どんな稜線が好き?歩きたくなる?撮りたくなる?|#稜線マニアの座談会
ランドネ 編集部
- 2021年11月04日
壮大な景色を楽しめる稜線歩きは、登山の醍醐味のひとつ。ここでは、稜線歩きに魅了された3人が思い出の稜線についてゆるりと語り合います。
Index
ガイド、フォトグラファー、編集部が稜線トーク!
登山ガイド
渡辺佐智さん
春から秋は登山ガイド、冬から春はバックカントリーガイドとして活動。自身が暮らす山梨県のおすすめの稜線は鳳凰三山
フォトグラファー
小澤義人さん
人と地球のあいだを入ったり来たりしながら本当の「ビューティフルライフ」を追う。飯豊連峰の稜線が忘れられない
ランドネ編集部
二宮菜花
学生時代はワンダーフォーゲル部に所属。北アルプスの稜線上にあるテント場をつないで縦走したのはいい思い出
稜線には不思議と疲れがリセットされるような力がある
二宮:おふたりはこれまでいろんな山に登ってきたと思いますが、印象深かった稜線はありますか?
小澤:さっちんひさしぶりだね。
二宮:小澤さんは佐智さんのことを「さっちん」って呼ぶ仲なんですね(笑)。
渡辺:小澤さんで思い出したのですが、10年前くらいにランドネの取材で飯豊連峰を歩いたときかな。烏帽子岳の稜線がすごくきれいでしたよね。
小澤:モデルの仲川希良ちゃんもいっしょだったね。たしか避難小屋で寝泊まりしながら4泊5日かけて歩いて、荷物も多かった記憶がある。
二宮:けっこうガッツリ登山!天気はよかったですか?
小澤:おおむね晴れか霧だったけど、下山時はけっこう降られたかな。でも烏帽子岳の稜線に出たときの景色が本当にきれいで、いまでも忘れられない。
渡辺:東北の山はガツッと登ったあとに待っているなだらかな稜線がすてきですよね。汗だくで登って、稜線に出た瞬間に汗がさらっと乾く感じも気持ちよかった。
二宮:すごくわかります!息を切らして、登った先が優しい山容だとホッとします。
渡辺:稜線には不思議と疲れがリセットされるような力がありますよね。それが登山者が山にハマっていく理由のひとつなのかもしれませんね。
小澤:北アルプスみたいにゴツゴツしていないのもなんだか新鮮だったし、森林限界が早めにくる感じもよかった。
渡辺:東北の山は平均気温が低くて雪をかぶっている期間が長いことも、森林限界に影響していますね。
二宮:なるほど。お手軽に高度感を楽しめるのも魅力ですね。
渡辺:また飯豊連峰の話になっちゃうんですけど、稜線に上がった1泊目に食べた小澤さんの夕ごはんがおしゃれでおいしかったことも思い出。
二宮:小澤さんが作ったんですか?
小澤:たしか日ごとの食事当番制にした気がするね。僕が作ったのはレンズ豆を使ったレシピで、シーチキンの炊き込みご飯とかも作ったような記憶が。まぁ、友人が考案したレシピをマネしただけなんだけどね!
二宮:私も食べてみたい……。
小澤:僕もさっちんが食事当番だった日に食べたウナギの味が忘れられないよ。
二宮:山の上でウナギ!
渡辺:最近はあまりやっていないのですが、前はよく冷凍した魚を持っていっていましたね(笑)。
二宮:山の思い出って、食事の思い出とセットになっているのがまたおもしろいですよね。
小澤:そうそう、写真を見返すだけで食べたものを思い出しちゃうの。
手と足を使ってガツガツ歩く稜線歩きも好き!
二宮:小澤さんはご自身の山のお写真でお気に入りってありますか?
小澤:この烏帽子岳の写真(上記写真)もお気に入りだけど、槍ヶ岳からヒュッテ大槍までの稜線で撮った写真も気に入っているね。
渡辺:東鎌尾根ですね!
小澤:大小さまざまな岩がボコボコと続いていて、この何の保証もない感じが好きなの。
二宮:わかります。手と足を使ってガツガツ歩く感じも楽しいです。子どものころに遊んでいたアスレチックのようで。
渡辺:北アルプスの名峰を眺めながらの岩稜帯歩きは最高ですよね。一方で、昔より気軽に登る人が増えたこともあって装備のルールが厳しくなり、いまはヘルメット推奨エリアになっていますね。
二宮:私も学生時代に東鎌尾根を歩いたことがあるのですが、たしかにそのときはまだヘルメットをかぶっている人は少なかった印象です。改めて考えると落石があってもおかしくないような場所ですよね。
渡辺:県によっては山岳事故を防止するための山のグレーディングがあるので、各県のホームページなどから事前に確認しておきたいですね。歩きたいルートが自分のレべルに合っているか、装備を持っているかなどを考える時間も大切です。
二宮:今年の夏、初めて北アルプスを歩く両親といっしょに燕岳に行ったのですが、白くなだらかな稜線に感動していましたね。合戦屋根から登ったので少し大変でしたが、危険な岩稜帯もないので、北アルプス初心者にもおすすめしたいエリアです。
小澤:僕も燕岳〜大天井岳〜常念岳の表銀座コースを縦走したことがあるんだけど、あのあたりの稜線の雰囲気も好きだな。
渡辺:とくに燕岳は花崗岩が天空のビーチみたいでいいですよね。緑と白のコントラストもきれいで、山が明るいのも好印象。
道が奥のほうまで続いてその先に山頂や山小屋が入っていたら完璧
二宮:写真映えも抜群ですよね。小澤さん、稜線でのすてきな写真の撮り方を教えてください!
小澤:登山道が奥のほうまでビューンと続いている感じが写っていて、その先に分かりやすく山頂や山小屋が入っているのが、構図的にいいと思っている。
二宮:なるほど。雑誌に載せるときにも使いやすい写真ですね。
小澤:カメラを構えている時間が長いと、光の具合とか風の吹き方がうまくかみ合う瞬間がある。さっきの烏帽子岳の写真もそう。自然の緑と空の青、手ぬぐいのなびき方や希良ちゃんの横顔もいい。
渡辺:あとで稜線の写真を見返したときに「ここの地形がよかったよね〜」とか山仲間と盛り上がる時間も好き。言葉で伝えきれない感動を写真によって伝えられることって多いですよね。
二宮:地形の話で盛り上がれるのはなかなかマニアック。でもおもしろそうです!
渡辺そういえばちょっと前に福井県の年縞博物館に行ってきたんです。
小澤・二宮:ネンコウ?
渡辺:長い年月の間に湖沼などに堆積した層が描く特徴的な縞模様の湖底堆積物のことなんですけど、年縞博物館では7万年ぶんの地層がきれいに積み重なっているのが見られるんです。それが廊下にズラッと展示されているのを見たときには本当に興奮しました!
二宮:佐智さんの興奮がものすごく伝わってきます……!
渡辺:話が少し逸れてしまってすみません。何が言いたかったかというと、その地層を見たときに自分が生きているのは本当に一瞬なんだなって。稜線上で山々を眺めているときにも、それに近い感動を覚えることが多いんです。
小澤:僕たちなんてちっぽけだねって思うよね。
二宮:最後に、おすすめの稜線を教えください!
小澤:さっき紹介した飯豊連峰の烏帽子岳、北アルプスの東鎌尾根や表銀座縦走コースはやっぱりおすすめ。雄大な景色を望みながらの稜線歩きを楽しめること間違いなし。でも、初心者の方にはちょっぴり難しいコースなので、経験を積んでから挑戦してほしいですね。
二宮:夏に挑戦したい夢の縦走ルートですね。
渡辺:山梨に住んでいるので近いところでは鳳凰三山がおすすめです。こちらも花崗岩の白い稜線が美しく、けっこう標高の高い場所まで背の低い広葉樹があるので、紅葉シーズンにぜひ。
二宮:南アルプスの名峰を眺めながらの稜線歩き、いいですね!
渡辺:もっとお手軽に行ける稜線なら、大弛峠から歩く金峰山や大菩薩嶺もおすすめです。鳳凰三山に比べて短いコースタイムで歩けるので、稜線歩きのデビューにもぴったり。
小澤:そっちのエリアは稜線から富士山が見えるのもいいよね。山梨以外のおすすめは?
渡辺:やっぱり北海道縦走!日本とは思えないような壮大な景色を楽しめますよ。
二宮:行きた〜い!今度ぜひガイドをお願いします!
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ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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