モデル仲川希良の「山でお泊まり」東京都・御岳山編Vol.1
ランドネ 編集部
- 2019年09月25日
モデル/フィールドナビゲーター仲川希良さんの、ランドネ誌面と連動の連載「山でお泊まりレポート」。
スペースの関係で誌面に収めきれなかった情報は、こちらのサイトで美しい写真とともにお伝えしてきます!
第6回目は、東京都の御岳山へ。
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東京都に住む私にとって、御岳山はおなじみのハイキングコース。初心者の友人を誘うにもぴったりの、気軽に行ける山です。
ケーブルカーに乗り御岳山駅で降りれば、そこはもう標高831m。標高929mの御岳山山頂には30分ほど歩けば到着します。
山頂部には武蔵御嶽神社があり、参道がしっかりと整備されているので、神社との往復だけならスニーカーでも大丈夫。
▲しっとり雨上がりの新緑
都心から1時間半でアクセスできるという近さもあって、「山に来た!」という実感があまりないまま歩き始めますが、足元でニリンソウが揺れていたり、樹上でムササビが眠っていたり……日常ではなかなか目にすることができない自然の姿に、少しずつ気持ちが柔らかくなっていく気がします。
▲まん丸のひとみがかわいいムササビ発見
あっという間にたどり着けて、これまで何度も歩いたこの山に、今回あえてお泊まりしようと思った理由……それは、お祭り!
武蔵御嶽神社が2日間にわたって執り行う「日の出祭」を見てみたかったのです。
これまであまり強く意識したことはなかったけれど、御岳山は古くから信仰を集めてきた霊山。「日の出祭」は年に何度かあるお祭りのなかでも、もっとも格式高く、厳粛に行われるのだそう。
参道を歩いていくと、山頂手前に御師集落が見えてきます。御師は武蔵御嶽神社への信仰を守り、神社への参拝者をお世話してくださる人々です。
▲山を守り、山に守られるように佇む御師集落
▲各地の講による参拝記念碑があちこちに
御師集落には20以上もの宿坊があり、私が今回泊まるのもそのうちのひとつ。
途中でひときわ古く美しい宿坊を見かけたので、ちょっと立ち寄ってみました。
▲「茶処」の文字に吸い寄せられ……
立派な茅葺き屋根のこちらの宿坊「東馬場」が建てられたのは慶応2年。東京都の指定有形文化財に登録されているそう。神社に参拝する講のための座敷や内神殿が備えられていて、幕末期の御師住宅のようすを知ることができます。
▲淡い青の漆喰が美しいお座敷で休憩
▲地酒「澤乃井」を使った甘酒セットで温まる
黒光りする柱に見とれながらホッとひと息付いていると、奥からキャッキャと聞こえてきたのは16代目のお声。初節句を迎えたばかりなんだそう。
15代目のご主人の腕に抱かれて見せてくれたお顔はあどけなく、この子が神主・御師を代々世襲する東馬場家の歴史をつないでいくのかと思うと、通りすがりの私まで感慨深いものが……。
▲隋神門
▲御岳山頂上に当たる、武蔵御嶽神社
御師集落を抜けると隋神門と呼ばれる立派な門が現れ、最後はてくてくと石段を300段ほど上がれば、そこが山頂。「御嶽山」の金色の文字が輝く、武蔵御嶽神社に到着です。
軽いお散歩程度の疲労度ですが、石段を登り切るとやっぱり達成感がありますね!
振り返ると遠く、東京都心の密集したビル群が目に入ります。
この神社で見逃してはならないのが、狛犬。見てください、この凛々しいお姿。
▲筋肉隆々カッコイイ
御岳山の狛犬は、狼なのです!
日本武尊が東征した際、御岳山で道に迷った軍隊を導いたのが、忽然と現れた白狼だったのだそう。日本武尊から、御岳山にとどまって魔物を退治するよう言われた白狼は、魔除けの神として厚い信仰を集めたといいます。
いまは絶滅したとされるニホンオオカミ……狼というと怖いイメージがありますが、昔は畑を荒らす害獣を退治してくれるありがたい存在でもあったそうですから、人間がその存在を尊び、共存できていた時代があったのですよね。
さて、お目当の日の出祭は、この日の夜の「宵宮」と翌日の「本祭」の二部構成になっています。
お祭りに参加する前に、武蔵御嶽神社の宮司でいらっしゃる須﨑さんにお話を伺ってみました。
▲お祭りの準備で慌ただしい社務所にて
「御岳山への信仰の始まりは紀元前まで遡ります。日の出祭は、修行をしていた山伏たちの山開きが元となっているといいますから、鎌倉のころと考えると、800年ほどの歴史があると考えられます。」と、須﨑さん。
春のお祭りは五穀豊穣の祈年祭。秋のお祭りは収穫に感謝する新嘗祭。日の出祭は特殊神事に当たり、神様のためだけのお祭り、神様といっしょになれるお祭りなんだそう。
▲神社の長い歴史に想いを馳せながら手を合わせて
毎年毎年途切れることなく続いてきた、武蔵御嶽神社にとってひときわ大切なお祭り。
いったいどんなものなのか……楽しみにしながら、宵宮が始まる時間までひとまず宿坊で過ごすことにしましょう。
次回は武蔵御嶽神社のお膝元、お世話になった宿坊「西須﨑坊 蔵屋」をご紹介します!お楽しみに。
***おまけ***
隋神門からお社までの石段には、こっそり小鬼が隠れています……!
私は2人見つけたけど、じつはもっと隠れているのかも!? ぜひ探してみてくださいね♪
写真◎加戸昭太郎
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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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