現代医学から見るヨガで健康になる六つの力とは?
大嶋朋子
- 2019年12月25日
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健康の鍵は呼吸と自律神経
ヨガをする醍醐味の一つは瞑想。心を平穏に保ち、意識を集中して、やがて瞑想状態にたどり着くには、外枠の肉体が健康でないとなかなか難しい。では体の健康に特に大事なのは?石井先生によれば「呼吸と自律神経」だという。
医学的に見ると、ヨガと切り離せない呼吸は自律神経をコントロールする方法とも言えるそう。呼吸を自由に行って自律神経を自在に操るためには、呼吸をスムーズに安定して続けられるだけの呼吸筋が鍛えられていないといけない。さらに、姿勢を長い時間保つため、背骨を支える脊柱起立筋や骨盤底筋などの筋力も必要。
アーサナ(ポーズ)を通してそうした筋力アップができるヨガだが、さらなる健康へのアプローチがあるらしい。六つの視点から見ていこう。
01 オン・オフ力
1回のヨガクラスのメリットは、オンとオフのメリハリがあること。ポーズに向かいダイナミックに体を動かす“オン”と、動きを止めて力を抜く“オフ”が使い分けられ、自律神経の総合力をアップさせるアプローチになっている。交感神経が優位になるオン時と、副交感神経が優位になるオフ時。対照的な二つのシーンを組み合わせることで自律神経のバランスが整いやすくなる。
02 意識力
例えば、マシントレーニングで太ももを鍛えようとすると、多くの場合は太モモだけにアプローチする動きになってしまう。一方、ヨガのアーサナでは立位も座位も後屈も前屈も、全身の筋肉を使いながら体を動かしていく。全身を使うということは、体の隅々まで意識が広がっているということ。体の先端まで気づくことは脳の活性化にもつながっていく。
03 呼吸力
ヨガは最終的に瞑想へ向かっていくが、一定の意識状態を保ちながら長時間座って行うにあたり、脊柱起立筋や骨盤底筋などの筋力が必要。そして、静かな心を保てるように、安定した呼吸を続けていくための呼吸筋も必要になってくる。一呼吸一動作で進んでいくヨガでは、吸う息と吐く息に合わせて体を動かし、ポーズを保持する間も呼吸を続ける。呼吸を感じながら体を動かすことで、呼吸に必要な筋肉が鍛えられているという側面もあり。
04 自律神経力
練習を通じて筋肉を鍛えられることで、アーサナが上達すると同時に、筋肉中に含まれる血管と自律神経も鍛えられる。まさに一挙両得! 血液の代謝が上がって血管を強くすることもできるし、平坦な坂道を走るよりもアップダウンが激しい道を走るほうが鍛えられる自律神経については、オン(ハード)とオフ(緩やか)でメリハリのあるアーサナが繰り返されることにより総合力を高めることができるのだ。
05 引き上げ力
流派によりポーズの取り方に多少の違いはあるが、オーソドックスなハタヨガでは、骨盤底筋を体の中心に向けてグイっと引き上げるように行う。この動作はインナーマッスルを引き締めるだけでなく、外に向きがちな意識を中心にとどめることにも効果的。体の中心への意識はチャクラの流れる方向ともいえるし、骨盤底筋から背骨を沿うように引き上げられる力は、中枢への自律神経の流れとも合致。神経の流れを整えるのにも理にかなった、筋肉と意識の使い方だという。
06 みんな力
今や‟みんな力“は介護のデイケアなどでも採用され、認知病予防に効果があると評判。医学的にはミラーニューロンネットワークと呼ばれ、皆で何かを一緒にやると、多くの人が取り組んでいる様子を目にできて達成感が倍増するというメカニズム。スポーツ合宿などで和気あいあいとなるのは、ツラい練習を乗り越えた仲間の姿を見ることで達成感がアップすることが関係している。一人でヨガをするのもいいが、クラスに参加して皆でヨガをするメリットは大きい。
体のすべてを研ぎ澄ませて
この六つの力からわかることー。呼吸と自律神経への働きかけはもちろん、アーサナでは、筋肉だけでなく血管や骨の強化が期待できるし、五感や脳も大いに使われている。全身どころか、人が持ち得るすべての機能をフル稼働させるような取り組み。筋肉も感覚も研ぎ澄ませながら健康な体へと導いてくれる。
監修=石井正則
いしいまさのり。医師。JCHO TOKYO新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科臨床部長。スタジオ・ヨギー公認インストラクター。テレビや雑誌などさまざまなメディアでヨガと医療の接点を医学的、科学的に紹介している。
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監修=石井正則
いしいまさのり。医師。JCHO TOKYO新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科臨床部長。スタジオ・ヨギー公認インストラクター。テレビや雑誌などさまざまなメディアでヨガと医療の接点を医学的、科学的に紹介している。
Photo=樋口勇一郎/藤村のぞみ Text=内池朋子
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