ランニング初心者は要チェック!正しく走る基本は、「正しく立つ・歩く」
- 2021年05月21日
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ランニング初心者は姿勢を意識!
正しいランニングフォームを維持して走ることを意識しているつもりなのに、ランニングをすると体のあちこちが痛くなる。なかなかタイムがアップしない。そんな悩みを抱えているなら、一度、自分が普段、どんな姿勢で立ったり歩いたりしているかを思い起こしてみてください。普段、背中を丸めた状態で立ったり、座ったりはしていませんか?それを改善せずにいると、体は徐々にゆがんでいきます。体がゆがんだ状態では、正しいランニングフォームを意識しても、ランニング中にそれを保つことが難しくなります。
体のゆがみがランニングの伸び悩み、ケガの原因に…
体がゆがんだ状態でランニングを行うと、ランニングの最中に体は“代償動作”を繰り返します。代償動作とは、「ゆがみ修正しようとする動き」のことです。代償動作を行うと、筋肉や関節は無理な動きを強いられ、特定の筋肉だけが酷使されることになります。そしていずれは筋肉がアンバランスに硬くなり、硬くなった筋肉に骨が引っ張られることで、背骨や骨盤など、正しい姿勢を維持するうえで要となる骨格にゆがみが生じてしまいます。
さらに、悪い姿勢を修正しないままでいると脳がそれを正しい姿勢と記憶してしまい、いずれは自力では姿勢修正ができなくなってしまうことも……。
とくに、もっとも頻繁に行われる日常動作である「立つ」「歩く」ときの姿勢に問題があると、筋肉の硬化は加速度的に進行し、体のゆがみはさらに悪化するという“負の連鎖”が生じてしまいます。それを修正することなしにランニングを行うと、日常的に痛めつけられていた筋肉や関節がいずれは悲鳴をあげることに。つまり、ランニングをトラブルフリーで続けてくためには、正しく「立つ」「歩く」ことをマスターすることが重要といえるのです。とくにランニング初心者はフォームが安定しないことが多いため、本格的にトレーニングをスタートする前に、一度、自分の立ち方、歩き方を見直してみましょう。
ランニング前に体のゆがみをチェック!
正しく立つためにはどうしたらいいのでしょうか?それは、骨格のゆがみの状態をチェックして、それを矯正するエクササイズを行うことが有効です。では、ここで骨格のゆがみの状態をチェックをしてみましょう。
片脚で立って、骨格にゆがみがある人は体のバランスをとることが難しくなり、筋肉や関節への負担が大きくなります。また、骨盤のゆがみが顕著な場合、股関節の位置に左右差が発生し、足の開き方に左右差が出ます。ここから紹介するチェックで問題ありの人は、その後に紹介する矯正エクササイズを行ってください。
①片脚立ちバランス
片脚立ちで10秒間静止します。10秒以上まっすぐな状態で静止できない場合、骨盤がゆがんでいる可能性大。正面から見て肩と腰がほぼ水平であることが理想です。バランスどりがより難しくはなるが、目を閉じて行うとより正確に判断できます。
②仰向け足の開きチェック
仰向けになり、両足のカカトをつけて足を自然に開きましょう。左右の足の開きが均等で、開いた角度が80~90°程度が理想。角度がそれ以上に鋭角の場合は、骨盤が閉じすぎ、90°以上開くようなら骨盤が開きすぎです。また、どちらかの足が大きく開くような場合は、骨盤に左右差があることが考えられます。
ランニング初心者のフォーム崩れを防ぐ!
ここからは体のゆがみを修正するエクササイズを解説していきます。毎日行うことで、徐々に骨盤の位置が矯正され、ゆがみの原因となっている筋肉の硬さもとることができます。ここからご紹介するエクササイズを続けることで、ランニングフォームの崩れも徐々に改善していくはずです。
ちなみに、体のゆがみの根本から解決するためには、日頃から正しい姿勢をとることを意識しなくてはなりません。姿勢の悪さに気づいたら、背すじを伸ばすなどの修正をしていくことで、正しい姿勢を脳に覚え込ませることができるからです。ここでエクササイズに進む前に、体のゆがみをもたらす体の使い方のクセをチェックしておきましょう。
要注意!体のゆがみをもたらす体の使い方のクセ
□長時間同じ姿勢で座っている
□気がつくと猫背になっている
□いつも同じ側の脚を組む
□頻繁に頬杖をつく
□浅く座り、背もたれにもたれかかる
□下を向いて長時間スマホを見る
□片側に体重をかけて座る、立つ
□両脚を開いて座る
□横向きに寝る
□まくらが高すぎるまたは、低すぎる
□マットレスが硬すぎるまたは、柔らかすぎる
□寝返りがうてない姿勢で寝る
実践!体のゆがみ矯正エクササイズ
背骨を正常な位置に戻す「姿勢調整」
5~10回
背骨をひとつずつ動かす意識で姿勢を矯正するエクササイズ。まずは、頭頂が天井から引っ張られるイメージで立ち、肩と腕をリラックス。次に、息を吐きながら頭から腰部までを丸めながら前屈させていく。このとき、背骨をひとつずつ順に倒していくイメージで行うことがポイント。限界まできたら、軽くヒザを曲げて深呼吸して脱力する。ヒザを伸ばして骨盤を立ててから、元の姿勢へ戻る。
骨盤を正常な位置に戻す「骨盤ストレッチ1」
10回
骨盤の正しい位置の意識づけに最適なストレッチ。イスや段差に座り、腰に両手を当て骨盤をつかんだ状態からスタート。はじめに息を吐きながら骨盤をまっすぐ立てる。次に、息を吸いながら骨盤をゆっくり後ろに倒し、猫背姿勢になる。このときのポイントは、骨盤の動作に合わせて呼吸をしっかり行うこと。10回程度この動作を繰り返す。
骨盤のゆがみをとる「骨盤ストレッチ2」
左右交互に各10回
座った状態で行うエクササイズ。右脇腹を縮めるような意識で右側の骨盤を引き上げてから、ゆっくり下ろす。これを左右交互に行う。このとき、肩と頭の高さが大きく上下しないよう、骨盤だけを左右に動かすことが効果を高めるポイント。
体前面のストレッチ1
10秒間キープ×2~3セット
ヒザを腰幅に開いた状態でイスや段差などに浅く座り、両手を後ろにつく。次に、深呼吸しながら上体をゆっくり後方へと倒していく。首を後ろに反らせ、胸とお腹を気持ちいいと感じるところまで伸ばしたら、自然に呼吸しながら10秒間キープ。これを2~3セット繰り返せば、体前面の筋肉の柔軟性を取り戻せる。
体前面のストレッチ2
内回し、外回し、各1セット
股関節まわりの筋肉を柔軟にする、ヒザ回しストレッチ。左右のヒザで交互に大きな円を描きながら10歩前に進む。内回し、外回しと、各1セットずつ行おう。腸腰筋や大腰筋などの股関節の筋肉が機能するようになると、骨盤の位置も適正ポジションに戻すことができる。ウォーキングやランニングの前に行うとより効果的だ。
正しいランニングの基本は”正しく歩く”
正しいランニングフォームづくりの基礎となるのは、正しく歩くことです。正しいフォームで歩けない原因の一つは、すでに解説した体のゆがみですが、その逆も然りで、崩れたフォームで歩き続けると、体のゆがみがどんどん悪化してしまいます。
正しく歩くメリットは体のゆがみを防げることだけではありません。正しく歩くことで自分の意思では動かせないため、筋トレで鍛えることが難しい「不随意筋」と呼ばれる、体の深層にある筋肉を鍛えることができるのです。これは正しいランニングフォームを維持するうえでも非常に重要な筋肉です。こういったことからも、正しく走るためには、正しい歩き方を身に着けることが必須であることが理解できると思います。
正しく歩くためには“股の始点はみぞおち”ということを意識することが大切です。みぞおちは上半身と下半身を結んでいる大腰筋の始点でもあるため、みぞおちから下が脚だと思って脚を前へと踏み出すような意識で歩くだけで、背すじが自然とまっすぐになり、脚運びもスムーズになります。また、歩き出す前には、いったん太モモの真ん中あたりに両手を置いて骨盤を軽く前傾させ、再び上体を起こしましょう。これで軽い骨盤の前傾状態がつくれます。この態勢が整ったら、みぞおちから脚を前に踏み出します。この姿勢と脚の動かし方を常に意識して歩き続ければ、正しく歩き続けることができます。
1.みぞおちから脚を大きく動かす
みぞおちから大きく脚を前へ踏み出す。太モモ同士をぶつけるようなイメージで脚を振り出すと、股関節の動きがスムーズになる。
2.骨盤を立てて正しい重心位置を保つ
背すじを伸ばし、骨盤を立てた状態のまま上体を軽く前傾させる。重心は軽く前に出すイメージで。お尻と太モモの内側に力を入れて脚を振り出すことで体のブレを防げる。
3.ヒザはまっすぐカカトから着地する
着地はカカトから。カカト着地をすることで、ヒザが自然に伸びるため、ヒザへの負担が軽減できる。また、足指が伸び、土踏まずのアーチが形成されて足裏の衝撃緩衝機能が高まる。
初心者ランナーのランニングパフォーマンスを高める!
体がゆがむと、背骨の配列(アライメント)が崩れてしまいます。背骨の一つひとつが正しい位置に配列されていないと、歩いたり、走ったりするときの体の動きを微調整することができず、体のブレが大きくなります。さらに、背骨を柔軟に動かすことができないことから、上半身と下半身との連動性も失われ、正しいランニングフォームで走ることができなくなってしまいます。
アライメント矯正エクササイズ
アライメントの崩れを修正する最善策は、背骨を動かすこと。ここで紹介する背骨調整エクササイズは、背骨を伸ばし、大きく動かすことで、骨の一つひとつの配列を調整できるエクササイズです。これを歩く前やランニング前に行えば効果絶大です。
ドローイン
10秒×3セット
背すじをまっすぐにした状態で、肋骨の真下付近に手を添えて、腹の真横付近にある外腹斜筋と、前側にある内腹斜筋の位置を確認する。腹式呼吸で息を吸ったときにお腹を膨らませ、吐いたときに凹ます。最後に息を細く長く吐きながらお腹を思い切り凹ませる。
ヒジ回し
前後各4回×1セット
片手を肩にのせ、ヒジで円を描くように前方へ回す。ヒザを軽く曲げて行うと、より大きな円が描けて効果的だ。前回しを4回終えたら、次は後ろ回しを4回。反対側も同様に行い、背中と背骨をしっかりほぐしていこう。
しらかばのポーズ
5秒間キープ×2セット
両脚を揃えて、両腕を耳につく位置まで上げる。下腹部と尻に力を入れ、両腕を真上に思い切り伸ばし、背骨を伸ばす。背中を反らさずに、ヒザを少し曲げて5秒間キープ。この体勢が難しい人は、壁を支えにして行ってもよい。
<監修>
園原健弘(そのはらたけひろ)
株式会社ラバ・チューブ代表。バルセロナ五輪競歩代表。ウォーキングプロデューサー。一般社団法人日本ランニング協会マスターインストラクター兼テクニカルディレクター。世界陸上3回連続出場、箱根駅伝2回出場など、競技者としての経験をベースに健康づくり、ダイエット指導、モデルウォーキング指導、アスリート指導など、幅広い分野で活躍中。
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