新ルート名称決定!松本高山Big Bridge構想実現プロジェクトカンファレンスが開催
ランドネ 編集部
- 2023年03月16日
“日本の屋根”北アルプスの主要な山々を有する、中部山岳国立公園。2021年4月に、この国内有数の国立公園と、東西の麓に広がる長野県松本市、岐阜県高山市を含む一帯を世界水準の観光エリアに育てることを目的に「松本高山Big Bridge構想実現プロジェクト」が立ち上がりました。
発足当初より当プロジェクトが目指したのは、松本市と高山市の市街地と中部山岳国立公園をつなぐ約80㎞の観光ルートを新たに作ること。その実現に向けて2022年7月より新ルートの名称の一般公募が行われ、いよいよ2023年2月25日に松本市内で開催されたオンライン発表会、「松本高山Big Bridge構想実現プロジェクト」カンファレンス『share the 未来図2023』内にて新名称が発表されました。
カンファレンスには松本市の臥雲義尚市長、高山市の清水雅博副市長、環境省中部山岳国立公園管理事務所の森川政人所長、松本高山Big Bridge構想実現プロジェクトのPR大使である山村咲稀さん、そしてランドネ元編集長でプロジェクトアンバサダーを務める佐藤泰那らが参加し、熱いトークを展開。地元の関係者13名によるインタビュー動画も公開され、それぞれが思い描くこのエリアの未来図を分かち合う一日となりました。
今回ライブ配信されたカンファレンスの内容は、動画共有サービスYouTube上にアーカイブされていますが、どんな内容だったのか、その概要をお届けしましょう。
「松本高山 Big Bridge 構想実現プロジェクト」カンファレンス『Share the 未来図 2023』
https://www.youtube.com/live/MNl784NNtX0?feature=share
Index
各スポットの魅力を点ではなく面で捉えて一帯的なおもてなしを
カンファレンスの冒頭、環境省の中部山岳国立公園事務所の森川所長より説明されたのは、当プロジェクト発足の経緯や目標について。環境省として「中部山岳国立公園を世界水準の場所にする」というミッションがあり、その手段のひとつとして、国際観光都市として知られる松本と高山を起終点とするルートの設定を提案したそう。
「点同士をつなぐルートを設定し、それを基軸に、観光圏としてブランドを設定すれば、エリア全体が上質化します。各地域で大切に受け継がれてきた個性はそのまましっかり伸ばしながら、一帯的なおもてなしや多様な移動手段の提供、利用者の嗜好に合ったルートを作ることで、中部山岳国立公園を世界中の旅人が目指すディスティネーションにしたいです」
森川所長は、「国立公園というツールを使って、過疎化や耕作放棄地の拡大など自然保護だけでなく地方や日本が抱える課題にも役立てたい」とこのプロジェクトに寄せる期待も語りました。
地元関係者13名が語る、プロジェクトとエリアの未来図
プロジェクトが始まり、地域の人々の意識や取り組みにも変化が起こり始めています。カンファレンスでは、山小屋や麓の宿泊施設のオーナー、アウトドアガイド、旅行事業者、家具メーカー等、松本と高山を拠点とする地域の人々13名の動画インタビューが公開されました。
「松本を北アルプスの山並みがきれいに見える街にしたい」「乗鞍高原の魅力は自然に近いところ。暮らすように旅を楽しんでほしい」「山小屋に泊まるだけでなく、おいしい食べ物やおしゃれなグッズなど付加価値の提供に取り組んでいる」「飛騨高山を木工の聖地にすることで観光客を呼び込み、新しい価値が生み出したい」「エネルギー自給率100%に向かって地域のみんなが努力しけたら魅力的だと思う」など、プロジェクトへの参加をきっかけに芽生えたさまざまな気づきやアイディアが語られています。
<インタビュー出演者>
横尾山荘 山田耕太郎さん
都市計画家 倉澤聡さん
ノーススター 山口謙さん
美ら地球 佐々木美由紀さん
wondertrunk&co. Evelyn Teploff-Mugiiさん
槍ヶ岳山荘 穂苅大輔さん
穂高岳山荘 今田 恵さん
徳澤園 上條靖大さん
ひらゆの森 中本哲仁さん
飛騨産業 岡田明子さん
澤英俊設計環境 澤秀俊さん
アルピコグループ 美ヶ原温泉 翔峰 ノエル・ライカーズさん
松本高山Big Bridge構想実現プロジェクトPR大使 山村咲稀さん
相互に連携しながら、松本市らしさ、高山市らしさに磨きをかける
当日、会場がもっとも熱い空気に包まれたのが、松本市の臥雲義尚市長、高山市の清水雅博副市長、環境省中部山岳国立公園管理事務所の森川政人所長、プロジェクトアンバサダー佐藤泰那の4名によるクロストークです。松本市も高山市も、北アルプス山麓であることから豊富な森林資源に恵まれ、木工産業が盛んな街。臥雲市長と佐藤は曲線が美しくモダンな飛騨産業の椅子、清水副市長と森川所長は重厚感がありシックな松本民芸家具の椅子に腰掛けて、和やかにトークが始まりました。
「地域でそれぞれ行われている取り組みが、相乗効果を生み出すだろうと期待しています。たとえばDMOやDMCの組成や森林資源活用、トレイルルートの設定など。高山の古い街並み、松本の文化芸術を活かしていくなど、相互の連携が感じられるような旅や生活がある観光圏を目指していけたら」。環境省が提案するこのプロジェクトの未来図は「総合循環型観光圏」を形成すること。この地域の最大の魅力である自然そのものをコンセプトに非日常の体験をしてもらうだけでなく、環境問題へのコミットも重要であると森川所長は語ります。
松本市の臥雲市長は、「松本にとっての山は、登ってよし、見てよしの山です。都市と自然、城と山のさらなる相乗効果を松本の街づくりに活かしていきたいと思っていたときに、森川所長が『山の先までつなぎましょう』と提案してくれ、自分たちの視界を広げてくれました」とプロジェクトへの期待感を語りました。「高山市とは近いようで文化が異なっているということを、ここに訪れた外国人の方はもちろん、日本全国から来た方に堪能・体験してもらうことに意味があると思います。そのためは、松本らしさ、高山らしさに磨きをかけてきたいですね」と、今後の連携が楽しみになるコメントも。
一方、高山市の清水副市長も「ビッグブリッジを通じて、松本市について多くのことを学ばせてもらいました。そのなかでとくに高山市として学んだことは、環境の問題です。松本市の乗鞍高原は全国で最初にゼロカーボンパークに選定されていますが、高山市でも脱炭素先行地域の申請にこぎつけることができました」と、プロジェクト参加による影響を振り返ります。今後は、小水力発電や地熱発電を推進することで、環境に配慮した自然豊かな観光地を目指していくそう。また「私たちが見上げる北アルプスは夕焼けが美しく、松本からは朝焼けが美しい。同じ北アルプスでも、高山と松本からではまったく違う印象になると思います。観光客のみなさまには、両方を見比べてみてほしいし、市民の方々にもそれぞれのエリアに足を運んでほしいと思っています」と、両市の個性を活かす観光の在り方についても語りました。
6900名の投票をもとに決定したルート名は「Kita Alps Traverse Route」
盛り上がったクロストークの後は、いよいよプロジェクトの核となる松本と高山間の観光ルートの名称のお披露目です。松本高山Big Bridge構想実現プロジェクトのPR大使である山村咲稀さんによって発表されたその名前は……。
「Kita Alps Traverse Route」(北アルプス・トラバースルート)
投票期間は2022年7月~11月で、WEBサイトで約2100名、イベント等で行ったシールボードでの投票で約4800名、総数約6900名分もの投票が集まったそう。最多得票数を獲得した「Northern Alps Traverse Route」に、自由投票等の意見を踏まえて改編した案を選出し、最後は選考委員による投票で決定したのがこの「Kita Alps Traverse Route」でした。
「Kita Alps(北アルプス)」という固有名詞が、世界に広がっていってほしい。そして、“山岳を横断する”という意味の「Traverse(トラバース)」というワードから、3000M級の山岳と80km圏内にある2つの都市圏を訪問するという特別感と特異性を感じてほしい。
こういった想いが込められたルート名に対してPR大使の山村さんは、「地元の方にとっても馴染みのある言葉になってよかったと思います。この名称が世界中の人に知ってもらえるように、PR活動をがんばっていきたいです」と決意を新たにしました。
名称発表とともに「日本のアルパイン文化に触れる旅」「北アルプスの自然と人々の営みから学ぶ旅」という2つのテーマに沿った6泊7日の具体的なモデルプランの提案も行われ、充実した内容でカンファレンスは終了。「Kita Alps Traverse Route」というルートを軸に据えた総合循環型観光圏への形成に向けて、関係者全員が確かな一歩を踏み出す一日になったに違いありません。
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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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