【新連載】四角友里のにっぽん“食”名山#01 元祖 金時茶屋の金時じるこ
ランドネ 編集部
- 2017年01月22日
私が、「 “食”名山 」に目覚めるきっかけとなった山は、箱根にある金時山。
山歩きを始めてから長いあいだ、山での食事は、“お弁当”もしくは“自炊“をしていました。けれどかれこれ8年前、初めて女友だちだけで金時山へ登ったときのこと。山頂に着き、私はリュックからバーナーとコッヘル、ドライフードを取り出しお昼ごはんを作りはじめました。友だちはおにぎりを持参していたのですが、いそいそと山頂にある「元祖 金時茶屋」へ入っていきます。そして湯気が立ち上るお椀と七味をお盆に載せて帰ってきました。お椀の中身は、地元産のきのこがたっぷり入った『きのこ汁』。その熱々のおみそ汁と肉厚なナメコのおいしそうなことといったら!!
山ごはんって、その場で作る or 持ってくるという2択の「リュックに入れて運んでくるもの」と思っていたし、山グルメとは下山後に楽しむものだと思っていたので、山のうえでこんなおいしいものをいただけるのかと本当にびっくりしました。
“そのとき、その場所だけでしか食べられないもの”という魅力にひきつけられ、私も食後に金時茶屋へ駆け込み、注文したのが『金時じるこ』です。
お餅が2つも! 大粒のお豆も入っていました。この金時じるこは、女将さんが小豆に風味豊かな花豆をブレンドして煮た自家製あんこが使われていて、休憩して冷えてきた体に、控えめな甘さがじんわりと染み渡りました。昔、冬になるとおばあちゃんがコトコトと煮て作ってくれたおしるこの味に似ていて、ほっこり。お腹も心も満たされながら眺めた、そのときの富士山はとてもきれいに見えました。
これが私にとって“食名山”のはじまりの一食。それ以来、山での食の楽しみが増え、一気に《ごちそう山ワールド》の虜になったのです。
大正時代から続く元祖 金時茶屋は、 通年営業をしていて老若男女に大人気。金時娘と呼ばれる名物女将さんがいらっしゃり、天井狭しと並んだ登頂100回を超えた人々の記念札も圧巻です。金時茶屋の“食”の一杯が、たくさんの人の思い出のなかにあるのでしょうね!
金時茶屋と山頂に並んで建つ「金太郎茶屋」の足利牛とごぼうが入った『まさカリーうどん』も気になります。金太郎が生まれ育ったといわれる金時山ならではの、マサカリのオブジェや金太郎像などもかわいいですよ。
Data:元祖 金時茶屋
標高1,213m
TEL.090-3158-1239
営業時間:7:00〜16:30
休み:なし
写真◎四角友里、加戸昭太郎、宮上晃一
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自然のなかで食べるごはんやおやつはどんなものでもおいしいけれど、登った先や下山後の「おいしい」は、山歩きの楽しさを掛け算で増幅させてくれます。忙しいと、食べることがいつしか単なる栄養補給のようになってしまったり、なにを食べたか思い出せない日すらあります。けれど山の「おいしい食」のひとつひとつの記憶はとても鮮明で、会話や感情までもが蘇るのは、自然のなかでは「お腹すいたーっ」と心底欲して、シンプルに生きられているからなんだろうなと思っています。
これから始まる新連載! タイトルは『にっぽん“食”名山』です。『日本百名山』を著した深田久弥さんの「百の頂に百の喜びあり」という言葉が大好きなんです。そこで、「百の頂に食の喜びあり」とオマージュをさせていただきました。
山小屋の名物ごはん、ふもとの人気のおやつなど、「山歩き」と「食」をキーワードにあちこちの山のなかとその周辺で食べたおいしいものへのアツアツな想いを、胸いっぱいお腹いっぱいに綴っていきます。山の難易度にも知名度にもとらわれず、私なりに厳選した「食ありき」の山ばかりです。
まずは、甘味・パン・飲み物編からスタート!!
おいしい食べもののある“食”名山を求め、 いっぱい、いっぱい、山を歩きましょう! きっとそこには新しい世界が待っています!
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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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