股関節のツライ痛みに効く動的ストレッチ!下半身まわりのリセット法とは
YOLO 編集部
- 2019年12月03日
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運動する機会が減ると、体(筋肉)はどんどん硬くなる
人には、誰かに必要とされたり認められたいという欲求があります。必要とされると、もっと頑張ろうと思ったりもします。これを承認欲求と呼びますが、実は筋肉にも似たようなところがあるのです。筋肉は強い負荷をかけられると、もっと強くなろうと筋肥大するなどして筋力アップしますが、負荷をかけられない(=使われない)筋肉は硬くなり、衰えてしまいます。まるで必要とされない人間が、スネてやる気をなくしていくように……。
これではいざ動かそうとしても、筋肉はスムーズに伸縮しないでしょう。子どもの運動会に参加したお父さんが徒競走で転んでしまうのは、筋肉が硬くなり、思いどおりに動かなかったためかもしれません。
また、よく「歳をとると体が動かなくなる」ということを耳にしますが、この原因の一つは筋肉の衰えにあります。筋肉量は20代をピークに減少していくことがわかっています。とくに40代からの減少はいちじるしく、筋力の低下を感じる場面も増えてくるはず。下の図1によると、大腿四頭筋(太ももの前にある筋肉群)は年1%も減少しています。
つまり、今30歳の人は80歳になったとき、太ももの太さは半分になっているということ。しかし同時に、トレーニングをすることでその減少率が軽減されることもわかっています(図2)。
したがって、いつまでも健康な体でいるためには、今のうちから動的ストレッチを習慣的に行ったり、休日には体を動かしたりするなどして、筋肉がスネてしまわないように使ってあげることが大切になります。そうすれば、いつまでも健康で若々しい体をキープできるでしょう。
下半身の筋肉が衰えていくと、さらに不都合なことが……。
「わかってはいるけれどできないこと」をアンケートすれば、間違いなく運動は上位に入ってくるでしょう。運動不足による下半身の筋肉の衰えは、私たちの体にさまざまな不都合をもたらします。
そもそも、人間の筋肉量の約70%は下半身に集まっています。運動をしないこと、すなわち歩いたり走ったりして下半身の筋肉を使わないことは、自分の筋肉の約70%分を真っ先に衰えさせることになるのです。
下半身の筋肉が衰えることでまず起こるのは、運動意欲の低下でしょう。階段より並んででもエスカレーターに乗り、電車では真っ先に空席を探すというような行為が当たり前になり、活動代謝量が低下します。
すると、ますます筋力は衰え次第に基礎代謝量も低下。活動代謝量と基礎代謝量が低下するということは、1日の総消費エネルギー量が減少するので、当然太りやすくなります。太りやすくなれば、食事制限をするか運動をしなければ、体に脂肪が蓄えられていきます。つまり肥満です。肥満は生活習慣病のリスクを増大させる主要因とされています。もうこの先は言うまでもないでしょう。
「基礎代謝」と「活動代謝」とは?
「基礎代謝」とは、人間が生きていくために最低限必要なエネルギー量のことであり、部屋で寝ているだけでもこのエネルギーは消費されます。1日の総消費エネルギー量の60%程度を占めています。
「活動代謝」とは、生活の中で消費されるエネルギー量で、毎日の通勤や運動などのエネルギーがそれに当たります。1 日の総消費エネルギー量の30%程度を占めています。
考え方はとてもシンプルで、食事から摂取するエネルギー量と総消費エネルギーのどちらが多いか?ということです。前者が多ければ余った分は脂肪として蓄えられ、後者が多ければ脂肪が分解されエネルギーとして利用されます。つまり、下半身の筋肉量を維持して基礎代謝量や活動代謝量を落とさなければ、太りづらい体質へ近づくということ。残りの10%は食べたものを消化する際の代謝で、変動幅は少ないので意識する必要はありません。
健康でいたいのなら筋肉を動かすしかないのです。まずはこの動的ストレッチで下半身の筋肉を動かすことを習慣化して、運動が億劫でなくなることを目指してみてはいかがでしょうか。
股関節まわりの筋肉をリセットして足腰を軽く
人間は誰に教わることもなく生まれて一歳程度で歩き、二歳になるころには走ることもできるようになります。この人間の直立二足歩行を可能にしているのが、股関節です。
股関節が正常に働かなければ、正しく歩くことができません。実際、股関節まわりの軟骨が摩擦や加齢によってすり減り、歩くたびに股関節に痛みをともなうことや、骨粗しょう症などで骨がもろくなった高齢者が転倒したはずみで股関節周囲の骨にヒビが入り歩けなくなるなど、股関節のケガや病気による歩行障害は数多く報告されています。
股関節はどこにある?
股関節は骨盤と太ももの骨(大腿骨)をつなぐ関節で、上半身と下半身を連結しています。つまり、直立二足歩行時に上半身の全体重は股関節が支えていることになるのです。また、股関節は球関節と呼ばれ、大腿骨側の骨の先端が球状になっており、骨盤側の骨にハマるようになっています。
歩行動作にかかわる主な筋肉
大腰筋(だいようきん)
ヒザを引き上げる動作で働きます。この筋肉が衰えると、ちょっとした段差でつまずいてしまうことも。
大腿直筋(だいたいちょっきん)
骨盤から股関節をまたいでヒザまでつく長い筋肉。歩行時に足を前に振り出す動作で働く大切な筋肉です。
大臀筋(だいでんきん)
お尻の真ん中にある大きな筋肉で、地面を踏み込む時などに働きます。加齢とともに衰えやすい筋肉の一つです。
中殿筋(ちゅうでんきん)
お尻の横にある筋肉。歩行時、地面についていない方の骨盤を横から支えて水平に保ちます。
今、この記事を読んでいる人は、自身の足でしっかり歩くことができるでしょう。しかし、運動不足が続いて下半身の筋力が衰えると、股関節を正常に機能させることができなくなるかもしれません。だからこそ、元気な今のうちからできるだけ下半身を動かし、股関節や骨盤まわりにある筋肉を動かしておくことが大切なのです。
休日こそ動いて筋肉をほぐすのが正解
平日の疲れを取るために、「週末はのんびり家で過ごす」という人は多いでしょう。にもかかわらず、週明けの月曜日も「朝から体がダルい……」という人が多いのも、また事実です。これは、休日に体を動かさなかったことで、筋肉がほぐされないまま月曜日を迎えてしまったことが原因の一つだと考えられます。
硬くなった筋肉は、放っておいてもほぐれません。たとえば平日はデスクワークで1日中猫背だったとして、疲れたからと休日まったく動かずに家で過ごしていると、平日と同じような座った姿勢で休日も過ごしてしまうことになります。これでは、筋肉にとって平日も休日もない状態と同じ。硬くなった筋肉は硬いままであり、仕事の疲れは解消されづらいのです。
休日におすすめの「アクティブレスト」
休日に仕事の疲れを癒すためには、仕事で硬くなった股関節まわりの筋肉を意図的にほぐしてあげる必要があります。そこでおすすめなのが、休日に体を動かす「アクティブレスト」という休養方法です。
下図を参考にムリのない範囲内で運動をすれば、疲れを取るだけでなく肥満予防にもなり、生活習慣病のリスクを下げることにもつながるでしょう。
運動におけるメッツ指数
運動代謝量を推定するにはメッツを利用しましょう。メッツ指数がわかると、運動時の消費エネルギー量を導くことができます。
たとえば、体重60キロの人がサイクリングを30分おこなった場合は、「1.05×8×0.5(h)×60(kg)=252kcal」です。
股関節まわりの硬さがわかる自己診断メニュー
あなたの股関節はどのくらい硬くなっているでしょうか?肩こりのようにわかりやすい痛みなどがなくても、体にとっては大きな問題です。ここでは股関節の柔軟性をチェックする方法を紹介します。
【TEST1】足を前後に開いて、ヒジを床につける
床につく!
ヒジが床につく人は股関節がとても柔軟である可能性が高いです。しかし、筋肉は使わないと硬くなるので、定期的にストレッチや運動をして柔軟性の維持に努めましょう。
足首までなら
曲げたヒジが足首あたりまで下がる人は、ギリギリ合格ラインです。しかし、放っておくと硬くなる可能性があるので、意識的に股関節まわりをほぐしておきましょう。
スネまでなら
スネの高さまでしかヒジが下がらない人は、股関節がとても硬い可能性があります。しっかりと股関節まわりのストレッチを行いましょう。。
【TEST2】両足を倒して座り、両ヒザを床につける
ペッタリつく!
お尻を浮かせることなく、両ヒザを床につけられる人は、股関節が柔軟な可能性が高いです。この姿勢は、一般的には女性の方が得意な傾向にあります。
お尻が浮く
ヒザはつくけどお尻が浮いてしまうという人も、股関節がやや硬い可能性があります。一般的に股関節は男性の方が硬いですが、男性でもこのレベルまではクリアしたいところです。
ヒザが浮く
写真のようにヒザが浮いてしまう人は、股関節が硬い傾向にあります。股関節のストレッチを重点的に行って柔軟性の向上に努めましょう。
股関節まわりの動的ストレッチメニュー
ストレッチ1「ダンゴムシとエビ」
股関節の前後の筋肉を動かすことが狙いです。1のポーズでは、お腹側の筋肉を使いながら脚を引き寄せることで、背中側の筋肉が伸びます。逆に2のポーズでお尻の筋肉を使いながら脚を伸ばすことで、お腹側の筋肉が伸びます。この動作を交互で行えば、腰まわりも改善されていくでしょう。骨盤は傾けずまっすぐに保ちましょう。
【回数の目安】左右5回ずつ
【ポイント】丸まって背中側を、反ってお腹側をストレッチ
(1)おでことヒザを近づける
おでことヒザは無理につける必要はなく、近づけるイメージで。腰からお尻にかけての筋肉が伸びればOKです。
(2)脚をまっすぐ後ろに伸ばす
お尻と太もも裏の筋肉を使って、曲げていた脚をまっすぐ後ろに伸ばします。足裏を天井に向けるようにまっすぐ伸ばすのがコツです。
ダンゴムシとエビの注意点
お尻や太もも裏の筋肉を使って脚をまっすぐ伸ばしましょう。お尻などがサボると斜めに傾いてしまうので注意です。
ストレッチ2「花火」
ヒザの曲げ伸ばし動作は、太ももつけ根の筋肉を働かせます。この動作をくり返すことで、体幹と脚のつながりが生まれます。普段の生活では意識しづらい部位なので、ムリのない範囲で続けてみましょう。
【回数の目安】7回
【ポイント】ヒザの曲げ伸ばしをリズミカルに行う
(1)後ろに両手をつき足を床から離す
ヒザを曲げ、両脚を揃えて床から離します。お腹を同時に鍛えたい人は、写真右のようにヒザを抱え込みましょう。
(2)両手をついたままヒザを伸ばす
腕に体重をかけながらバランスを取り、ヒザをまっすぐ伸ばします。写真右のように両手両足を広げれば、腹筋のトレーニングにもなります。
花火の注意点
ヒザの曲げ伸ばし動作で股関節まわりの筋肉を動かすことが狙いのため、ヒザはできるだけ伸ばすように心がけましょう。
ストレッチ3「エアサイクリング」
ヒザを上げる時は、太ももつけ根の筋肉を動かすイメージで行いましょう。この筋肉は歩行動作でとても大切です。エアサイクリングでしっかり動かしておけば、硬くなった筋肉がほぐれ、より長く健康的に歩けるようになります。
【回数の目安】20回
【ポイント】左右の脚をリズミカルに入れかえる
(1)座面の端をつかみ片方のヒザを上げる
両足の裏を床から離して、さらに自転車のペダルを回すように片方のヒザを上げる。背すじを伸ばして、正しい姿勢を保ったまま行いましょう。
(2)姿勢を維持したまま脚だけを入れかえる
フッフッフッと息を短く吐きながら、太ももつけ根を使ってヒザの上げ下げをくり返します。体の軸はまっすぐに保ったまま行いましょう。
エアサイクリングの注意点
ヒザをしっかり引き上げるほど股関節まわりの筋肉が働くので、指先ではなくヒザを上げるようにしましょう。
ストレッチ4「カエルとウマ」
カエルの姿勢では内ももの筋肉が、ウマの姿勢では太ももの後ろ側やお尻の筋肉が狙いになります。二つのストレッチを交互にくり返して、効率よく股関節まわりの筋肉を動かしましょう。当然どちらも股関節の働きにかかわる大切な筋肉なので、しっかりほぐすことが大切です。
【回数の目安】10回
【ポイント】カエルとウマをゆっくりと繰り返す
(1)足首をつかんでお尻を落とす
ヒジでヒザを外側に押しながらお尻を落とします。体が硬い人はできる範囲内でOKです。写真右のように、背すじを伸ばすことで内ももにも効果があります。
(2)足首はつかんだままヒザを伸ばす
自分のおへそを見るように頭を下げます。ヒザをまっすぐ伸ばすことが困難な人は、伸ばせる範囲内でOKです。
カエルとウマの注意点
カエルのポーズでは、顔が下がってしまうと内ももの筋肉が伸びないので注意しましょう。
ストレッチ5「四股踏み」
運動の基本でもある四股踏み動作は、下半身全体の筋肉が働くため、動的ストレッチでありながら筋トレとしての効果も高いです。下半身の筋肉がしっかり働くようになれば、立つことや歩くことなど日常生活の多くの動作がラクになり、いいことずくめです。
【回数の目安】左右交互に10回
【ポイント】背すじを伸ばしたまま四股を踏む
(1)足を大きく開いて両手を胸の前で合わせる
ヒザを軽く曲げながら、お尻を突き出すようにして上体を起こします。猫背にならないように姿勢を正しましょう。
(2)猫背にならないように姿勢を正す
股関節を曲げて姿勢をキープし、足を着地させたらヒザを深く曲げて、お尻をできるだけ落としましょう。
四股踏みの注意点
背すじを伸ばすことでお尻がしっかり落ち、股関節にかかわる筋肉をほぐすことができます。猫背にならないように注意しましょう。
意識しないとなかなか動かせない股関節まわりを、しっかりほぐすための動的ストレッチ。毎日ちょっとずつ実践することで、動かなかった体がスッと楽になるはずです。ぜひみなさんも試してみてください。
出典:『驚異の動的ストレッチ』(監修:中里賢一/スポーツマッサージ MARKS代表)
ライター:YOLO編集部(友廣)
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