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正しい走り方を効率的に体得できる!“スロージョグ”のすすめ

正しい走り方を身に着けるなら、ゆっくり走る!

自分が正しく走れているかは気になるものです。なかには、それほど距離を走ったり、毎日走るわけではないので、それほど走り方=ランニングフォームには気を遣っていないという人もいるかもしれません。しかし、ランニングフォームに問題があると、体への負担が大きくなり、ケガをしやすくなります。ダイエットを目的で走っている場合は、ダイエット効果がダウンすることも……。つまり、どんな目的で走るにせよ、正しい走り方をマスターすることは必須といえるのです。

ここで知っておいてほしいのは、本当に正しい走り方を身に着けたいなら、スピードを出して走らないということです。たとえランニング歴が長かったとしても、ランニングフォームを見直したいと思ったら、一度スピードダウンを。具体的には、ランニングと速足ウォーキングの中間くらいのスピードで走る“スロージョグ”がおすすめです。

記録更新を目標にしているという人の場合、どうしてもスピードを上げたいという気持ちになりがちです。しかし、「急がば回れ」の気持ちを持つことが大切です。正しいランニングフォームで走ることができていなければ、いずれはケガをしたり、タイムも伸び悩むことになるからです。

正しく走るメリット

ケガのリスクが軽減する

体への負担を大きくする体の前後左右のブレが少なくなり、関節や筋肉への負担が大幅に減少し、ケガのリスクを減らせます。

インナーマッスルが鍛えられる

体が正しい動きをすることで体の深層にあるインナーマッスルを刺激することができます。インナーマッスルが鍛えられることで体の安定感を高めることが可能となります。

タイムロスが減る

正しい着地ができることで、体の動きのゆがみを修正するときに生じる動きである“代償行為”と呼ばれる無駄な動きがなくなります。その結果、タイムロスを減らすことができ、自然と速く走れるようになります。

スタミナを維持できる

体の無駄な動きを減らすことは無駄なエネルギーの消費を減らすことに直結します。そのため、エネルギーが温存可能となり、長時間にわたりエネルギー切れを起こすことなく走れるようになります。

筋疲労が起きにくくなる

地面の反力を利用して弾むように走ることで接地時間が短くなり、筋肉への負荷を減らせます。その結果、自然と速く走れるようになります。また、筋肉への疲労蓄積スピードも遅くすることができるため、長時間にわたりラクに走れるようになります。

脚運びがスムーズになる

正しいランニングフォームをつくると、骨盤が軽く前傾します。すると、脚を股関節から動かして脚を回転させられ、太モモを無理に高く引き上げなくても体を前へと進められるようになります。これで脚運びがスムーズになり、地面を強く蹴らなくても前へ進めるようになります。

ピッチが上がる

正しい走り方をすると、脊髄反射のひとつである「伸張反射」の反応スピードが上がります。その結果、ピッチ(脚の回転速度)が上がり、自然と速く走れるようになります。

走り方の問題点を確認しながら走れるスピードで走ろう

スロージョグ最大のメリットは、フォームを確認しながら走ることができるという点です。通常のスピードでのランニングではフォームの崩れに気づくことは難しいのです。いっぽうスロージョグなら、フォームの崩れに気づくことができ、さらに走っている最中に修正を行うことができるのです。

スロージョグを行うときに気を遣うべき点は、着地の仕方と体の軸の位置です。足裏のどこで着地をして、体の軸は正しい位置に保てているかを一歩一歩確認しながら走りましょう。最初は10分/km程度のゆっくりペースのウォーキングからスタートして、徐々にギリギリ足が浮かない程度にまでスピードを上げていきます。しばらくそのスピードで走ったら、さらに心拍数が120拍/分以下に抑えられるスピードで走り続けましょう。これを繰り返すことで正しいフォームや心肺機能が高められるだけではなく、地面からの反発力(地面反力)を使った、弾むような軽快な走りができるようになります。

2~3カ月はスロージョグメインのトレーニングにして、フォームが改善をできたと感じられたら、徐々にスピードを上げていくようにしましょう。

正しい走り方の基本は、「2軸&アウトエッジ着地」

正しい走り方の基本は、着地は足裏の外側から着地する「アウトエッジ」で、体の軸は2軸を維持することです。そして、着地位置はちょうどみぞおちの下あたりにくるようにします。また、着地したときのつま先はまっすぐに、進行方向を向いた状態をキープすることを意識しましょう。

ペースは前述のとおり、心拍数を120拍/分以下をキープできる程度のスピードで走りましょう。ただし、フォームは体がツラくなるとどうしても崩れてしまいます。そのため、正しいフォームを意識できなくなってきた、修正しようとしても体が思いどおりに動かないと感じたようなときには、ペースを落とす、またはトレーニングを終了させましょう。

1.2軸走法で体のブレを最小限に

両肩からつま先まで、それぞれ1本ずつ軸が通っているようなイメージで走ります。その軸が曲がらないようなイメージで脚を前に進めていきます。竹馬に乗って前に進んでいくことをイメージするとわかりやすいかもしれません。道路に引いてある白線の両端をまたぐようにして走ると2軸で走る感覚をつかむことができます。

2.腕振りは最小限に

腕を大きく後ろに引くのではなく、軽くヒジを曲げて「ハ」の字を描くようにして肩に力を入れずにリラックスして振りましょう。これで肩甲骨を使った、パワーロスの少ない走りができるようになります。肩を上げて腕振りをする人を見かけますが、これはNGです。

3.アウトエッジで着地する

つま先をまっすぐにしたまま着地をするようにすると自然と足裏の外側から着地できるようになります。これをマスターすれば、着地時の足のゆがみがなくなり、走りの安定感が高まります。

前太モモ(大腿四頭筋)とふくらはぎにハリが出やすい人は正しく走れていない可能性大です。前太モモとふくらはぎの筋肉が体の動きの修正時にもっとも使われる筋肉だからです。いっぽう、正しく走れている人は、お尻の筋肉(でん筋)と太モモ裏の筋肉(ハムストリングス)が発達している傾向が強くなります。

アウトエッジ着地とは?

アウトエッジ着地とは、足裏の外側から着地し、スムーズに拇指球(足の親指)へと体重が移動して蹴り出しに至る方法です。この着地方法ができていれば、つま先も自然と前を向いた状態をキープできます。

正しい走り方を身に着けたら次のステップへ!

スロージョグだけではスピードアップをすることは困難です。そのため、ここではスロージョグにプラスして行ってほしいトレーニングを解説します。4つのトレーニングをスロージョグと並行して行うことで、正しい走り方をより効率的に体得させられるとともに、より速く、ラクに、長く走ることができる体をつくることができます。

スピードアップにつながる!+αのエクササイズ

1.下り坂トレーニング

一般的に「坂道トレーニング」と聞くと、上り坂を一生懸命上るイメージを持つ人が多いと思いますが、じつは速く走る力をつけるには下り坂がおすすめなのです。普段よりもスピードが自然と出てしまう下り坂を走ることで、スピードに体を慣らすことができるようになります。また、スピードアップに必要な筋肉も鍛えることができます。スロージョグと組み合わせてもOKです。

勾配5%ほどのゆるやかな坂道を、100mほどスピードにのって走る。このとき、体を後傾(胸を反らしたり、腰を落とす)させないよう注意する。できる限り、平地でのフォームを維持することを心がけよう。

2.なわとび

なわとびは地面反力を使って走るうえで重要な「伸張反射」を高める効果があります。筋肉が伸びた状態から、すばやく縮んだ状態へと戻ることで、体を前へ押し出す力を高められるからです。下り坂トレーニングと組み合わせるとより高いトレーニング効果を得ることができます。

背すじを伸ばした状態で、ヒザはあまり曲げず、地面反力を使って両脚で高くジャンプをする。走る前に30秒間行おう。なわとびがない場合は、その場ジャンプでもOK。そのときも、ヒザをあまり曲げずに行うことが効果を高めるポイント。

3.上り坂バウンディング

スピードアップに必要な瞬発力を高められるトレーニングです。これを上り坂で行うことで、柔軟性のある背筋をつけることができます。坂道でバウンディングを行うことで、より大きく肩甲骨を動かし背筋を使えるため、通常の筋トレよりも、肩甲骨の動きを妨げない、しなやかな筋肉をつけられます。

腕を大きく振り、左右の片脚で力強く地面を蹴って、より高く、より遠くへジャンプするように進む。これを20~30回×5セット行う。

4.ウォークラン

いわゆる“競歩”のイメージで歩きましょう。ただし、実際の競歩とは異なり、地面から両足が浮いてしまってもOKです。“走り”になるギリギリのスピードで行うことで、動作コントロールに使われる筋肉が効率よく鍛えられます。また、アウトエッジ着地法も自然と身に着けることができます。

背すじを伸ばしてヒジを軽く曲げて肩甲骨を動かすことを意識して腕を大きく振りながら前に進んでいく。このとき、アウトエッジで着地をし、拇趾球へと体重が抜けていくような体重移動を心がけよう。400mウォークランと400mジョグを10分間交互に繰り返す。

<監修>
新田幸一
高地トレーニングを街中で体験できるスタジオ「ハイアルチ」の開発者であり、プロデューサー。長年のトップアスリートたちへの指導経験を活かし、高地トレーニングの効果を最大限に引き上げるメニューを構築。現在は、浦和レッズの槙野智章選手をはじめとしたトップアスリートのほか、大学駅伝の選手たちのトレーナーも務めている。

ハイアルチ⇒https://high-alti.jp/

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楠田 圭子

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