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貧血もちの「鉄不足」を解消!体内での働きや効率的な食べ方を知ろう!

2019/11/26

鉄がなければ人間は活動できない!?

2015年の厚生労働省の調査によると、日本人女性の10人に1人、月経のある女性の5人に1人が貧血だと言われています。貧血というと「血が少なくなる」というイメージがあるかもしれませんが、体内の血液そのものの量は変わりません。貧血とは、血液中の赤血球の量と質が低下している状態のこと。その原因の多くが鉄不足によるものです。月経による鉄の排出は仕方がないことですが、これだけ多くの人が鉄不足になっているというのは、食事に原因があるといえるでしょう。対処法のヒントは鉄の働き、特徴に隠されています。鉄のこと、体のことを知り、効果的に鉄を補給する方法を学びましょう。

鉄の働き

1.赤血球の成分となって全身に酸素を運ぶ

大人の体には3~5gの鉄が存在しています。そのうち60~70%は赤血球中のヘモグロビンに取り込まれ、酸素と結びついて体中を巡り、細胞に酸素を運びます。この酸素のおかげで私たちも生きて活動することができるのです。

残る30~40%の鉄は、肝臓、脾臓、骨髄などに蓄えられ、血中の鉄が不足した際に使われるという仕組みになっています。

2.筋肉に酸素を蓄えておく

私たちの体には「遅筋」と「速筋」があります。「遅筋」はミオグロビンという赤色をしたタンパク質が多く、ヘモグロビンと同様に鉄を多く含んでいます。ミオグロビン中の鉄は酸素を蓄え、有酸素運動の際には長時間に渡って酸素を供給。脂肪をエネルギーに変えるのをサポートします。人間の場合、姿勢を維持するために欠かせない「体幹」、ふくらはぎの奥にある「ヒラメ筋」に多いのが遅筋です。

体幹を鍛えると持久力が増し、痩せやすくなるのは、有酸素運動による酸素供給が増え、脂肪をエネルギー源として筋肉運動が効果的に行われるから。このことをイメージすると、鉄と持久力の関係も把握しやすいですね。

一方、「速筋」はミオグロビンをほとんど含んでいないため筋肉内に鉄も含んでおらず、白色をしているのが特徴。人間の場合、ジャンプやダッシュなど瞬発系の無酸素運動を多くする、ふくらはぎ両サイドの「ヒフク筋」は速筋です。

魚の身の色をイメージしてください。酸素を使って泳ぎ続けるマグロやカツオは赤身、海底に潜んで息を潜め、獲物が来ると瞬発的に動いて補食するヒラメは白身。この色の違いは、ミオグロビン、しいては鉄の含有量の差によるものです。

3.エネルギーを作り出す

ヘモグロビン内の鉄は、酸素を運ぶだけでなく、酸素を使ったエネルギー産生サイクルにも作用しています。エネルギー産生サイクル、つまりエネルギーを生み出す代謝のサイクルには、ビタミンB群をはじめとする多くの栄養素の助けが必要。その代謝サイクルに必要な栄養素の一つが鉄によって構成されているため、鉄不足の状態ではエネルギーの産生が停滞してしまうのです。

鉄が不足すると…

鉄には動物性食材に含まれる「ヘム鉄」と、植物性食材に含まれる「非ヘム鉄」の2種類があり、その吸収率は、ヘム鉄が約20%、非ヘム鉄はなんと約5%。とても低いのが特徴です。つまり、鉄不足の原因の一つはこの吸収率の低さによるものです。

鉄が不足すると、全身に酸素が行き渡らなくなり、めまい、貧血、などの症状が起こります。免疫力も低下し、舌や口角が荒れたり、風邪などの感染症にかかりやすくなるケースも珍しくありません。

慢性的な疲れも、鉄不足の可能性が高いでしょう。鉄不足が続くと、血中のヘモグロビンの合成がうまくいかなくなり、赤血球自体が小さくなってしまう「小球性低色素性の鉄欠乏性貧血」を引き起こします。このタイプの鉄欠乏性貧血になると、だるい、疲れやすいといった症状が増え、少し走っただけで動悸や息切れが起こったり、頭痛や胸の痛みを感じるケースも出てきます。

鉄は、通常は肝臓、脾臓、骨髄などに貯蔵されており、ヘモグロビン中の鉄が不足すると補われるため、不足していても気づけないケースが多いのが特徴。少しずつ疲れやすくなったり、だるさが出るため「忙しかったから」と受け流してしまいがちです。体を休めても疲れが取れない、顔色が悪い、ちゃんと食べてトレーニングをしているのにスタミナがアップしないという場合は、鉄不足を疑ってみましょう。

鉄は吸収率が低いので、食事では十分摂れないと感じたら、サプリメントや鉄剤を活用するのも手です。いずれも吸収率がよい形で配合されているので、無駄なく取り入れることができます。ただし、過剰摂取は胃腸障害や便秘・下痢、肝臓障害を起こすこともあるので摂取量は守りましょう。症状が重い人は、迷わず医師に相談を。

鉄を含む主な食材


おすすめ食材:レバー、卵、貝類、大豆食品、枝豆、かつお、牛赤身肉、コンビーフ

比較的吸収率が高い動物性の「ヘム鉄」は、牛、豚、鶏のレバー、アサリやシジミなどの貝類、卵、マグロやカツオなどの赤身肉、牛やラムなどの赤身肉やコンビーフに多く含まれています。鉄は肉、魚介の内臓や血合に多く含まれているので、内臓も丸ごと食べられるイワシの丸干しなどもGOOD。

植物性の「非ヘム鉄」は、枝豆や大豆食品が狙い目。大豆食品では納豆、油揚げ、湯葉がおすすめです。野菜ではサラダ菜や大根葉、小松菜、そら豆などもこまめに取り入れれば鉄不足解消に貢献するでしょう。

ちなみに、以前は鉄分の宝庫とされていたヒジキは、2015年に改訂された日本食品標準成分表にて鉄の含有量が激減しました。その原因は、かつて鉄釜でゆでられていたヒジキが、近年ほとんどがステンレス釜でゆでられるようになったから。鉄釜から出た鉄がヒジキに含まれなくなったためです。もちろん、今でも鉄釜ゆでのヒジキもあるので、パッケージでチェックするとよいでしょう。

鉄の効果的な摂り方

非ヘム鉄は、吸収率が約5%ととても低いのですが、ビタミンCやタンパク質と合わせて摂ることで吸収率が6~13%にまでアップすると言われています。例えば、タンパク源であり鉄を含むマグロに、ビタミンCを含む枝豆とトマト、レモン汁をプラスすれば吸収率はグンとUP!一つの料理にしなくても、マグロやカツオの刺身に、ビタミンCを含む生野菜のサラダを添えたり、食後にフルーツを食べてもOKです。

鉄鍋や鉄のフライパンを使うのも効果的。調理過程で溶け出した鉄が料理に移り、自然と鉄が強化できます。ただし、鍋の素材が鉄でも、表面がコーティングされている場合は鍋から鉄が溶け出すことはありません。鉄製のスキレットや南部鉄器、アウトドア用のダッチオーブンなど、表面が黒くて凸凹とした打ち出しの鉄鍋を選ぶのがポイントです。

長時間の加熱調理で鉄の溶け出す量も増えるので、煮込み料理に取り入れるとよいでしょう。煮込み料理に酢を加えるなど酸性の食材を加えると鉄の溶出が増えます。また、毎日使う炊飯鍋やケトルを鉄製のものにすれば、無理なくこまめに鉄補給ができるでしょう。

黒豆を煮る時に使う、鉄の塊を活用するのもいいアイデア。普通の炊飯器やヤカンに入れたり、煮物を作る際に入れておけば、自然と鉄を強化できます。

写真:藤村のぞみ(食材写真)
ライター:藤岡操(栄養士)

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