったのですか。
もともと英語が出来たこともあり、海外から来たタイマッサージ講師のクラスの通訳をたまたま担当したんですよ。それがきっかけでタイに興味を持つようになって、タイに行ったら「アヌサラヨガ」に出会ったんです。そのまま、指導者の資格を取りました。
土屋さんは高校生のときからモデル業をしてきましたよね。
2009年にミスユニバースジャパンに出てからモデルをやってたんですけど、23、4歳くらいのときに「このままじゃダメだな」と感じていましたね。本当に厳しい世界で、すっかり疲れていたんです。事務所を辞めたあとにヨガに出会ったんですけど、そういう状態だったからこそヨガがスッと自分になじんだのかもしれませんね。
ヨガに出会ってご自身の中で変わったことはありますか。
自分が何か考えたり見るときに、”第一人称”じゃなくなったんですよ。つまり、「自分を見ている自分が後ろにいる」という感覚を得たので、何が起こっても物事を俯瞰して見られるというか。今まで傷ついてしまっていたような場面も、同じことが起きたときにダメージを受けにくくなりましたね。
海外での衝撃体験で学んだ、自分や他人との接し方
土屋さんは去年の夏から、「ヨガトラベラー」という肩書きで海外を回ってきました。
インストラクターになってから都内でレッスンをしてきたんですけど、自分の好きなことや強みについて考えたときに、海外の要素を取り入れたいなと思ったんです。賭けではあったんですけど、全て仕事を辞めて「旅をしながらヨガをやる」ということで、決断しましたね。行った先は、ドイツ・アイルランド・ポルトガル・インド・タイです。その後、コロナ禍の影響で日本に帰国しました。
海外に行くといろんな経験や出会いがありそうです。
例えばアイルランドでは、大きなヨガフェスティバルにスタッフとして参加させてもらいました。世界中から講師が集まるし、海外の人たちってやっぱり個性が強いから、日本のヨガクラスじゃありえないようなことが起きるんですよ。ギター片手に歌いだしたりとかね。でもそれが許されるような空気があったし、自己表現を恐れるような感じがない雰囲気が、その場にいてすごく楽しかったです。
それはとても楽しそうですね!
タイで訪れたバンガン島では、「最強のデトックス」を体験しましたよ。カンボという、カエルの毒を使った儀式があるんです。足首のところの皮膚を線香でちょっと焼いて、そこにカエルの毒を入れると、すぐに猛烈な吐き気が襲ってくるんですね。牡蠣に当たったときや、ひどい二日酔いのときの3倍くらいの気持ち悪さ!でも30分くらい吐くとすっきりして、頭がクリアになって肌もピンと張っているんですよ。この儀式には肝臓をろ過する効能があって、溜まっている胆汁を出すという仕組みらしいのです。世界中からたくさんの人が体験しに来るみたいなのですが、かなり貴重な経験でしたね。
体験したいような、ちょっと怖いような……(笑)
この話だけ聞くと衝撃なんですけど(笑)、その儀式をやってくれた人が本当にいいことを言うんですよ。「誰かを救ってあげよう」ではなく、ただその人がそこにいるだけで、周りが勝手に癒されていくんです。だから私も生徒さんに「こうなりたいんでしょ」と言うのではなく、「今の自分の中にあるいいところは何ですか」っていうところから接しようと思えるようになりましたね。タイマッサージもヨガもアーユルヴェーダも経験して、分野は違えど行きつくところは一緒なんだなあと感じさせられもしましたね。
力を抜いて、人生をポップに!
「痩せたい」の前に、「なぜ痩せたいのか」を考える
「こうなりたい」の前に、「今の自分を知る」。すごく胸に響きました。
「足るを知る」。今の自分が足りていることを知らないと、いつまでたっても満たされないんじゃないかなって思うんですよね。例えば、3㎏痩せて買いたい服を買って、気になる人とデートをして、手をつないでキスができたらハッピー……っていうのは明確”すぎる”。もっと流れるように生きてみてもいいんじゃないかな。今の自分が足りてないから運動するんじゃなくて、運動してみたらポップな気分になれて、結果的に痩せたというほうがハッピーですよね。かといって何も決めなさすぎると自由になってしまうから、バランスが大事ですよね。
運動が手段というより、運動の結果として痩せるということですね。
極論をいうと、痩せるんだったら食事管理ですよ。でもそのためには自分の精神をまず安定させないと、絶対ダイエットは失敗します。トレーニングはボディメイクの要素が大きいですが、純粋に痩せたいとなったら精神のバランスと食事管理は必ずセットですね。自分に何が足りていなくてどうして痩せたいのか、一回書き出してみるといいですよ。意外と幼少期の経験が関係していたりしています。
幼少期、ですか?
例えば、近しい人にからかわれたりしていないか、などと振り返ったら意外とあるんですよ。
確かに、私も高校生のころ男子に「お腹出てる」ってからかわれてショックだったなあ……(笑)
でしょ、昔のトラウマや経験って結構あるんですよ。その場合は、その傷を癒してからダイエットするべきだと思いますね。「自分の体はダメなんだ」というマイナスな概念からスタートするから。大人になってからできた「こういう人が素敵だな」というような目標だとポップに取り組めるので、そのまま頑張っていいと思います。その辺の見極めはすごく大事かなと思いますね。
どうやって傷を癒すんですか?
私がよく言うのは、瞑想中にあえてそのときのことを思い出す。トラウマって、頭の中で勝手に大きくなっていくんですよ。だから、当時の自分に向かって、いろんな経験を経て大人になった自分が話しかけるということを繰り返すと、「なんであんなに気にしていたんだろう」と思えたり、次に同じようなことがあっても違う対処の仕方ができるようなこともあるんですよね。
新たなスタート。土屋さんの描く「次の10年間」
土屋さんの今後の目標はありますか。
コロナ禍で日本に帰国してからは岐阜の実家にいたんですけど、また年明けから東京に家を借りることにしました。なので、土台の作り直しですね。ちょうど30歳になったばかりなんですけど、東京で過ごしたこれまでの10年間とは違う30代の10年間をどう過ごすか、ワクワクしています。
新生活、楽しみですね。
メゾネットタイプの家を借りるので、1階でカウンセリングや施術を出来たらいいなと思っているんですよ。このご時世になったからこそ、拠点を持ちつつある程度の自由が許される働き方をして、オンラインでできることを模索していきたいんですよね。訪れたお客様には、何かこちらからたくさん言うのではなく、好きなものを持ち帰ってほしいですね。
好きなもの、ですか?
お客様にはそれぞれ悩みがありますよね。痩せたいという身体的な悩みから、もっと深くてつらい内面的な悩みもです。そういった方たちに、「力の抜き方」を持って帰ってほしいですね。絶対に力抜いたほうが人生うまくいくと思う。そしてまた人が集まれるような世の中の状況になったら、イベントなども企画出来たらと考えています。
最後に、土屋さんはどんな30代を過ごしたいですか。
やっぱり「ポップな30代」ですね(笑)。20代のときってみんなが自然にポップというか、本当に弾んで生きてきたように思いません?それが今は、自分がだんだんと地に足をつけたがっている感覚を感じ取っているんですよね。昔と比べて自分自身の好きなところも嫌なところも受け入れられるようになったから、ある意味での「賢さ」を保って地に足をつけつつも、若い時の「跳ねる感覚」を失わないで生きていきたいと思います。
土屋愛(つちや・あい)
1990年、岐阜県生まれ。2009年のミスユニバースジャパンTop10入賞をきっかけに、モデルとしての活動を開始。様々なショーやCMで活躍後、2017年にタイ・チェンマイで出会ったヨナス・ウェストリング師のヨガクラスで感銘を受ける。同師のティーチャートレーニングに参加し、アヌサラエレメントティーチャーの資格(RYT-200)を修了。TOEIC935点を活かし、2019年7月より世界を旅しながらヨガやウェルネスの学びを深めた。2021年より再び東京で活動予定。
Instagram:ai_yogini
YouTube:Yoga Traveler ーヨガトラベラー
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Profile
YOLO / コンテンツディレクター
久下 真以子
現役のアナウンサーでスポーツライター(専門はパラリンピック、野球、サッカー)。トレーニング好きが高じてYOLOメンバー入り。夢はベストボディ出場とフルマラソン完走。欲しいものはウエストのくびれ。猫と一緒に暮らす30代女子。
現役のアナウンサーでスポーツライター(専門はパラリンピック、野球、サッカー)。トレーニング好きが高じてYOLOメンバー入り。夢はベストボディ出場とフルマラソン完走。欲しいものはウエストのくびれ。猫と一緒に暮らす30代女子。