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「神様百名山を旅する」番外編(後編)│足の神社に「足の神様」がやってきた!

足のお祭りの日に、大きな和太鼓を足助飯盛山の山頂へ持ち上げ、奉納演奏をするという企画を「神様百名山を旅する」の広田勇介さんが立案しました。演奏者は山伏でもある千代園剛さん、30kgの和太鼓を山頂まで運ぶのは日本一過酷な山岳レース「トランス・ジャパン・アルプス・レース」を4連覇した望月将悟さん。内容を想像しただけでも神秘的でワクワクします。その模様を広田さんがリポートします。

現代の足の神様が和太鼓を山頂まで運ぶ

登山者ならずとも、足は人間にとってとても大切なもの。愛知県豊田市には、その足を祀る神社があり、春のお祭りがあると聞いてやってきた。仲間は、和太鼓奏者で山伏の千代園剛、そして、トランスジャパンアルプスレースの王者・望月将悟。飯盛山の山頂に重さ30kgの太鼓を担ぎ上げ、足の神様に感謝の演奏を行う。

足の神様を祭る神社のお祭りに、トレイルランナーの望月将悟がやってきた。望月さんは、この日のために、なんと静岡県井川村にあるご実家から、お祖父さんが使っていたという背負子をもってきた。

望月さんの地元、井川村には「てしゃまんく」と呼ばれる力持ちの山男にちなむ伝説がある。なんでも、てしゃまんくは山奥の井川村から今の静岡市あたりまで、往復約100km以上の道のりを一日で往復し、力持ちで山の仕事は何でもこなし、おまけに手先が器用で竹細工や木工品なども作ってしまうという伝説の山男だ。望月さんはかねてから「てしゃまんく」に憧れており、今回は衣装までもがリスペクトをこめて、このような出で立ちで現れた。

作務衣に編笠というスタイル…江戸時代からやってきた男のようだ。
おまけに足元は…

わらじに杖である。あまりに徹底している。

ちなみに、この木製の杖の手元は「T字」になっている。昔の山岳会や大学山岳部などの山用語で、休憩することを「一本とる」とか「一本たてる」などと呼んだが、その語源は歩荷さんが荷物の下に杖を立てて、荷物を降ろさずに休憩したことによる。まさしく生き字引のようなスタイルだ。

その後、試行錯誤しながら、背負子に太鼓をくくりつけたが、バランスを取るのが難しく、起き上がるときは人の支えがないと起き上がれない。何しろ太鼓はこのサイズである。

三尺(直径約90cm)の太鼓。なんとか梱包し、16時の花車の出発に備え出発準備を整える。
足助神社のお祭りにはこのような花車が合計7台現れ、市中をひいて練り歩く。

その後、神社の神職の方に、お祓いをして頂き、出発。

神職の安藤さんは夏の間、富士山山頂の浅間神社に奉職されている方で、休みの日には登山もされる。思わぬご縁にびっくりしながら、出発。まずは境内にある「足の神様」にご挨拶。

千代園さんと並び、二人が歩いていると、まるで違う時代の人間が目の前に現れ、一心不乱に山に向かっている気がする。しかし、時代が違えども、僕らも山に登ることは同じだ。日本という国の山とのつながりの長さと深さを感じざるをえない。

今回は、急な企画にも関わらず、カメラマンのOkuさんを始め、遠くからもこのチャレンジに参加してくださる方がきた。太鼓は太鼓そのものだけではなく、太鼓をのせる足やそのほか、さまざまな部品がある。これを参加者の皆さんが分けて運んでくださった。

山頂まではふつうに登ればわずか20分足らずだが、30kgの太鼓をぶつけずに慎重にゆっくり運んでいく。

山頂直下では皆でお神輿を担ぐ時の掛け声「ヨイ!ヨイ!」と声を合わせながら、登っていく。

ようやくたどり着いた山頂には、足の神様に奉納する絵馬ならぬ絵足がところ狭しと掲げられていた。

足助飯盛山の山頂で奉納演奏

ここからは千代園さんの出番だ。

遠くに下の町からも太鼓の音が響いてくる。お囃子を邪魔しないようにと、千代園さんは耳をそばだて、風にのって運ばれてくる太鼓の音に注目した。目標の4時が近づくころ、次第に太鼓の音が小さくなった。町にいる方に電話で確認し、花車が出発するタイミングを見計らい千代園さんの演奏が始まった。

山の頂の、町で一番高いところから、風にのって太鼓の音がどこまでも響いていく。その音は、時代を超えて数百年の昔まで響いていきそうな、そんな深さと雄大さをもった音だった。

心なしか、町の太鼓の音も強くなり、まるで山のふもとと山頂で壮大なセッションを行っているようだった。

演奏が終わり二人が固く握手する。

お祭りのため、足の神様のために山頂で太鼓を叩きたい。一見、無意味と思われる行為に
皆が力を合わせて、全力で山の頂きを目指す。

世界のどこにもない。これぞ、日本の山登りだ。

帰りもケガをしないように、ゆっくりとくだり、神社につくとお礼参りをした。
神社につくとちょうど、花車を片付け終わった町の若い衆の皆さんと合流。記念撮影をさせていただく。

私は今まで、カナダ、アラスカ、ニュージランドなど海外の山を登り、現地でガイドとしても働き、世界中の山に触れてきた。海外には、スケールでは日本を遥かに超えた山がたくさんあり、氷河や万年雪をたたえた大きな山がたくさんある。20代や30代の頃はそういった山々に憧れ、現地のマウンテン・カルチャーをシンプルにカッコいいと思っていた。

そういった山々を単純にスケールや標高で日本の山と比べると、いかに北アルプスといえども見劣りはしてしまう。でも、日本の山と山登りの魅力はそうした目に見える尺度では測れない魅力があると、最近では思うのだ。

標高や単純な山の形ではない、山の魅力。ふもとに根付く人々の山への想いや文化。そういったよく目を凝らさないと見えない魅力を感じながら、世界のどこにもないユニークな山登りがしたい。遠くへ行かなくても、高さを目指さなくても、日本では深さのある探検はできる。

足助飯森山を登る二人の背中を見ながら、そんなことを想った一日だった。

千代園剛さんの奉納演奏はYouTube動画でお聞きいただけます
協力 足助八幡宮、足助観光協会

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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