実りの秋は、地面の下にも訪れている! 【登山ガイド・渡辺佐智の“うみのさち”】
ランドネ 編集部
- 2015年10月28日
登山ガイドの渡辺佐智さんが、自然の中で採れる旬のごちそうを追ってあちこちへ。さて今回のごちそうは?
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山は色づき、たくさんの実りになにを採りに行くか迷ってしまう季節。食欲の秋、到来です!
【新潟県・小千谷の自然薯】
ヤマノイモ科
食べる部位:長く伸びる根、むかご
旬:10~12月
○教えてもらった名人
山田誠さん
一年中なにかを獲って食べている。見つける的中率が高くて本当においしいところを知っている。山の遊び人とは、山田さんのこと。
掘って食べる。おいしさは土の中で育まれて!
「山田さん、おいしいものを採りに行きたいなあ、きのことか、あけびとか、さるなしとか」と言う私のざっくりなオーダーに、「やまのさちの取材なら、自然薯がいいんじゃない。」とのお答え。灯台下暗し、でした! いままで見えるものを追いかけてきたけれど、地面の下にも秋の実りは訪れている。それはなんとしても堀りに行かなければ! と向かったのは新潟県小千谷市(おぢやし)。関越トンネルを抜けると、どこまでも高い空と乾いた光が車窓へ飛び込んできた。南魚沼の広大な水田地帯にいまはもう水の気配はなく、刈りとられ干された稲穂はキラキラと照り返してくる。いい日になりそうな予感は、秋めく風に運ばれてやってきた。
驚いたのは、自然薯を掘るための専用ショベルがあること。細長いその形状が自然薯を掘るのに有効で、余分な土を掘りおこさずに自然薯の周りを効率よく掘り進むことができます。藪の中で育っている自然薯を掘るには大きいシャベルではひっかかって取り回しが悪いのです。ガサゴソと茂みをかき分けながら、まずは葉を見つけ、次にツルをたどる。地中にすいこまれていくツルは太ければ太いほどその下の自然薯も立派なのである。その周りの土はどうだろう。できるだけ岩石がなく、水はけのちょうどよい場所で育った芋は、素直においしく大きくなるのだそうだ。1mの自然薯ならば1m以上の竪穴を掘らなければ採れないわけで、その通りなのだが、やってみると体力だけでなく案外繊細さが要求される。「自然薯がどっちに向かって伸びているかよく見て」「穴を大きくしないで、深く掘る」「あ、そこ掘ったら折れちゃうよ」と、山田さん。ポキッ「あ~、もう少しだったのに!」と私。傷つきやすい自然薯は、大胆に深く掘り、優しく起こさなければならない。私の自然薯は先が10cmほど欠けてしまった。
キッチンで泥を落とすと、食べ物を収穫した実感がわいてきた。皮をむき、すりおろし、山葵と醤油をかけていただく。ねっとりとなめらかな餅のように力強い食感、よく噛んで食べると滋味あふれる。もし、山を丸ごと食べたらこんな味だろう、と思った。
掘り終わったらツルの先の芋を少し残して埋めておくと、翌年またそこから芋が成長する
1.ハート形の葉を見つけ、ツルをたどる。葉が少し黄色くなっているくらいが掘りだすのによい時期。ツルが直径5mm以上ある太いものだと根が大きい可能性は高い
2.藪の中での土木工事。若干傾斜がある地形の方が水はけがよく芋が良く育ち、土も掘り出しやすい
3.私の掘った穴。途中別の木の根っこが出てきて、鋸で切っては、よけて掘った。出てきたときのうれしいこと!
すりおろさないでシャキシャキとした食感を楽しむのも良い。火を通すと弾力が増して餅のようになる
1.泥を落とす。曲がっている自然薯は隙間に土や砂利が入っているので全部きれいに洗う
2.おろしたての自然薯。時間がたつと変色してしまうので、食べる直前にすりおろす
3.むかごご飯に自然薯のとろろをかけて。同じ蔓から出てくるので形は違うが味は同じ。不思議!
○渡辺佐智(わたなべさち)
登山ガイド。自然の中で体を動かし、
おいしいものを食べることを愛する。
安全登山のための情報をウエブサイトでも発信。
www.yamanosachi.jp
やまのさちサイトで番外編を公開中!
http://www.yamanosachi.jp/bangai.html
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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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