香味野菜好きにはたまらない希少な山菜・ギョウジャニンニク【登山ガイド・渡辺佐智の“やまのさち”】
ランドネ 編集部
- 2017年06月27日
登山ガイドの渡辺佐智さんが、自然の中で採れる旬の幸を追ってあちこちの山へ。さて、今回のやまのさちは?
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今年のギョウジャニンニクはもう食べ飽きました、と言う名人。大きな体でせまい藪をすり抜ける。じつは3世代前までは熊で、その末裔だという噂だ。
【長野県大町市のギョウジャニンニク】
ユリ科
時期:春から初夏の若芽、葉
別名:キトピロ、ヤマニンニク、アイヌネギ、尾瀬蒜
○教えてもらった名人
佐藤正昭さん
白馬在住の信州登山案内人。ガイド業のみならず、滑り手としてもスキー誌に登場する。父親の影響で幼い頃からキノコや山菜採り、釣りに親しむ。
山菜の王様は沢奥に鎮座する
「あったよ?!」。藪の奥から名人の佐藤さんの声が聞こえた。しばらく探して、もしかしたらないかも……と諦めかけた矢先のことだ。声の方へかき分けて進むと、小さな雪渓の周りで、茎の太いギョウジャニンニクが艶々の葉をふんわり広げている。採って、切り口に鼻を近づけると、ああ、間違いない、この力強いアリシンの香り。私はパブロフの犬のように食欲全開モードにもっていかれ、ごくりと唾をのみ込んだ。
ニンニク、ニラやタマネギに近い香りをもつギョウジャニンニクは、香味野菜好きにはたまらない山菜の一つだ。どんな料理にも合い、茹でてナムルや酢味噌和え、炒めものや餃子、北海道だとジンギスカンにも入れるのも人気だ。岩魚が釣れたら、いっしょに叩いてナメロウにするのもおいしい。今夜は焚き火で調理するので、シンプルなペペロンチーノにする。ニンニクは使わずオイル、赤唐辛子、塩と顆粒の鶏だしを少しと、最後に焚き火の煙スパイス。日暮れた薄明かりのなかで食べるパスタは、春の芽吹きのエネルギーがそのまま凝縮したような甘くたくましい味がした。
スタート地点は湖に注ぎこむ小さな沢の横。まず林道を辿り、徐々に狭くなると、そのうちけもの道のような踏み跡になる。沢の渡渉を繰り返しながら、奥へ奥へと進んでいく。「何年か前に来たとき、畑(群落のこと)があったんだけどなぁ」。なかなか見つからないギョウジャニンニクは成長のスピードが遅く、根こそぎ採るとあっという間になくなる希少な山菜だ。食べられる大きさになるまで5年はかかる。自然のものを収穫するたび、その山菜を育んだ環境と年月に感謝したいなぁ、と味わいながら思う。
雪解け跡の日当たりのよい場所に芽吹く。大きな群落では一帯にネギの匂いが漂う
1.雪渓の周辺はとくによく探す。急斜面の上部にある場合、安全が確保できなければ諦めるのも大事。
2.名人はカッターで切りとる。カッターは刃を出したりしまったりするのが、ナイフより楽。
同じユリ科のカタクリに似た甘味もある。繊細な味を大事にするならシンプルに
1.根元のハカマを取り、軽く塩茹でしてから、食べやすく刻む。油でさっと炒めて、味を調える。
2.茹でたパスタと、味付けたギョウジャニンニクをさっと和える。火を通し過ぎないのがコツ。
<採集の注意>
人の手が入っていない場所では、根絶やしにしないように採る。翌年も生えるように根は残し、葉が1枚のものは採らない。ギョウジャニンニクは葉が2枚以上になるまで、6~7年かかるといわれている。茎が太いものを選び、同じ場所から全部摘み取らない。
○渡辺佐智(わたなべさち)
自然のなかで体を動かし、
おいしいものを食べることを愛する。
安全登山のための情報を
ウェブサイトでも発信
www.yamanosachi.jp
やまのさちサイトで番外編を公開中!
http://www.yamanosachi.jp/bangai.html
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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。
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