幼いころの思い出をたどって小平奈緒さんの山歩き|おひさしぶり、八ヶ岳・硫黄岳
ランドネ 編集部
- 2023年07月31日
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ずっと見守ってもらってきた
八ヶ岳ブルーを目指して
競技生活に打ち込むなかで遠ざかっていた登山。でもいつも心のすぐ傍にあった、八ヶ岳ブルー。家族の思い出が宿り、大切な場所であり続ける、ふるさとの山へ。
家族との時間と山が教えてくれたこと
「昨日まで雨だったから、森がきれい」
空を仰ぎ、風を感じ、樹木を見つめ、そっと微笑む。
「一歩一歩を積み重ねると、いつかは目標の場所にたどりつける。途中で不安になっても、最後にはすばらしい景色が広がっている。その感覚はスピードスケートでもおなじ。大事なことは山登りから学んでいたと思います」
長野県茅野市に生まれ育ち、子どものころは、毎週末のように山登りをしていたという小平奈緒さん。現役時代は控えていた山を再開する場所に選んだのは八ヶ岳の中央に位置する硫黄岳だった。お父さんと何度も登ったことがあり、頂上から茅野の町を気持ちよく眺められる山だ。
この日のために、忙しい合間を縫って一式揃えた山ウエアに身を包み、軽やかに足を運んでいく。
「見たことのない高山植物やお花を見つけて、父に『これ何?』って聞いていました。すると、父は図鑑を出して、『調べてごらん』って。もしかしたら名前を知らなかったのかもしれないですけれどね(笑)。でもれがおもしろくって。私もいま大学で学生から質問を受けると、『あなたはどう思う?』って、自分で答えを探ってもらうようにしています」
まっさらだった登山靴は少しずついい味わいに。「撮影にはこれぐらいがちょうどいいかも」なんて笑いながら、「スピードスケートのシューズは、甲までしっかり固定するけれど、足首は動く状態になっていて。だから靴紐を上までしっかり結ぶのは、ちょっと心配で」と、フィット感を調整。奈緒さんは、ものにも事象にも、一つひとつまっすぐに向き合う。自分の軸で考え、判断し、ていねいに言葉を選んで口にしている。
山頂でのコーヒータイムでは、オーレン小屋の前の沢で汲んだ水を沸かした。ドリッパーやカップは、自宅から持ってきたお気に入りのもの。
「山だからって特別なものではなく、普段から大事にしているものを使いたい、と思いました」
非日常のひとときに身を任せて、
大きな山を五感で感じて
下山ではオーレン小屋に寄ってお昼ごはん。お父さんと何度も寄り道した思い出の場所だ。居合わせた登山者からツクモグサの開花情報を聞いたり、スタッフさんとおしゃべりしたり。人見知りという奈緒さんだけれど、この日この瞬間の出会いを味わう。
「もとは準備を万全に整えるタイプだったけれど、留学してずいぶん変わりました。オランダでは試合の直前に状況が変わることが多くて、何かあったときに臨機応変に対応できることのほうが大事だなって。そのためにも、目の前のことを愉しまなきゃって」
言葉や表現を大事にする奈緒さんにとって、「たのしい」は、心が動くという意味を含む「愉しい」が合う。下山後の駐車場では、茅野市の職員の方から、冷えたセロリとミニトマトのサプライズが。「地元のセロリは、世界一おいしい!」とほおばる奈緒さん。
「現役時代に靭帯を切っているので、出発するまではちょっと心配で。でも、今日、無事に歩けてホッとしました。いまは講演活動が忙しいけれど、少しずついろんな山の時間をすごしていきたいな」
旅のようすは、茅野市のYouTubeチャンネル「Fun!Yatsugatake」、「ランドネ2023年9月号」、「広報ちの」も合わせてお楽しみください。
◎小平奈緒さん
長野県茅野市生まれ。相沢病院所属。信州大学特任教授。2018年平昌オリンピックで日本女子スピードスケート史上初の金メダルを獲得。2022年に競技生活を終え、信州を拠点に「Life Artist」として幅広い活動をスタート。
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ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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