尾瀬の生態系を守る登山道整備方法とは
ランドネ 編集部
- 2023年07月05日
本州最大規模の湿原や四季折々の豊かな自然、快適な山小屋など、山歩き初心者からベテランまで、山好きの人を幅広く受け入れてくれる場所である尾瀬。
そんな尾瀬の自然をモチーフにしたミニマルチツールを、高品質かつデザイン性もお墨付きのアウトドアナイフでおなじみのビクトリノックスといっしょに制作しました。
Index
尾瀬の登山道の実情
ミニマルチツールの売り上げの一部は尾瀬ガイド協会に寄付され、登山道整備に活用されます。尾瀬といえば、まっすぐに伸びる美しい木道のイメージが強いですが、たくさんある登山道の状況は、じつはすべてが整っているわけではなく、なかには、荒廃している道も。
登山道荒廃のひとつの原因は、雨が降ったときに、水の流れができてしまい、ぬかるんだ道を通らないようにとサイドを踏んでいってしまうこと。その道が広がっていくことによって、道がどんどん削られていってまわりの生態系も崩れてしまうのだとか。
そんな登山道を整備していきたいと日々奮闘するのが、登山ガイドとして日々尾瀬を歩いている館山美和さん。きっかけは、ツアーで下山後に小屋の前で休んでいたところ、下山してきたお客様のひとりが「こんな登山道二度と歩きたくない」と話しているのを聞いたこと。
「とても悲しい気持ちになったと同時に、そんな思いをする人を減らしていきたいと思い、尾瀬ガイド協会に働きかけました。荒廃してしまった道をこれ以上広げず、安全な道にしていきたいです」
元ある自然に近づけるための「近自然工法」
尾瀬ガイド協会がトライする整備方法のひとつが、「近自然工法」。登山道を歩きやすくすることはもちろん、道が荒れている原因や自然の成り立ち、生態系を正しく理解し、周囲にある資材を使って整備することで、自然環境がよみがえり、生態系の復元にもつながる整備方法です。
たとえば、ガリー浸食であれば、地域にある倒木などを使用し、水の道をうまく逃がしてあげながら、登山者が歩きやすい歩幅になるように木を斜めに組む。そこに土砂を埋めていくことで、水の道は確保しながら、さらなる浸食は止め、流れてくる土を受け止めて、元あった生態系のかたちに戻していくことが可能。
道の水の流れ方や土のやわらかさ、地域にある木材、地域の文化などを考えながら、尾瀬ならではの正解を導いていかなくてはならない整備方法。尾瀬の自然をいちばん知るガイドさんだからこそ挑戦できる方法なのではないでしょうか。
魅力ある尾瀬を歩いてほしい
館山さんが好きな尾瀬の季節はふたつあるという。
ひとつはレンゲツツジやカキツバタ、ワタスゲが咲く6月中旬~7月上旬。
もうひとつは、草紅葉の紅葉が美しい9月中旬。冷たい空気が下におりてきて、湿原に入る低木が紅葉してくる時期。
どちらも人が少ない季節で、落ち着いた尾瀬をゆっくり歩くのにおすすめなのだとか。
「私が好きなスポットは、ヨッピ吊橋の少し手前です。小さな湿原があり、池に写る逆さ燧ケ岳を見ながら、木道をのんびり歩けます」
お話を伺ったのは……
館山美和さん
片品山岳ガイド協会会長。群馬県片品村で暮らし、夏は尾瀬の登山ガイドとして、冬はスノーボーダーとしてスノーボードレッスンやバックカントリーの活動を行なう
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ランドネ 編集部
自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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