高山植物(山の花好き)ライター・成清 陽の「ヤマノハナ手帖」#15 ギンリョウソウ
ランドネ 編集部
- 2022年10月24日
登山&撮影をライフワークとする花ライターがお送りする、高山植物の偏愛記。静かに、しかしアツ~く、お花をご紹介します!
突然昼夜の寒暖差が大きくなり、にわかに始まる平地の紅葉。やべ、冬が来る!と焦りつつも、クリご飯+熱燗旨し、エンドレス……というのが例年の展開。ところが今年は、クリの質が微妙、さらにドングリ不作でクマ出没警報まで発令中。お天道様の動き如何によって、世間の9割がかき回されているような気がする、今日このごろです。そんな自然界の神秘にあやかって今回ご紹介するのは、高山植物界きってのミステリアス・キャラクター。ギンリョウソウ、出陣します!!
Index
シルバードラゴンか、ゴーストか
Data
ギンリョウソウ(ツツジ科)
一般的な花期:4~6月
主な生育場所:平地~山地の林内
「いやー、久しぶりの登山は楽しいなあ。山頂まで、あとどのくらいだろう。オヤ?」。足元を見やれば、少し暗めの森のなかに、ぼうっと浮かび上がる、その姿。第一発見者は、「おぉすげえ!こりゃ、まるで銀色の竜のようじゃないか!」と思って、いさんで学会に報告したそうな。ところが後日、別の学会員から「いやこれ、ユーレイやろ」「しかもキノコっぽくね☆」というノリ&ツッコミが。「イヤイヤ、そうじゃねえだろ!絶対、竜だって」「いや、幽霊キノコだって!!」「いや、竜だ」「幽霊だ!」……大論争を経て、和名ギンリョウソウ、別名ユウレイタケとなってしまったんだそーな。
んで、花はどこなん!?
って、ホントかどうかは知りません(笑)。実際、どちらにも見えるから、どっちでもイイやん(めんどくさいし)ということで、併記で決着したんではとタカをくくるわけですが、それよりも大事なのは、どこに花があるんじゃい!というまっとうすぎる疑問でしょう。で、周囲のヒラヒラをバラすとわかるのは、中心部に雄しべと雌しべがちゃんと存在しているコト。今度絶対、ひそかにバラして撮影しようっと(ほかの登山者に見つからないように)。黒い決意はさておき、ここからはこの神秘の植物を掘り下げてみましょう。
ミステリーvol.1 ビミョーな結束力
真っ白な見た目、地味な花、そして異様な存在感。ただ、なぜかまとまっているときもあり、バラッバラになっているときも。ヘンな見た目、ヘンな存在感、そしてヘンにユルい結束力。海抜100mほどの林内でも登場するため、高山植物と認定するにも、あまりに微妙。「じつはこの連載で紹介するようなキャラでもないんじゃね?」。そんなキモチも、ま、わからなくはない(上から目線)。
ミステリーvol.2 ゾンビな芽吹き
いやいやいや!そう思っちゃうのはさ~、ミステリーの深淵を見てないからじゃないのぉ?ホラホラ、ナウシカの気持ちになってみようよ!!と、いきなりウザいキャラ全開になる筆者(あ、すみません)。でもね、ホントにこっから本番、ギンリョウソウの神秘がザックザク。何といっても注目は、地面からの芽吹き。ある日、ズモモモモ……と頭が持ち上がり、徐々に……徐々に……立ち上がる。しかも、花はうつむき加減。いやこれ、ユーレイっていうよりゾンビでしょ。昭和ならキョンシーだわ。え?キョンシー知らない?
ミステリーvol.3 「モドキ」
おっとっと。またも「イマドキの若いもんは」って上から目線になっちまうところでした(汗)。続きますミステリーはこちら。なんだかギンリョウソウっぽいけど、なんか薄汚れてて、黄色っぽい?そう、これ別種「ギンリョウソウモドキ」です。9~10月に咲くから、別名アキノギンリョウソウ。でもなんとなく見た目は似ていても、やっぱそこはギンリョウソウ。あるところにまとまったり、散ってみたり……そーしーて、、、芽吹きはズモモモモ……。ウギャー!やっぱゾンビだわ!!
ミステリーvol.4 ヒモなんです
で、極めつけがコレ……この「ベニタケ」の仲間とギンリョウソウが、めっぽう仲良しなんですよね。緑色の色素(=いわゆる葉緑素)を持たない植物・ギンリョウソウは、光合成がまったくできません!でも、生きていくためにはパトロンが必要!!で、見つけたのが栄養を分けてくれるベニタケです。彼らは木々と菌根(キンコン)でつながりつつ、ギンリョウソウを生かしてくれるというわけ。つまり、ギンリョウソウはヒモ。そう、ドラゴンだのユーレイだの議論しても、所詮はヒモです、ヒモ。ヒモドラゴン?ヒモユーレイ?あ~、まったく威厳ねぇわ。予想外の結論に、ギンリョウソウもびっくりです!
さて、今回ご紹介してきたギンリョウソウ。いかがでしたか?れっきとした植物として登録されている(しかもツツジ科というメジャーレーベル所属)ギンリョウソウ。PC仕事が多い人にとってはドーピング薬(!?)となるブルーベリー、山においてはアカヤシオなど華やかな花が知られるツツジ科にあって、ギンリョウソウは異端児中の異端児といっていいでしょう。そんな彼らの出没地は、山地だけでなくクヌギ林などの葉っぱが堆積しまくっているところ。ぜひ一度、ヒモヤローを探してみてください。あ、もちろんパトロン(ベニタケ)もお忘れなく。
それでは、また。皆様のココロに、素敵な花が咲き誇りますように。
花ライター/会社員 成清 陽
大学時代から山を渡り歩いていた個性派キャラ。卒業後も、好奇心の赴くままに職を転々とし、自然ガイド、環境コンサル、ホテルマン、雑誌編集者、市営公園管理人を経て、現在は森づくり事業を担う会社員。好きな山は尾瀬、白山、御嶽、北岳。花が美しい山しか好きになれない、アルティメットな病なんです~!(笑)
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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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