年越し恒例!108回の太陽礼拝で得られるもの
大嶋朋子
- 2019年12月19日
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除夜の鐘を太陽礼拝に代えて
大晦日の深夜にお寺から聞こえてくる除夜の鐘。人の煩悩の数とされる108と同じ数だけ鐘をつくことで、煩悩を持ち越さずに新しい年を迎えようとする、日本仏教の行事。同じく仏教と距離が近いヨガ業界では、鐘撞きを太陽礼拝に代えて、太陽礼拝(サンサルテーション)を108回繰り返すというイベントが、年末あちこちで催される。その目的もまた煩悩を払うこと。
そもそも太陽礼拝って?
吸って両手を上げ、吐いて深い前屈、吸ってヒザを伸ばしてジャンプバック、吐いてチャトランガ…と、呼吸に合わせて12の動きをつなげていくシークエンス。一つの呼吸に一つの動作を連動させるヴィンヤサ系のクラスなら、おそらく序盤に必ず行う太陽礼拝。
その始まりは、長いヨガの歴史の中ではごく最近のこと。約100年前のインドにて、若者の体力増強のためにクリシュナマチャリアが現在の型へ整え、その弟子、アシュタンガヨガの創始者パタビジョイスらが自らのヨガの中で体系化したとされる。サンスクリット語で、太陽(スーリヤ)に感謝を捧げる(ナマスカーラ)との意味もあり、朝に行うと体を目覚めさせて一日を元気よく過ごせるとも言われている。
前屈後屈で背骨にアプローチ
主に前屈、後屈系のポーズの組み合わせで、健康の要である背骨の動きにアプローチ。流れるような動きの中で使われる筋肉は全身に及び、しっかりと筋肉の緊張と弛緩を繰り返す。有酸素運動である上、血流などの巡りがよくなり、神経も研ぎ澄まされていく。最近ではアスリートのトレーニングにも一部が取り入れられるなど、その効果はお墨つきのようだ。
煩悩を払うために必要なこと
気づけば、〇〇がほしい、△△が苦手、もっと□□だったらいいのに…と、私達の頭の中は欲がいっぱい。ヨガをしている最中だって、「練習の後にあれを食べに行こう」とか「自分だけこのポーズができてないのが嫌だ」など雑念が次々と浮かび、実はあまり集中できていないなんてことも。
煩悩を太陽礼拝でどう洗い流すのか?
イベントならチャンスは108回。「次に何をする?」がわかっているからこそ入りやすいゾーンがある。「集中」だ。
きっと最初はコントロールが必要。108回繰り返すために体力を温存しつつ動き出し、でも太陽礼拝は型が決まっているから次の動きを予想する必要などなく、今すべきことに意識を向けるうち、頭も心も静かになっていく。
やがて、回を重ねるごとにより動いていく体、その動きをより深める筋肉の繊細な呼応までを感じ、呼吸とともに自在に動く感覚に身を任せながら、自分の意識と体の一体感みたいなものに気づいていく。
その瞬間にあるのはただ集中のみ。「あ、雑念に支配されないってこんなに楽なんだー」。そんな解放感に包まれたら、煩悩払いのミッションは達成できたかも。
リズム運動でセロトニンがUP
太陽礼拝を繰り返す利点はさらに。吸うと吐くにのせて決まった12の動きを繰り返す過程で、一定のリズムが生まれる。この一定のリズムを刻む運動が、セロトニンを増加させるという。
セロトニンは、感情のコントロールや精神の安定に深くかかわる脳内の神経伝達物質。低下すれば心のバランスを保つことは難しい。例えば、ランやスイムなど、単調な動きを継続する有酸素運動にセロトニンを増やす効果があることがわかっていて、ヨガもその一例。落ち着きを得た心は、さらなる集中と充足感へと導いてくれる。
三度の飯よりサンサルテーション⁉
ヨガの基本中の基本、太陽礼拝にこれほどのメリットがあったとは!ヨガを継続する人にとっては、もしかしたら日々の食事よりも、自分の名前を書くよりも多くの太陽礼拝を人生の中で行っているかもしれないわけで、その恩恵を得る機会は多分にある。年の終わりのリセットとしてだけでなく、新しい年の日々の練習でも集中への助走として生かしてみたい。
Text=内池朋子
女性誌編集者を経てRYT200を取得。ヨガやアロマテラピーなどを取り入れた心地よいライフスタイルを発信。
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Text=内池朋子
女性誌編集者を経てRYT200を取得。ヨガやアロマテラピーなどを取り入れた心地よいライフスタイルを発信。
Photo=樋口勇一郎
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