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大川に伝わる伝統漁法「コド漁」で念願の鮭を獲る【登山ガイド・渡辺佐智の“やまのさち”】

登山ガイドの渡辺佐智さんが、自然の中で採れる旬のごちそうを追ってあちこちの山へ。さて今回のごちそうは?

連載始まって以来、一番大きなさち。興奮冷めやらぬレポートをお届け!

【新潟県・村上市の鮭】
サケ目サケ科
旬:10月~12月
寿命:平均4年
ふ化放流された稚魚のうち成魚になり生まれた川へ戻る割合:2%

○教えてもらった名人
佐藤虎文さん
川床の石の配置、そのときの水の流れまで知り尽くし、次々と鮭を獲るたたずまいが格好良い

鮭を保護し、伝統漁法をいまに伝える大川へ

大きな黒い魚影が川面にゆらりと動いたその瞬間に、なんだか涙が出そうだった。4年の月日をかけて海洋を旅し、生まれた川に帰ってきた鮭との出会いだ。大川を遡上する鮭を初めて見たのはさかのぼること1年前。全国で唯一この土地だけに残る伝統漁法「コド漁」を取材したときに、一尾もとれず惨敗だった私は、いつかあの鮭を自分の手で獲りたいと心に決めたのだった。

12月頭、私は鮭の遡上待ちをしていた。大川漁協組合の組合長からは、例年より遅く、荒天が続き漁には厳しい日が続いている、との知らせがあった。いままさに故郷へ帰還する鮭の手ごたえを夢見ながら待つしかない。予定から1週間遅れて新潟県村上市へ向かった。

鮭は私たち日本人にとって特別な魚だ。かつては高級品で年貢米の代わりに献上されたという。300年以上続くこの漁では、コドといわれる鮭の産卵場を人工的に造り、紐でつないだおとりの鮭を泳がせておくと、雄には雌が、雌には雄が寄ってくる。自分の姿が鮭に見つからないように「カザミ」といわれる木や竹で作られた工作物の影に隠れて狙いを定め、先端にカギのついた竹竿でひっかけて獲る。川底の砂利ごとひっかける気持ちで! と言われるのだが、長い竹竿のコントロールと鮭の動きの見極めが素人には難しい。まず、ひっかけるのに何度も失敗し、そこからばらさずに岸に上げるのにも苦戦した。ビタンビタンと陸で暴れる魚体はぬめりがあり、油断をするとそのまま川に戻っていく。そんな格闘の末、持ち上げた鮭の重みは忘れられない。鮭の躍動と私のドキドキが相まって、目が覚めるような体験だった。

「なぜ、いまもコド漁は続いているのでしょうか?」という私の問いに「楽しいからね」というシンプルな答えが胸にストンと落ちた。

その年、最初に獲れた鮭は「ハツナギリ」という儀式で神様に奉納する

20160127_01 1.鮭に気づかれたらあっという間に逃げられるので、できるだけばれないように、そーっと
2.昔から使われている一本鈎は20cmほどの大きさ。私はかかりやすい三本鈎でトライ!

保存食にするには寒風にさらし、干して塩引鮭にする。生鮭にはない旨みをもち炙れば絶品

20160127_02 1.キッチンの流しが獲った鮭でいっぱいに。1尾さばくのに1時間ほどかかった
2.卵を腹から出し、塩水で洗い、酒につけておく。冷凍すればしばらくもつ

【コド漁を続けるために】
大川漁協組合では、秋に獲った鮭から受精卵を育て、冬にふ化させた稚魚を春に放流する。毎年8 月に漁場の入札を行い、9 月には川床の大きな石をどかせて鮭の産卵に適した川を造り、遡上を待つ
※鮭の密漁は違法。勝手に川に入って鮭を獲ってはいけません

○渡辺佐智(わたなべさち)
登山ガイド。自然の中で体を動かし、
おいしいものを食べることを愛する。
安全登山のための情報をウエブサイトでも発信。
www.yamanosachi.jp
やまのさちサイトで番外編を公開中!
yamanosachiROGO
http://www.yamanosachi.jp/bangai.html

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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