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築150年の古民家で体感する絶景雪見露天風呂と雪国ガストロノミー【里山十帖】

手付かずの自然が残る南魚沼の里山に佇む絶景宿

雪降りしきる新潟県南魚沼へ、2020年のホリデーシーズンは海外渡航を断念した分、日本の冬の美しさに触れる旅に出ました。

都心から上越新幹線でわずか1時間20分。同じ日本とは思えないほど、一面キラキラと輝く銀世界が広がっていました。強い寒気の影響で今季一番の降雪を観測した新潟県は例年より積雪が早く、スキー場としては嬉しい反面、地元の方々は除雪作業が大変だと嘆いていました。

越後湯沢駅からローカル電車と言われる上越線に乗って下車した大沢駅は、ホームにも改札にも人影はなく、いわゆる無人駅。送迎タクシーを事前に予約しておくことがマストです。

今回のお宿は、クリスマス時期に合わせて半年ほど前から予約していた【里山十帖(さとやまじゅうじょう)】

まだ誰も足を踏み入れていない純白な雪原を横目に車で走ると現れる、まさに手付かずの自然が残る里山にポツンと佇む古民家こそが、新たなラグジュアリーの形を創造し、全国から訪れる温泉通やトラベラーを魅了し続けているのです。忘れられないホワイトクリスマスとなりました。

グッドデザイン賞&新潟版ミシュラン一つ星獲得!築150年の古民家をリノベーション

黒川温泉や由布院温泉などでは古民家を上手に使った旅館やカフェが印象的ですが、実はそのほとんどが新潟から移築されているというのをご存知でしょうか?

築後150年余りの古民家をリノベーションした里山十帖は、温泉宿としては初の「グッドデザイン賞 ベスト100 ものづくりデザイン賞(中小企業長官賞)」を受賞し、さらには「2020年ミシュランガイド新潟版」で一つ星を獲得し、多くの旅行メディアでも取り上げられています。

重厚感ある日本建築の二重扉が開くと、そこには高さ10m近くもの広大な吹き抜けと、ヒトの背丈以上の大きな幹のオブジェがドーンとお出迎え。実はこれ、打ち出の小槌の形をしたスピーカーで、柔らかな音がロビー一帯を包み込みます。その他にも館内にはデザイナーズ家具や様々なアーティストの作品が展示され、旧き良きクラシックな空間にモダンな要素が見事に調和しています。

「寒かったでしょう?」とスタッフの方のお心遣いで、チェックインは暖炉の前で行われました。ウェルカムスイーツには新潟の伝統野菜でもある神楽南蛮を使ったパウンドケーキと温かいお茶をいただき、冷えた身体がグッと温まります。

ロビーの中二階にあたるロフトは宿泊者専用ラウンジで、滞在中はコーヒー、ハーブティーをいただきながら寛ぐことができます。

もう一つのラウンジには、書籍がたくさん並んでいるのでライブラリーとしてはもちろん、プロジェクターを使用して上映できるので企業研修会などイベントスペースとしての利用も可能です。

夕食の前後に設けられたバータイムには、日本酒や焼酎などの地酒やシングルモルトウィスキーを無料で楽しめます。

ダイナミックな小屋組から当時の大工の職人技を肌で感じることができます。木造建築なのに館内どこに居ても寒さを感じないのは、至る所に断熱材を配しているから。10mほどの渡り廊下をガラス窓ではなく木組みにしているのは積雪を防ぐため。雪国に暮らす人々の知恵がたくさん詰まっています。

一生に一度は体験したい!絶景雪見露天風呂

「日本一の絶景露天風呂」と名高い、里山十帖の大浴場「湯処 天の川」その理由は一目瞭然でした。

露天風呂からは、日本の百名山・巻機山をはじめ、標高2000m前後の上信越国境に聳え立つ壮大な山々と、一面に積もった真っ白な雪景色を一望でき、その光景は息を呑むほど。視界を遮るものは何もなく、目の前に広がる里山の自然に一体化するように設計された、ある種のインフィニティプールのよう!大自然が織り成す、今の季節しか見ることのできない絶景!この上なく贅沢な湯浴みができました。

翌朝はグッと気温が下がり、しんしんと降り続く雪の中、笠を被って湯に浸かるという人生初の雪見風呂を体験しました。

内湯も源泉掛け流しで、加熱保温のため循環器を使用しており、22時から男女入れ替わります。歴史ある大沢山温泉は、透明のお湯そのものがツルツルとした感触で、湯の花が舞い、湯上りはさっぱり。美人の湯、美肌の湯として知られています。

山々に残雪のある春、新緑が広がる夏、初冠雪が見られる秋から初冬にかけてもまた、四季折々の景色が楽しめるというから、また季節を変えて訪れたいところ。

暮らすように滞在する、一室だけの蔵ツイン

13室ある客室は全て違うコンセプトで作られ、絶景の山々を望む6室と、森を間近に感じる6室に加え、今回宿泊した「蔵ツイン」は、蔵を改装して2017年に新たに客室としてオープンしました。

レセプション棟や客室棟とは切り離された「離れ」で、周囲との接触もないプライベート感を味わえるスペシャルな空間です。白を基調にした内装で、天井が高く、大きな窓の向こうにはどっさり積もった雪景色が広がり、朝は太陽の光が明るく差し込みます。ベッドサイドのハシゴを登った先には、チェアを配したロフトがあり、まるで別荘に来たような、暮らすような滞在が楽しめます。

客室露天風呂は外気の寒さに対して熱めのお湯が身にしみて、じんわり汗をかくのにちょうど良く、客室にあった本などを読みながら長湯してみたり。今の季節は湯に浸かりながら、朝は降りしきる雪景色を、夜は満天の星空を独り占めできます。

他にも泊まってみたいお部屋がいくつかありますが、やっぱり次回もまたこの蔵ツインに戻って来てしまいそうです。

オーガニック+クレンズガストロノミーで驚きの美食体験

新潟といえば、日本を代表する米所であり、日本酒の消費量は全国1位を誇るほど、「米」と「酒」の産地として知られていますが、実は伝統野菜、発酵食、保存食など、日本に根付いた食文化が、雪国における当たり前の風景として残っています。

里山十帖のメインダイニング「早苗饗(さなぶり)」の名は、豊作を祈ると同時に田植えに協力してくれた人々をもてなす「饗応」に由来し、「風土と文化に寄り添いながら、自然の恵みに手を合わせて食べる」という料理の基本や原点を大切に、いわゆる豪華な旅館食やホテルのフレンチとは異なる、新たなガストロノミーの形を体現しています。

「二十四節気、七十二候/日本の暦に逆らわない料理」「古来伝承の発酵・保存技術を学び、活かした料理」「野菜は皮や根、茎まで、魚や肉は骨まで、余すことなく使い切る」といった「料理十条」を掲げ、地元新潟の生産者の想いが詰まった食材を積極的に採用して、全国に、そして世界に発信しています。

広大な里山で毎朝採れる山菜と、顔の見える生産者が作るこだわりのコシヒカリ、醤油や味噌までも無添加・天然醸造の調味料を存分に使い、料理人とのコラボレーションで地産地消の郷土食文化に新たな彩りを添えています。毎節というよりは毎日、採れる食材に応じてメニューが少しずつ変わるというから興味深いところ。

今回訪れた冬至の頃は「保存食と発酵食」をテーマに、雪室(ゆきむろ)で大切に貯蔵された切り干し大根、ゼンマイ、山ぐるみなどの山菜を使った伝統料理の「芥子なます」や、色も食感も異なる大根を花びらのように美しく盛り付けた「ぶり大根」など(こんなオシャレなぶり大根を食べたことがない!)…単なる田舎料理ではなく、モダンで先鋭的な自然食で、食材の本来の味を最大限に活かした味付け、火の入れ方、プレゼンテーションに、終始驚きの連続でした。

そして「ごちそうごはん」の名に相応しい、このコースのメインディッシュとも言える南魚沼産コシヒカリの登場です。指南書に沿って宿泊客自ら土鍋でじっくり炊き上げます。お米からごはんに変わる「煮えばな」は、“ごはんのアルデンテ”とも言われるほど食感を楽しみつつ、噛めば噛むほど甘みが際立ち、もっともお米の甘みを感じられる瞬間とされています。〆にはサプライズでもうひと手間アレンジを加えて、二度も三度も美味しくごはんをいただけます。

日本酒のペアリングもありますが、クリスマスということもあり、新潟のワイナリーを中心にしたワイン3種のテイスティングコースで、美食とのマリアージュを楽しみました。予約時にオーダーすれば、ベジタリアン、ヴィーガン、マクロビオティックにも対応可能ということなので、外国人ゲストにも喜ばれそう。

消化の良い夕食のせいか、翌朝は程よい空腹感を感じられ、朝から炊きたての玄米と、それに合わせる16種近くの“ごはんのお供”がずらりと並び、実は朝食こそ最高の贅沢を感じられるひと時かもしれません。

滋味溢れる優しい味わいに、五感が研ぎ澄まされるよう。口に運ぶ一口一口を大切に味わいたくなりました。満腹食べたはずなのに、どこか身も心もスーッと軽くなり、クレンズ(=浄化)されたよう。

大地の恵みを感じ、この雪国で力強く育った食材の持つ力を感じる。食材を通して生産者の想いを感じる。食を通して新潟そのものを体感する。ここでしか味わえない雪国ガストロノミーに出会えました。

クラウドファンディング690万円達成!多くの人に愛される宿

実は昨年ご紹介した箱根本箱は、株式会社自遊人が運営する里山十帖の姉妹宿でもあります。ライフスタイル提案型のホテルの先駆けで、ここでの体験を通じてライフスタイルそのものを発信するというメディアとしての役割を担う宿、ということを随所に感じられました。

参考記事:1.2万冊の本と暮らす、本屋+図書館+旅館を形にしたブックホテルでデジタルデトックス【箱根本箱】

昨年のコロナ禍、旅行に行きたくても行けない状況で「南魚沼の名旅館を応援しよう!」と里山十帖ファンが発起人となり、クラウドファンディングを通して多くの支援金が集まったそう!

「フードロスやフードマイレージの低減は、自然と共存する暮らし」

「時間をかけてひと手間かけて成すことこそが、真のラグジュアリー」

化学調味料を加えれば簡単に美味しくなり、お湯を加えれば食べ物に化けるように、あまりに便利になりすぎた現代社会において、里山での体験は、忘れかけていた大切なことを改めて気付かせてくれた気がします。

この古民家に刻まれた歴史の重厚さと、雪国で培われた食材の力強さに思いを馳せながら、また必ずこの地を再訪したいと強く思います。

◾️施設詳細
名称:里山十帖
住所:〒949-6361 新潟県南魚沼市大沢1209-6
TEL:025-783-6777
公式サイト:http://www.satoyama-jujo.com/
アクセス:①東京駅から上越新幹線で越後湯沢駅へ約1時間20分+在来線で約10分+大沢駅から送迎で約5分 ②都心から車で約2時間
所要時間:約1時間40分

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渡辺 由布子

渡辺 由布子

17歳から読者モデルとして多数女性誌に出演。6年間にわたってMBSラジオパーソナリティを務める。現在はヨガインストラクターの他、トラベルライターとして世界中を飛び回る。過去渡航した国は47カ国120都市。ハワイ留学、LA在住経験有り。現在は拠点を湘南に移し、全国各地を巡りながら、東京と行き来してデュアルライフを送る。

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17歳から読者モデルとして多数女性誌に出演。6年間にわたってMBSラジオパーソナリティを務める。現在はヨガインストラクターの他、トラベルライターとして世界中を飛び回る。過去渡航した国は47カ国120都市。ハワイ留学、LA在住経験有り。現在は拠点を湘南に移し、全国各地を巡りながら、東京と行き来してデュアルライフを送る。

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