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Keishi Tanaka「月と眠る」#15 雨とわかっていながら

ランドネ本誌で連載を続けるミュージシャンのKeishi Tanakaさん。2019年春から、連載のシーズン2として「月と眠る」をスタート。ここでは誌面には載らなかった当日のようすを、本人の言葉と写真でお届けします。

Keishi Tanakaの「月と眠る」
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Keishi Tanakaさんの連載が掲載されている最新号は、こちら!
>>>『ランドネNo.119 9月号』

雨とわかっていながら

2021年、梅雨の季節。曲作りがひと段落して、次の制作に取りかかるまでの数日間。思いついたようにキャンプに出かけることにした。人と会う約束がない日数が4日間あり、そのなかでどれくらいの時間をキャンプ場で過ごすかを悩んだ結果、3泊4日で家を出ることにした。

確実にどこかで雨が降るということ、そして4日間の行程ともなると流石に風呂やシャワーが必要なこと、場所選びが重要になってくる。とても大事な問題だ。しかし、僕に迷いはなかった。

▲今年2度目、この記事にも2度目の登場。

むしろ、「TINY GARDEN 蓼科」を知っていたからこそ、今回の計画を立てられたと言っても良い。

キャビンに泊まったことはあったが、テントでキャンプをするのは初めて。レイクサイドを予約し、当日は4日分の食料を買い、キャンプ場に入った。何かあれば買い出しにも行こうと思っていたが、結果から言ってしまうと、食料もちょうど使い切るくらいで終えることができた。

▲到着後は基地作りから。
▲今回は長期滞在なので大きいほうのテントで。

テントを建てたあとは、すぐにパソコンを開き、メールの返信などを済ませる。そう、今回は雨のキャンプということのほか、仕事上で迷惑をかけないというのがもうひとつのテーマにある。そういう意味でも、この「TINY GARDEN 蓼科」は不安がない。iPhoneの電波を使ったテザリング以外にも、施設に入ればWi-Fiを利用することができる。実際に3日目にはzoomでの打ち合わせも無事に出席することができた。

▲ワーケーションにも最適。

設営やメールの返信が少し落ち着いた夕方ごろ、空が少しだけ暗くなったのを感じた。気がつけば雲が増えてる。いまにもザッとひと雨きそうだ。

▲青空のなかに……。

ポツポツポツ……気がつけばタープに雨が当たっていた。濡れそうなものを少しだけ内側に移動する。ただ、この雨が当たる音も嫌いではない。豪雨はもちろん困るが、多少の雨で、しかも今回のように覚悟をしている雨なら、この音すら楽しめるはずだ。今回はそう思って家を出たのだ。少し強がりにも聞こえるこの想いが、帰るまで続いていることを願いながら、プシュっと缶ビールを開ける。

▲同時に焚き火もスタート。

この景色なか、雨音を聞きながらのビールは、あまりにも美味い。

「何が何でも」という勢いでオリンピックに突き進む政府、東京都、組織委員会と、それによって分断されていく自分たちがSNS上に溢れかえってたころの話。この手の話はほかにもいくらでもあって、一生続いていくだろう。たとえ分かり合えなくても、自分の思う通りにならなくても、それでも考えることを止めるわけにはいかない。それをわかったうえで、たまにはそこから離れることも僕は大切だと思っている。

ここで飲むビールは、また喧騒のなかを歩いていくための一杯なのだ。

▲この日の夜は焼うどんで〆。

翌朝、雨の音で目が覚める。テントにあたる雨の音は、想像以上に大きいので、人によっては耳栓が必須かもしれない。

滞在中は晴れ間もあったが、毎日雨が降った。「そんなキャンプが楽しいの?」と思う人もいるかもしれないが、結論から言うと、ちゃんと楽しい。目的を川遊びや花火とするなら、とても残念な気持ちになるかもしれないが、雨とわかっていて、キャンプ場をちゃんと選び、テントを張る場所をちゃんと選び、目的を選べば、ちゃんとキャンプを楽しむことができる。晴れたほうが良いことは間違いないが、雨でも良し、というレベルには、自分次第で持っていけるということだ。

▲タープの下だけは濡らさないように。
▲ウッドチップのサイトは水はけが良い。
▲濡れたものを干す場所を作る。
▲雨のキャンプでは大きなテントのありがたみを感じる。

「TINY GARDEN 蓼科」では、冬季営業の際、雪上でのキャンプを希望するお客さんには、一緒にキャビンを利用してもらい、そこを非常時のシェルターとして使いながらテント泊を楽しんでもらうことがあると聞いていた。今回は雪の季節ではなかったとはいえ、台風並みの嵐が来たときのためにキャビンもひとつ借りていた。

結果的にそこで眠るようなことはなかったが、そこをスタジオとし、アコースティックギターを爪弾いて、新曲の原型ができたり。

▲最高の環境で制作。
※周りに他の利用者がいないことを確認し、施設側にも許可を得ています。

雨のキャンプについて書いてきたが、要はその時々でキャンプの目的を調整するということ。天気はどうか、日数は何日で、だれと行くのか、それによって目的が変わり、持ち物も変わる。キャンプの道具もそうだし、例えば仕事道具が必要なときもあるかもしれない。

「キャンプとはこうあるべきだ」という固定概念をなくし、そのときのベストを見つけていく。凝り固まった都会の日常から一時的に避難するならば、行く先ではせめて自由なアイデアで過ごしたいものだ。

▲晴れ間には蓼科湖のまわりを散歩。
▲撤収後にしっかりとテントに守られていたことを確認。

TINY GARDEN 蓼科
https://www.urban-research.co.jp/special/tinygarden/

★今月のニューフェイス

パタゴニア/Fitz Stripe TWL

「TINY GARDEN 蓼科」の敷地内にあるショップで、この期間に購入。バスタオルではあるが、キャンプ中は小さめのブランケットや枕としても活躍しそうな、絶妙なサイズ感がお気に入り。そして、このカラーリング、出会った感がある。

▲パタゴニアを象徴するカラーリングがGOOD!!

〇Keishi Tanaka
1982年11月3日、北海道生まれ。ミュージシャン。作詞家。作曲家。Riddim Saunterを解散後、2012年よりソロ活動をスタート。ライブハウスや野外フェスでのバンドセットから、ホールやBillboardでの11人編成ビッグバンド、さらには小さなカフェでの弾き語りなど、場所や聴く人を限定しないスタイルで年間100本前後のライブを続けている。2020年12月23日に『AVENUE』、2021年8月25日に『I’m With You』をリリース。また、V6への楽曲提供も話題となる。『ランドネ』での連載は5年目に突入した。

Keishi Tanaka Official Site
https://keishitanaka.com/

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ランドネ 編集部

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自然と旅をキーワードに、自分らしいアウトドアの楽しみ方をお届けするメディア。登山やキャンプなど外遊びのノウハウやアイテムを紹介し、それらがもたらす魅力を提案する。

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