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本場カリフォルニアのリアルなサーファーズハウスが見たい! vol.7|ウエストサイド・サンタバーバラ

本場カリフォルニアのリアルなサーファーズハウスは、サーファー独自の感性に満たされた個性的なものばかり。しかしそこに共通するのは、“豊かに暮らす遊び心”。そんな夢の城を、私達は敬愛を込めて“Surf Shack(サーフ小屋)”と呼ぶ。

NALU本誌の人気連載vol.7は、ウルグアイやハワイなど、様々な地で暮らした後、長年の夢であった建築家を志したアレックス。彼のアトリエはサンタバーバラのウエストサイドにある。やんちゃで有名なメキシカン・アメリカンのプロサーファー、ボビー・マルチネスも育った陽気なラテンアメリカの雰囲気が漂う町だ。

「サーファーズハウス」
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転機はドクターストップ。豊かな自然をシェアしたい

万人が愛する地中海性気候によって年間300日以上晴天に恵まれ、アメリカのリビエラと呼ばれる美しい海岸線を持つサンタバーバラ。オレンジの瓦屋根と白壁のスパニッシュコロニアル様式の建築物で統一されたこの街には、約100年前まで大富豪の約半数が別荘として家を所有していたと言われる。クイーンオブザコーストの名の通り、パーフェクトライトの波が楽しめるリンコンを有する海と、雄大なロスパドレスの山に囲まれた、まさにサーファーズパラダイスといえる場所だ。

▲ひまわりとオレンジに囲まれたこの平屋の一軒家はとにかく窓が多い。あらゆる方向からたっぷりと自然光が入り、白い壁で囲まれた室内の空間を心地よく彩る。訪れるゲストに獲れたてのオレンジジュースを絞って振る舞うのが、アレックス流のウエルカム

今回紹介する建築家のアレックスが生活の拠点にこの地を選んだのも、まさに大自然と人間との共存が理由だという。マリブの隣町トパンガで、アーティストの父親と人類学者の母親の間に生まれたアレックスは、3歳から8年間ウルグアイの首都モンテビデオ郊外にある農場で暮らした。 電気が無い原始的な環境だったが、昼間は馬に乗り羊たちを率いるワイルドライフを送っていたという。

その後ハワイに移住し、ここでサーフィンと出会い虜になる。サンタバーバラのUCSBで環境学を専攻したアレックスは卒業後4年間、海洋生物学者の道を歩んだ。専門分野が深海生物だったため、毎日ダイビングに明け暮れていたそうだ。海沿いに位置する大学の寮に住んでいた彼は毎日サーフィンを楽しみ、1日のほとんどを海の中で過ごすというマリンライフに満足していた。しかしそんな時、予期せぬ事態が訪れた。突然肩に異変が起き、医師からサーフィンを止められてしまったのだ。症状は思わしくなく、1年間サーフィンを休止しなければ命の保証もできないと医者に宣告された。

アレックスは断腸の思いで一度サーフィンから離れるが、これを機に今までずっと心の中にしまっていた建築への興味を突きつめようと決意した。幼い頃から絵を描いたり楽器を奏でたりする生活をしていたので、将来の理想は右脳と左脳のバランスが取れた科学者を目指す事。建築家はその延長線上にあったのだ。
▲家中に得意のDIYでアレンジされた作品が散りばめられ、ガレージセールやフリーマーケットで購入したセンスの良い家具が並ぶ

進路を変更した彼はオレゴン大学の建築学科に進み、海洋生物学の知識をバックグラウンドに、建築界にエコ革命をもたらす取り組みを始めた。一般的に何かの建築物を作る場合にはその土地の生態系や自然を壊してしまうと思われがちだが、彼の作品は一味違う。その土地の持つ自然環境をゆっくり観察し、理解する事から始める。その場所が季節や天候、動植物たちとどのように関わっているのか? 自分がデザインした建築物を自然界にどう融合させられるか? こうした考え方が彼の建築スタイルの基盤となっている。

アレックスが使う素材は、全て持続可能なリサイクルが出来るマテリアルで、主に壊された建築物の廃材を再利用する。サーファーのためのプロジェクトも進めていて、彼が作ったタイニーハウスは外の壁にロングボードを何本も収納できるサーフラックが組み込まれ、そしてトレーラータイプなのでどこにでも引っぱっていける。

▲窓際にある鮮やかなオレンジのハンモックは、世界一のクオリティと彼が自負するメキシコのユカタン半島で生まれたハンドメイド。天気の良い午後に椅子とテーブルを置くとデザインオフィスに早変わりする

建築デザイナーでアーティスト。大切なコトは地球の未来。次世代に思いを伝えたい

世界一ヘビーな波として知られるチョープーがあるタヒチにも土地を購入し、ここでもプロジェクトを同時に進めている。タヒチで再び波乗りを始めた彼は、滞在中はいつも気分転換に全てのグーフィーフッターを満足させる波を楽しむ。人が少ないポイントを好むアレックスは自らのボートに乗ってあえてアクセスの悪いポイントに行くのが好きなのだそうだ。ある日タヒチの北にある小さな島でサーフィンをしていた時、ガタイのいい強面の三人のローカルサーファーがパドルアウトしてきた。心の中でこっちにこないでくれと念じていたが、彼らは脇目も振らず向かってくる。残念だが次の波に乗ってそのままあがろうと思っていたその時、全身タトゥーの男が右手を差し出し「Thank you for coming to surf here」。一瞬の出来事にあっけにとられてしまったが、後で聞いた話によるとタヒチのカルチャーは、そのポイントにラインナップしている一人一人と握手をすることからサーフィンが始まるのだそうだ。いつも混んでいるポイントで、波の取り合いをすることに慣れていたアレックスはハッとした。サーフィンは自然相手の神聖なスポーツ。周りにいるサーファーは敵ではなく、同じ想いをシェアする仲間達だ。
▲スイッチが入ると完成するまで時を忘れ無心で書き続ける

▲ちょっとしたスケッチにも非凡な才能を見せるアレックスがシェイプしたアライア

▲ハワイ発祥の木だけで出来た、古代のとても薄いスーパーエコボード

彼の最も尊敬するサーファーは、あの究極のバレルの中でリラックスしたスタイルで世界を驚かせたミスターパイプラインことジェリー・ロペスだ。晩年になりオレゴンのベンドに隠居したジェリーはインタビューでこう語ったという。「ハワイの波に全く未練はないよ。何故なら、毎日のヨガやメディテーションによって、心の中で全てがつながっているからね」
▲世界を代表するライトウエーブ、ニカラグアとの国境に位置する北コスタリカのオーリーズポイント。うねりがバッチリ決まるとライトブレイクのみだが、ロングライドできる波が現れる

▲この地球上で最も美しく凶暴なバレルウェーブ、チョープー。ボトムは浅くリーフは恐ろしくシャープで抜ければ天国、捕まれば地獄。2024パリ五輪サーフィンの競技会場に内定している

サーファーはいつも波を求める生き物だから若い時はがむしゃらに良い波を求めてどんな遠くまで行くのも苦ではない。一瞬を追い続けて一生を費やす過程で彼はこの真理に辿り着いた。アレックスの作品は自然との融和がテーマである事から、山肌に溶け込み、よく目を凝らさないと存在すら気が付かないようなものもあるが、100年経ってもその作品たちは色褪せないことだろう。

 

「サーファーズハウス」の記事はこちらから。

「サーファーズハウス」
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NALU 編集部

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テーマは「THE ART OF SURFING」。波との出会いは一期一会。そんな儚くも美しい波を心から愛するサーファーたちの、心揺さぶる会心のフォトが満載のサーフマガジン。

NALU 編集部の記事一覧

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