高山植物(山の花好き)ライター・成清陽の「ヤマノハナ手帖」#20 イワカガミ
ランドネ 編集部
- 2023年03月23日
登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します!
花粉がピークとなるこの時期。皆様、体調はいかがですか?ワタクシ、じつは子どものころから重度の花粉症で、鼻水・涙は止まらないわ、カラダはかゆくなるわ、頭は痛いわ……。鼻の粘膜を焼く荒療治も受けてみたものの、効き目が一時的と来たもんだ。そこで、当時はまだ珍しかった「舌下治療」を受けてみたら、これがバツグン。5年がかりで、花粉症が克服できたんです!!さあ、皆さんもカネで健康を買おうではありませんか~って、表現の汚さが笑えない(笑)。……ということで、今月はそんなワタシのイメージと無縁の華やかなお花、イワカガミをご紹介します。
Index
文句のつけようがないキレカワ系
Data
イワカガミ(イワウメ科)
一般的な花期:6月~7月
主な生育場所:山地の林内など
本連載では、これまでたびたび高山植物たちにクレームやツッコミを入れてまいりました(スミマセン)。しかし、数ある植物のなか憎めず、そしてダークサイドを切り拓くことができずにいる花があるとしたら……このイワカガミほどふさわしいものはないでしょう。鮮烈なピンク、ちょっと小柄な丈、そして独特なフォルム。そのすべてにおいてカンペキと噂される(?)、とてもキレイ&カワイイ花なのです。決して目立つ種類じゃないけど、アングラでもない。その“ちょうどいい”存在感が絶妙なんです。
“落とし”どころがあるとすれば……
アラを探してもなかなか見つからない、パーフェクトな花。イヤ見てくださいよ、この可愛らしさ&華やかさを!!うつむいたピンクの花をそっと支える赤い花茎、そしてアクセントとなる雄しべと雌しべ。花弁のところどころが緑青色に染まるのはご愛嬌。珍しい色味が、かえって花を引き立てます。あえてツッコむなら、本種が図鑑上で「イワカガミ」と「コイワカガミ」という、分類がなされていること。しかも、注釈で「大きさの基準がはっきりしない」という、曖昧なところくらいでしょう。
これは「鏡」……?
そんな区分けもスルーして注目したいのは、イワカガミの名前の由来、「岩鏡」。岩は山地のこと、鏡はもちろんミラーです。で、ミラーにたとえられているのは、本種の葉っぱ。あまりにどストレートな命名センスと、花を引き立てるツヤツヤの葉のコントラストに、なんだか納得。現代的なミラーではなく、古代遺跡から出土する鏡に近いと聞けば、さらに「ヘヘーッ」と頭が下がる思いです!
ツヤツヤの秘密
ところでこの鏡たるゆえんとなった葉っぱ。紅葉の時期ともなればさらに輝くわけですが、ここでギモンが。なしてこんなにツヤツヤなんでしょう?そう思って調べてみると、こちらはツバキの葉っぱのような「クチクラ層」と同様なものだそうで。カラダの水分が失われないように、しっかりとコーティングしている、そんなイメージなんだそうです。……お、おお?ちょっと待てよ。イワカガミたちの生息環境に多いのは「林内」。つまり、水分が奪われにくい環境がメインなんじゃ?
その本当の意味は!?
至極まっとう&ロジカルなツッコミをしたくなったわけですが、真実は闇の中。でもこれ、見てください。こちら「ナンカイイワカガミ」という清楚な別種ちゃんが暮らすのも、やっぱり森の中。しかも、標高は300mを切る場所ときてます。そのくせ、葉っぱはやっぱりツヤツヤ……。がぜん怪しさを増すこの“ツヤツヤ疑惑”。まるで接写に耐えられなくなったベテラン女優にごまかしライトを当てすぎるテレビ番組のようでは?
果実までも、やっぱりカワイイ
しかしこのツヤツヤ疑惑、解明に走るも真相はワカラナイまま(力不足を痛感!)。そんなこんなじゃ終われないので、最後のワンカットはこちらをば。華やかな花のあとに残る、果実です。よく見ると、雌しべのあとが赤くて、ぴょこんと長くて。(あ、かわい…)と思っちゃうでしょというわけ。えーーーっ!そんだけかよ~。という叫びが聞こえますが、“ほんのりブラック”を重んじる本連載でも、ステキちゃんはストレートに褒めちぎって終わりたいのです。結論、「イワカガミは花も、花のあともカワイイ」。
さて、今回ご紹介してきたイワカガミ。いかがでしたか?高山にあるものは基本的にサイズが小さいために「コイワカガミ」と名乗るのが正式だとか、あまり区別しないとか。なにやらモヤモヤしますが、個人的にこの花を見るとそんなことはどーでも良くて。要は、カワイイ。あ、また言っちゃった…。ということで、ツヤツヤ疑惑については、今後もリサーチを続けてみたいと思います!皆さんも北岳や八ヶ岳、ほかアルプスなどでイワカガミを見かけたら、ぜひその可愛らしさ(&ツヤツヤっぷり)に注目してみてくださいね。
それでは、また。
皆様のココロに、素敵な花が咲き誇りますように。
花ライター/会社員
成清 陽
大学時代から山を渡り歩いていた個性派キャラ。卒業後も、好奇心の赴くままに職を転々とし、自然ガイド、環境コンサル、ホテルマン、雑誌編集者、市営公園管理人を経て、現在は森づくり事業を担う会社員。好きな山は尾瀬、白山、御嶽、北岳。花が美しい山しか好きになれない、アルティメットな病なんです~!(笑)
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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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