アウトドアの視点で考える、災害時に役に立つ平常時からの備えとは|#知り続ける
ランドネ 編集部
- 2022年03月01日
登山やアウトドアの世界は、自己管理・自己完結・自己責任が大前提。不確定要素が内在する自然のなかでは、原理原則を軸に臨機応変に対応してくことが不可欠です。災害対策においても登山やアウトドアと同様な要素が多数あります。ここでは、原理原則を軸に目の前の事態に的確に対応するためのヒントや具体策の例を紹介します。
Index
適切な機能をもった防寒具・衣類を正しく使う
アウトドア用のレインウエアは透湿防水素材という全天候対応ウエア。水や雪を防ぐだけでなく、多孔質の目に見えない穴があり、水蒸気を外に放出できる蒸れない素材です。蒸れて濡れると、液体を気体にする際、気化熱で熱を奪い、体温を下げてしまいます。
アウターとともにインナーでも保水しない服を着るのはアウトドアの常識で、発熱し保水しないウール素材は山の定番になっています。さらにアウターでは、風を防ぐことが重要です。風速1mで体感温度が約1度下がるのですが、風の日に風を防ぐという発想自体が普及しておらず、ひたすらもこふわを着込む人もいます。また、動かない空気は自然界最強の断熱材であるため、中間着で空気をためると暖かくなります。ダウン等で空気をためるのはもちろん、紙をまるめて服に入れたり、スリーピングバッグやダンボールベットが暖かいのは空気が断熱材として機能するからです。
アウトドアのウエアリングを知っていて、普段からそれを着用していれば災害時にも必ず役立ちます。
食(飲料水)、トイレの準備、「防災グッズセット」を用意
防災グッズの近くで被災するとは限りません。だから、毎日持っているカバンを防災仕様にすることが重要です。スマホ、ホイッスルやLEDライト、マルチツールなど、発災後15分以内の生死を分ける状況で必要となるグッズをいつものカバンに入れておきます。さらに、生き残った後に最初に必要になるものも加えます。飲み物、食料については山に入るときと同じ。行動食は災害時にも役立ちます。
忘れがちなのが、携帯トイレ。避難所の仮設トイレの設置日数は平均して4日かかり、マンホールトイレが設置されても、都市部だとトイレに入った直後にまた最後尾に並んでも間に合わないという想定が出ています。被災後4時間以内にトイレに行きたくなるので、トイレの衛生状態を保つためにも携帯トイレは必須です!
地震後、トイレの水を流さないように国土交通省(※災害時のトイレ)は啓発しています。災害時、すべての人が野外で用を足すと環境は許容できません。それらをポーチなどに入れて毎日持ち歩き、本格的な避難が必要になった際は災害用に用意したバックパックに移し替えます。
自宅・職場の防災マップ、ハザードマップを入手確認
自宅や職場、学校、家族の外出先の最低限の危険性を知らないと適切な対応ができません。うちの地域は安全という根拠のない思い込みは危険です。しかも、ハザードマップには現在わかっている危険しか書かれておらず、想定外が起こる自然現象のすべてを反映していません。
熊本地震では、2度目の地震が本震で、1度目は前震とされますが、それらは本震が起こった後になって初めてわかったのです。想定外も起こるなか、せめて最低限の想定が記載されているハザードマップはチェックしておきましょう。行政のHPに掲載されていますし、さまざまなリスクを重ねて表示してくれる重ねるハザードマップ(国土交通省)は一覧性があります。
行政がもっているリスク情報だけでなく、不動産業界がもっている地盤情報もあわせて見ることができる、地盤サポートマップ(アプリもある)は、自宅や職場の地震の危険や揺れやすさや液状化のしやすさが点数化され、カルテになり、隣の家との違いまでわかるので、災害を自分ごととして考えることができます。
家具や各種機器の固定
家を耐震化しないことは靴を履かずに山に登るようなものですし、家具の固定をしないことは雨具を持たずに登山するのと同じくらい無防備です。テレビやタンス、食器棚はもちろん、ピアノも冷蔵庫も地震であらぬ位置まで飛びます。コピー機は走り回ります。職場で固定されていますか?
耐震や免震構造の高層マンションは構造や建物の固有周期などから揺れが大きくなる傾向もあるため、家具の固定が生死を分けることになります。家具の転倒による地震の際の死者数は3〜5割。近日中に固定してください。ただ、賃貸住宅の場合、原状回復義務があります。これについては、東京都港区を始め、昭島市、三重県四日市市、香川県観音寺市、埼玉県日高市では、公営関連物件については家具を転倒防止した際の傷は原状回復義務を免除しています。
家具が転倒すると、津波からの避難が困難になり、転倒した家具がストーブにあたることで火事も起こっているので、家具の固定は家の耐震化と同様、マストです。固定グッズは種類が豊富です。複数使うことで効果も高まります。
最新情報の入手手段を考えておく
地震が直下で起こる場合には、緊急地震速報が間に合わないこともあります。熊本地震では地震のあとにスマホが警報で光ったので、暗くてもスマホの位置がわかったという話もありました。
生死に関わる地震の場合、揺れ始めるとまったく何もできません。揺れる前の対策がすべてです。耐震化、家具の固定をしたうえで、情報入手方法を知ってください。緊急地震速報アプリを入れて音を聞いたら少しでも安全な場所で身を守ります。ただし、画面を見る余裕はないと思ってください。目の前の危険回避のほうが、震源がどこで震度いくつという情報より生死に関わります。揺れが1分以上続けばプレート型の地震の可能性が高く、津波避難も考えます。数十秒でも揺れが大きい場合は、震源が近いです。安全を確保した後、落ち着いてから災害情報アプリを確認します。
豪雨については雨雲レーダーアプリを。河川の氾濫は、国土交通省川の防災情報や気象庁危険度分布とyahoo! 河川水位情報も優秀です。自分なりの避難のタイムラインを決めます。
緊急時集合場所・避難経路の確認、地域の安全化促進を図る
避難が必要なのは、津波、家事、家屋の倒壊など、その場にいることが危険な場合です。地震は余震もあるので、避難経路が安全であることが重要です。事前に歩いて危険を調べます。
現在、都市部は避難所の数が足りていません。そのため、自宅が安全なら自宅に留まることが基本です。二次災害を避けるため、職場からも帰宅せずに職場待機が原則となっています。避難しないということも念頭においてください。
瓦は台風で飛び、地震で落ちるリスクがあります。ビル街やショーウインドウのガラスも危険です。ブロック塀の撤去は個人宅では進んでいません。板チョコが倒れるような形で倒れるため、逃げるのは不可能です。持ち主の承諾をとり、PTAや自治会予算でも撤去できるように和歌山県串本町では、助成金の申請権者を拡大するなど撤去の工夫をしている自治体もあります。
※この記事はランドネ特別編集 アウトドアで防災BOOKからの転載であり、記載の内容は誌面掲載時のままとなっております。最新情報は気象庁HP、内閣府HP(防災情報)などをご確認ください
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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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