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モデル仲川希良の「絵本とわたしとアウトドア」#36 オオカミがとぶひ

日々のできごとや自然現象は
きっとすべてつながっている

「きょうは かぜが つよい びゅうびゅう びょうびょう ふきぬける だって オオカミが かけまわっているから」……雷が鳴るのはゴリラが胸を叩くからで、眠れないのはトナカイが見ているから。主人公の飛躍的な世界の解釈にクスリとしながら読み進め、しかし幼いころはたしかにこうだよなと気づきました。知り得る情報を総動員させて把握しているつもりの景色は、大人から見るとずいぶん突飛なものだったりします。

一端に言葉を扱うようになった3歳の息子の話を聞いていても、その世界のシンプルさに驚かされます。彼のなかでは、近所の川と先日訪ねた鎌倉の海はすぐそこでつながっていて、その海には絵本で知ったシロクマの乗る流氷が浮かんでいる。車窓から山が見えたならそれはすべて自分が歩いた高尾山で、そこには天狗が棲んでいる。知っていることが少なすぎて、みんなつながっているのです。大人は可愛らしい空想と笑うかもしれませんが、果たしてどうでしょう。山に行くと、自分を囲む世界の構成要素が一見少なくなって、この〝すべてはつながっている〞という感覚が蘇るような気がします。

▲絵本のなかではクジラが夜を連れてくる。明け方にひときわ鳴く鳥の声を聴くと、彼らが朝を連れてきた、と私もよく思う。写真は月山の空に飛ぶ鳳凰のような雲。去ると同時に朝日が差した

絵本を読んで、はじめてソロテント泊をしたときのことが浮かびました。あいにくの暴風雨。経験不足で建てたわが家はいつ倒れるとも知らず、暗闇のなかでポールが激しくしなるのを感じてなかなか寝つけないでいました。目が慣れるとぼんやりテント内は見えるものの、外のようすは分かりません。そのうち、私のテントを激しく揺さぶっているのはもしやクマなのでは、という考えが湧いてきました。雨風だけでこんなにも揺れるのか?いま聞こえた枝の折れる音は大きな生き物が動いたからでは?山経験の浅さが妄想力となって、なかば本気で震えながら、寝袋のなかで小さくなっていた思い出があります。

事実、山では生きものとの距離が近くなります。登山道には獣の足跡が残り、おなじ道を歩いているのかとハッとします。おいしそうだなと手を伸ばした木苺がすでにいくつか食べられているのは、先に通った登山客ではなくてシカのせいかもしれません。それは帰宅したとておなじこと。どこかの山で動物たちが飲んだ水が水道から出てきているし、わが家の外には遠かろうと確実に彼らが棲んでいる。

水に風に空に、動物を感じる日々は、じつは大人が思うよりずっと〝本当〞に近いのかもしれません。

今回の絵本は……

オオカミがとぶひ
作・絵 ミロコマチコ
イースト・プレス

圧倒的な迫力と愛らしさをもつ動物たちの表情がたまらない。私のお気に入りは星空を広げるクジャク。作者は現在奄美大島に移住し、海と山をすぐそばに感じているそう

モデル/フィールドナビゲーター
仲川希良

テレビや雑誌、ラジオなどに出演。登山歴は14年目。里山から雪山まで広くフィールドに親しみ魅力を伝える。一児の母。著書に『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

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仲川 希良

モデル/フィールドナビゲーター

仲川 希良

テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの12年。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。著書に、『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

仲川 希良の記事一覧

テレビや雑誌、ラジオ、広告などに出演。登山歴はランドネといっしょの12年。里山から雪山まで幅広くフィールドに親しみ、その魅力を伝える。一児の母。著書に、『わたしの山旅 広がる山の魅力・味わい方』『山でお泊まり手帳』

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