脂肪を燃焼するための基礎知識!体脂肪を味方につけて燃え体質に
- 2021年03月19日
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食欲抑制ホルモンも分泌!?体脂肪は敵ではない!
体脂肪と聞くと、「敵以外の何ものでもない!」と、思ってしまいがちです……。しかし、体脂肪は健康を保つうえで必要不可欠なもので、多すぎても少なすぎても、体にさまざまな弊害が発生します。
体脂肪の役割は、エネルギーの貯蔵と供給のみと思われがちですが、体温維持、内臓の位置を保つなど、生命を維持するうえで欠かせません。ほかにも、免疫力を高めたり、生活習慣病を予防したりと、健康維持に欠かせないホルモンの分泌にも関わっています。
また近年、食欲を抑制するホルモンなども体脂肪から分泌されることが明らかになっています。こういったことから、体脂肪は敵どころか必要不可欠な存在であることが理解できると思います。
体脂肪率が一桁自慢には危険がいっぱい!?
テレビなどで「体脂肪率が一桁」と語るアスリートが称えられることがありますが、これはあくまでもトップアスリートだから許される数値です。一般の人で体脂肪率が一桁というのは、あまりに低すぎる数値で、これでは免疫力が低下したり、女性であれば生理が止まったりと、深刻な健康被害が発生するリスクが高くなります。健康を保つためには、男性で10~15%、女性で13~20%を維持することが理想です。
体脂肪を敵と感じてしまう理由は「体脂肪をエネルギーとしてうまく使えていないから」です。つまり、代謝が低い、“体脂肪不完全燃焼体質”であるということです。代謝が滞ると、体脂肪だけではなく、糖などの外部からとり入れた栄養素を消費する能力が低くなるため、肥満や栄養不良など、さまざまな弊害をもたらすことになるのです。
ひとつでも心当たりがあれば要注意!あなたも体脂肪不完全燃焼体質かも…
ここで、“体脂肪不完全燃焼体質”の兆候や、陥りやすいシチュエーションをいくつかご紹介します。心当たりがある項目がひとつでもあれば、体脂肪不完全燃焼体質であることが疑われます。
■平均体温が36℃以下
体温が低い人は代謝が悪い証拠です。体脂肪燃焼だけではなく、肌をはじめとした組織すべての生まれ変わりのサイクル(新陳代謝)も滞っていることが考えられます。代謝を正常に保つには、体温を36℃の後半あたりを保つのが理想です。体温を上げるためには、筋肉量を増やすことが有効です。後半でご紹介するような自宅でできる簡単な筋トレでも効果が得られますので、体温が低めの人は定期的に行うようにしましょう。
■風邪をひきやすい
免疫力の低さと代謝には深いつながりがあることがわかっています。インフルエンザなどが流行し始めると、いち早く感染してしまうような人は、代謝が滞り、体脂肪をうまくエネルギーとして使えていない可能性大です。
■冷え性(寒さに弱い)
冷え性の人のほぼ100%が血行不良といっても過言ではありません。そして、血行不良は体脂肪不完全燃焼体質に直結します。その理由は、体脂肪を燃焼させるには、酸素が必要だからです。酸素を運搬する役割をもつ血液の巡りが悪くなると、体脂肪を燃焼させるのに十分な酸素が供給できなくなり、体脂肪燃焼が滞ってしまうのです。
■自律神経のバランスが崩れている
自律神経と代謝とは深いつながりがあります。実際、自律神経のバランスが崩れている人の代謝は低いことが医学的にもわかっています。自律神経は、交感神経と副交感神経という2つの神経系統で成り立っていますが、これらのバランスが崩れると、血流が滞り、代謝の低下を招いてしまうのです。夜型の生活をしている、朝食を食べない、強いストレスを感じることが多いような人は要注意です。心当たりがあれば、生活のリズムを整える、3食、栄養バランスの整った食事をする、リラックスできる時間をつくる、ゆっくりと入浴をするなどを心がけ、生活習慣を改善しましょう。
■長時間座っていることが多い
同じ姿勢を長時間とり続けると血流が滞ってしまいます。とくにデスクワークが多く、座る時間が長い人は要注意です。30分に1回(最低1時間に1回)は歩く、会社の階段を上り下りするなど、こまめに軽い運動をする習慣をつけましょう。
■ヤセている
意外かもしれませんが、ヤセているからといって体脂肪が燃えやすい体質とはいえないのです。基礎代謝は筋肉量に比例するため、筋肉量の少ない傾向にあるヤセ型の人は代謝が低下しやすいのです。また、体脂肪をエネルギーに変える場所は筋肉なので、量が少ない人は体脂肪をエネルギーとして使いにくく、スタミナも欠如してしまいます。ちなみに、人間は意識的に運動をしないと20歳前後をピークに、1年に1%ずつ筋肉量が減少するといわれています。そのため、定期的に筋トレを行うことは代謝を維持するうえで必須といえます。
■汗をあまりかかない
汗の量は代謝の良し悪しを判断するための好材料です。ただし、暑くもないのに汗を大量にかいたりする人は、自律神経のバランスが崩れているおそれもがあります。
■むくみやすい
代謝が低下すると余分な水分が体内に滞留することから、むくみやすくなります。午後になるとシューズがキツくなる、ソックスの跡がつきやすいという人は、代謝が低下気味であることは間違いありません。
■肌荒れや吹き出ものが多い人
肌はターンオーバーといわれる組織の生まれ変わりを繰り返していますが、代謝が低下すると、生まれ変わりのサイクルが崩れてしまいます。その結果、肌荒れなどの肌トラブルが発生しやすくなるのです。
筋トレ+有酸素運動の最強タッグで体脂肪を一気に燃焼!
ランニングのような有酸素運動は体脂肪燃焼効果がもっとも高い運動です。ただし、体脂肪燃焼効率を高めるためには、体脂肪の分解を促進するホルモンや酵素が必要量分泌され、有酸素運動前に血中に分解されてエネルギーとして使用できる状態になった「遊離脂肪酸」と呼ばれる脂質が放出されていることが条件となります。それを後押しするのが、筋トレです。筋トレを行った20分後に有酸素運動を行った場合と、有酸素運動のみを行った場合を比較すると、前者のほうが血中の遊離脂肪酸の量が多くなることが実験でもわかっています。そのため、ランニング(有酸素運動)をする20分くらい前に筋トレを行うことで、より多くの体脂肪をランニング中にエネルギーとして使えるようになるのです。
【実践】有酸素運動を行う約20分前に!体を体脂肪燃焼スタンバイ状態に導く
ここからは、ランニングなどの有酸素運動前に行うことで、体脂肪を燃やす準備を整えるのに効果的な筋トレをご紹介します。運動を始める約20分前に行うことが効果を高めるポイントです。
スクワット
15~20回×3セット
背すじをまっすぐにして立ち、両脚を肩幅くらいに開き、つま先は軽く開いておく。両手は胸の前で組んで目線はまっすぐ前を向ける。背すじをまっすぐにしたまま、ゆっくりと腰を真下へ落としていく。太モモと床が平行になるくらいまで腰を落としたら、ゆっくりスタートポジションまで戻す、つま先より前にヒザが出すぎないように注意しよう。
プッシュアップ
10~15回×3セット
両腕を肩幅よりやや広めに開き、ヒジをまっすぐに伸ばして、つま先を立ちで四つん這いになる。背すじを伸ばして、後頭部からカカトまでが一直線になるような姿勢をとる。体が床と平行になるくらいまでヒジをゆっくりと曲げていく。できるだけアゴを床に近づけることで、負荷を高められる。ラクにできるようになったら、胸が床につくまで上体を下げていこう。キツいようならヒザをついて行ってもOK。
シットアップ
10~15回×3セット
両脚を揃えて床に仰向けに寝る。ヒザは軽く曲げる。手の位置は後頭部に添え、頭を軽く持ち上げる。キツいようなら、手をまっすぐ前に伸ばしてもOK。床からへそをのぞき込むようなイメージで、背骨の一つひとつをゆっくりと床から離していく。勢いをつけずにゆっくり上体を起こしていくことを強く意識して行う。
ニーロウ
15~20回×3セット
背すじを伸ばしてイスに深めに座る。両手のひらを組んで片ヒザを挟む。そこから、背中を軽く丸めながら、片ヒザを軽く上方に持ち上げていき、そのまま体に引きつけていく。このとき、脚に力を入れ、抱えた手と拮抗する状態をつくる。脚をウエイトがわりにするようなイメージで、腕の力で脚を体に引きつけていくことがポイント。イスは背もたれがないものを使用しよう。
<監修>
医療監修
伊藤重範(いとうしげのり)
医療法人三九会三九朗病院循環器内科専門医・医学博士。心臓病や生活習慣病の運動療法、心臓病や生活習慣病を抱えた人たちのスポーツの取り組み方などの研究に取り組む、循環器内科専門医。ランニングをはじめとしたスポーツの愛好家でもある。
エクササイズ監修
澤木一貴(さわきかずたか)
パーソナルトレーナー。パーソナルトレーニングジム「SAWAKI GYM」代表取締役。1991年から、大手フィットネスクラブにてトレーニング指導を開始。その後、整形外科病院にてスポーツトレーナー課主任を歴任、メディカルフィットネス現場におけるリハビリ後の患者からトップアスリートに及ぶ、幅広いクライアント層へのトレーニング指導を経験する。現在は新宿区早稲田にパーソナルトレーニングスタジオをかまえ、指導にあたるかたわら、メディアや講演会を通じて健康情報を発信している。「1日3分 痩せトレ」(枻出版社刊)、「ランナー筋トレ」(枻出版社刊)、「衰えた体がよみがえる 最高最善の運動」(大和書房)など、監修・著者本も多数刊行している。
SAWAKI GYM⇒https://sg-personal.com/
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