持久力をアップして、長距離ランでもバテない体をつくる!
- 2021年05月19日
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持久力のある体づくりに体脂肪は欠かせない
ランニング時の主要なエネルギー源となるのは、糖(グリコーゲン)です。しかし、体内に溜めておくことができる糖の量には限りがあり、長距離を走るときには不十分なときもあります。とくに、42.195kmという長丁場となるフルマラソンを走りきるためには、糖だけではエネルギー源としては不十分です。
そこで活躍するのが体脂肪(脂質)です。糖とは異なり、体脂肪を体内で溜めておける量は無限大。さらに、糖と並行して使うことで糖が消費される速度はおだやかになり、長距離ランにおいてもエネルギー切れを起こすことなく走りきることができるのです。つまり、持久力を維持できるということです。とかく悪者にされがちな体脂肪ですが、持久力が重要となるフルマラソンのような競技では、体脂肪は敵ではなく味方。なくてはならない存在なのです。
体脂肪が少ない人は持久力も低い可能性大!
ランニング、自転車などの持久系のスポーツでは「ハンガーノック」という現象が時折発生します。これは、体内のエネルギー源がゼロになってしまい、体がまったく動かせなくなってしまう現象です。
運動中のエネルギー補給不足が大きな原因ですが、体脂肪をエネルギーとして使用できていないことも原因のひとつです。そのため、体脂肪率が極端に低い人や代謝が悪い人は体脂肪がうまく使えないことから、持久力が低下してハンガーノックに陥るリスクも高まります。
体脂肪のメリットは両刃の剣!体脂肪が減らしにくいワケ
体脂肪が持久力アップに貢献する理由は、エネルギー効率の良さにあります。糖質は1gあたり4kcalであるいっぽう、脂質は1gあたり9kcalのエネルギーをもっています。つまり、脂質は2倍以上もエネルギー効率が高い優秀なエネルギー源と言えます。
ちなみに、体脂肪を減らすことが難しい理由もこのエネルギー効率の良さにあります。たとえば、同じ強度の運動をしたとしても、体脂肪を消費して減らすには、糖を消費するよりも2倍以上の時間、運動をし続けなくてはならないことになるのです。
20分以上のランニングで、持久力アップ+ヤセ体質になれる
ランナーにとってなくてはならない存在である体脂肪ですが、その難点は、本格的にエネルギーとして使用され始めるまでに時間がかかるというところです。糖は摂取して消化吸収されるとすぐに血中に放出されるため、素早くエネルギーとして使われるのですが、体脂肪はそうはいきません。
体脂肪は糖とは異なり、エネルギーとして使用される状態になって血中に放出されるまでにはいくつかのプロセスを踏む必要があります。加えて、体脂肪がエネルギーとして使える状態になるためには大量の酸素が必要となることも難点です。体脂肪を減らすために有酸素運動が有効とされるのは、運動によってたくさん体内に取り入れた酸素を使って体脂肪のエネルギー変換を促すことができるからです。
ランニングは有酸素運動の代表的なスポーツですが、数分走っただけでは体脂肪をエネルギーとしてたくさん使うことはできません。少なくとも20分以上は走り、体中にたっぷりの酸素を巡らせ、体脂肪をエネルギーに変換する必要があります。
少しハードルが高く感じられるかもしれませんが、定期的に20分以上のランニングを行って体脂肪をエネルギーとして使うことを体に覚えさせれば、体脂肪を使いやすい体質に変わっていきます。その結果、持久力がつき、さらに食べても太りにくい体質に変わることもでき、一石二鳥の効果が得られるのです。
持久力が一気に高まる!体脂肪を燃やすための6カ条
ここからは、体脂肪を効率的にエネルギーに換え、持久力のある体をつくるための6つのポイントをご紹介します。6つのポイントを意識してトレーニングを続けることで、自然と持久力が向上するはずです。
1.糖不足を防ぐ
過度な糖質制限は体脂肪燃焼を妨げます。糖は着火剤で、脂肪は燃料のような関係だからです。たとえば、バーベキューで火を起こすとき、着火剤だけがあっても、燃料がなければ火をおこすことはできませんよね?体もそれと同じで、体脂肪があっても糖がなくては、体脂肪は燃料として使われにくくなってしまうのです。そして、着火剤である糖の不足が長期にわたると、体脂肪が燃えにくい体質になって持久力がどんどん低下してしまいます。もちろん、ダイエット目的で走る場合でも同じです。過度な糖質制限をしてランニングを行っても、体脂肪を減らすことは難しくなります。
それどころか、糖が不足するとタンパク質がエネルギーとして利用されてしまうため、筋肉量を減少させてしまいます。それがリバウンドの原因にもなります。こういったことから、ダイエットランを行う場合でも、適度な糖の摂取は必要となることは忘れずに!
2.貧血を防ぐ
体脂肪はミトコンドリアという器官の中でエネルギー化されます。そして、ミトコンドリアが体脂肪をエネルギーに変換するときに酸素を必要とします。そのため、貧血になり酸素を全身に行き渡らせる役割をもつ血中のヘモグロビンが不足すると、ミトコンドリアに十分な酸素が供給されません。結果、体脂肪を燃料してエネルギーを作る力が低下してしまいます。
実際、貧血の人は健常者と比較して持久力が低いことは医学的にもわかっています。日頃から貧血気味の人は、ヘモグロビンの材料となる鉄やタンパク質、葉酸などの栄養素は過不足なくとることを心がけましょう。
3.大きな筋肉を鍛える
体脂肪をエネルギー化するミトコンドリアのほとんどは筋肉に存在します。つまり、筋肉は持久力の源なのです。そのため、大きな筋肉を鍛えたほうが効率的にミトコンドリアを増やし、活性化させることができる。大きな筋肉の代表は、お腹まわり・太モモ・お尻の筋肉です。これらの筋肉を効率的に鍛えられるのが腹筋やスクワットです。このふたつのエクササイズを毎日行うだけでもミトコンドリアを増やし、活性化させることは可能です。もちろん、持久力の向上も期待できます。
4.心拍数を上げ下げする
体脂肪を使いやすい、持久力のある体をつくるには、心拍数を上げ下げできる「高強度インターバルトレーニング」が有効です。高強度の運動強度(最大心拍数の90~95%)とインターバル時(休息時)の運動強度(最大心拍数の60~70%)を交互に数回繰り返すことで効率よく心肺機能を高め、持久力を向上させることができます。インターバルトレーニングを行う際には、スポーツウォッチを装着して心拍数を常に確認することが必須となります。
5.できるだけ長く走る
近年、走り出した直後から体脂肪もエネルギーとして使用されることもわかってきました。それでも体脂肪燃焼効率が高まるのは、体脂肪の分解が完了する20分後あたりからです。そのため、20分間以上、心拍数120拍/分前後、息が上がらない程度のペースで走るようにしましょう。
6.筋トレをトレーニングにとり入れる
腹筋やスクワットだけではなく、ほかの筋トレを組み合わせることで体脂肪燃焼効率をさらに高めることが可能となります。また、筋トレで筋肉がつくことによって基礎代謝が上がるため、ヤセ体質づくりにも役立ちます。筋トレをとり入れるときはランニングの前に行うのがおすすめです。筋トレは、体脂肪の分解を促す働きをもつ成長ホルモンが分泌されることも知られているため、長距離ランの前に筋トレを行うと持久力を高めることもできます。
<監修>
伊藤重範(いとうしげのり)
医療法人三九会三九朗病院循環器内科専門医・医学博士。心臓病や生活習慣病の運動療法、心臓病や生活習慣病を抱えた人たちのスポーツの取り組み方などの研究に取り組む、循環器内科専門医。ランニングをはじめとしたスポーツの愛好家でもある。
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